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「どういう事でそうなるんだ……」
「座るに相応しいと思うが」
「相応しくはないだろ」
相応しいって何?どこをどう取ったら俺がそうなるんだ?
しかも、もし自分や平民の子が愛し子になっても、そもそも玉座には座れないと思うと……。
「だから、何で?」
ちゃんと聞こうと体を起こし、ソランツェの方を向くとソランツェもちゃんと俺と目を合わせてくれた。
「まずそもそもリヒトは俺達とは違うんだ」
「違う?」
「今までの愛し子達はおそらくみなこの世界の生まれだ」
「あ」
そうだ……俺って根本的に違うんだ。この世界に俺のルーツはないんだった。
「居たとは思えないが、もしかしたら、遥か昔にリヒトと同じ様に違う世界の生まれの愛し子も居たかもしれない……が、今代はリヒト。リヒトだけが現在この世界の特別だ」
しかも、と続けるソランツェは俺の髪を一筋すくう。
「アシュマルナ様はリヒトを自分と同じ色を持たせたと神託で仰られている。それにシシュヴァルトから降りたと」
持たせたとはリヒトに与えた、リヒトをそう創ったという意味にも取れる、霊峰シシュヴァルト山は人では登れない所だと教えただろうとも言われて改めて気付いたが、今の俺の身体って以前と別物……というか、そもそもあの世界に俺は存在しなかった事になってるから以前の体なんてある訳ないし、あったとしても以前の体は事故で死ぬほどの損傷を受けているだろうから使える様にする為にはアシュマルナの手が入るのは当然で……俺の体からはアシュマルナしか辿れない。
「大神官殿には過去から伝えられて来たものがあって知っていたのかもしれないが、アシュマルナ様の髪の色や目の色など俺は今まで聞いた事は無かった」
元聖騎士で現在も毎日の祈りを欠かさない信者のソランツェが知らないアシュマルナの色。
アシュマルナ自らが言及している事から俺の髪色や目の色は嘘偽りなく『神と同じ』と認められ、俺を通じてアシュマルナが見える。
「リヒトは今までの愛し子とは違う。認めたくないかもしれないが、リヒトは神の子だ」
「いやいや、神の子って」
否定しようとする俺に、神託の内容を覚えているかと問う。
「自分と同じ色を持たせた愛しき子。自分と同じに創った愛しき子。愛しき子供。神にそう言われているリヒトが神の子として特別に扱われるのは何もおかしくないだろう?」
「……いや……でも、」
神の子だなんて俺は違うって言いたいが、否定できるものが無くて開いた口からは何も出て来ない。
「大神官殿は確実にリヒトを神の子だと見ているというか知っているだろうな。そうでなければ人間が勝手に作った玉座とはいえそれに座らせる様な事はないだろう」
ああ……なんて事だ……こんなの……
「余計な事聞くんじゃなかった……!」
「聞かない方がよかったか?」
「いや、聞かなかったらそれはそれでモヤモヤし続けるんだろうけどさあ」
神の子ってなんだよ……と大きなダメージを受けながらも気付いた。
「なあ……文面ってどうなったと思う?」
「民衆向けの公表文の事か?」
「うん。まさか神の子とは書かないよな?」
「そうだろうな。神の子と判っていても愛し子としか書かないと思うぞ」
「だ、だよな。なんか変な騒ぎになっても困るもんな」
そうに違いない。うん。
++++++
でも神の子ってなんかヤダ~!とソファに転がりグチグチ文句を言っていたら、部屋の扉がノックされ昼食はどうするのかと訊かれる。防音結界張っておいて良かった。部屋に持ってくるか食堂でジェロイスさん達と食べるかとの二択。
「持って来て下さい」
それ以外の選択肢など必要ないです。
少々待って、出された料理は元はコース料理みたいに出す予定だったものを、ここに持って来る為に大皿一つにセンス良く盛ったみたいな感じでその他にパンやスープが付いている。皿に盛られている料理はレストランとかで見た料理っぽいやつで美味しそう。
「この鴨のコンフィっぽいの美味しい」
「ああ、美味いな」
「なんか前菜っぽいのもスープも美味しかったし、料理が美味しいってだけでここの子になるって言っちゃいそうだ」
「それはどうかと思うぞ」
もし、そんな事言ったら本当にここから出られなくなりそうなので言わないけどな。
「そういえば、俺ソランツェの事で一つ気になってる事あってさ」
「なんだ?」
「隠してるって感じでもないなって思ったから聞くけど、ソランツェって貴族だよな?」
「ああ、そうだ」
実は気になってたんだよな。この世界は平民は家名がないから家名があるソランツェは貴族なのかなーって。食事してる時もフォークやナイフで綺麗に食べるから、そうなんだろうなーって。で、元々気になってたけど前よりももっと気になってきたのはですね……
「すっごい今更なんだけど、俺の護衛や伴侶になっちゃったりとかして家とか……えーっと相続とか大丈夫なの?三男とかで関係ないとか?」
「ああ、ルーダル家は大丈夫だろうが……ビスラトイルム帝国皇帝の周辺が何か言い出すかもしれないとは思う」
「え?何で?」
「皇帝は腹違いとは言え俺の兄だからな」
「は?」
は?
「座るに相応しいと思うが」
「相応しくはないだろ」
相応しいって何?どこをどう取ったら俺がそうなるんだ?
しかも、もし自分や平民の子が愛し子になっても、そもそも玉座には座れないと思うと……。
「だから、何で?」
ちゃんと聞こうと体を起こし、ソランツェの方を向くとソランツェもちゃんと俺と目を合わせてくれた。
「まずそもそもリヒトは俺達とは違うんだ」
「違う?」
「今までの愛し子達はおそらくみなこの世界の生まれだ」
「あ」
そうだ……俺って根本的に違うんだ。この世界に俺のルーツはないんだった。
「居たとは思えないが、もしかしたら、遥か昔にリヒトと同じ様に違う世界の生まれの愛し子も居たかもしれない……が、今代はリヒト。リヒトだけが現在この世界の特別だ」
しかも、と続けるソランツェは俺の髪を一筋すくう。
「アシュマルナ様はリヒトを自分と同じ色を持たせたと神託で仰られている。それにシシュヴァルトから降りたと」
持たせたとはリヒトに与えた、リヒトをそう創ったという意味にも取れる、霊峰シシュヴァルト山は人では登れない所だと教えただろうとも言われて改めて気付いたが、今の俺の身体って以前と別物……というか、そもそもあの世界に俺は存在しなかった事になってるから以前の体なんてある訳ないし、あったとしても以前の体は事故で死ぬほどの損傷を受けているだろうから使える様にする為にはアシュマルナの手が入るのは当然で……俺の体からはアシュマルナしか辿れない。
「大神官殿には過去から伝えられて来たものがあって知っていたのかもしれないが、アシュマルナ様の髪の色や目の色など俺は今まで聞いた事は無かった」
元聖騎士で現在も毎日の祈りを欠かさない信者のソランツェが知らないアシュマルナの色。
アシュマルナ自らが言及している事から俺の髪色や目の色は嘘偽りなく『神と同じ』と認められ、俺を通じてアシュマルナが見える。
「リヒトは今までの愛し子とは違う。認めたくないかもしれないが、リヒトは神の子だ」
「いやいや、神の子って」
否定しようとする俺に、神託の内容を覚えているかと問う。
「自分と同じ色を持たせた愛しき子。自分と同じに創った愛しき子。愛しき子供。神にそう言われているリヒトが神の子として特別に扱われるのは何もおかしくないだろう?」
「……いや……でも、」
神の子だなんて俺は違うって言いたいが、否定できるものが無くて開いた口からは何も出て来ない。
「大神官殿は確実にリヒトを神の子だと見ているというか知っているだろうな。そうでなければ人間が勝手に作った玉座とはいえそれに座らせる様な事はないだろう」
ああ……なんて事だ……こんなの……
「余計な事聞くんじゃなかった……!」
「聞かない方がよかったか?」
「いや、聞かなかったらそれはそれでモヤモヤし続けるんだろうけどさあ」
神の子ってなんだよ……と大きなダメージを受けながらも気付いた。
「なあ……文面ってどうなったと思う?」
「民衆向けの公表文の事か?」
「うん。まさか神の子とは書かないよな?」
「そうだろうな。神の子と判っていても愛し子としか書かないと思うぞ」
「だ、だよな。なんか変な騒ぎになっても困るもんな」
そうに違いない。うん。
++++++
でも神の子ってなんかヤダ~!とソファに転がりグチグチ文句を言っていたら、部屋の扉がノックされ昼食はどうするのかと訊かれる。防音結界張っておいて良かった。部屋に持ってくるか食堂でジェロイスさん達と食べるかとの二択。
「持って来て下さい」
それ以外の選択肢など必要ないです。
少々待って、出された料理は元はコース料理みたいに出す予定だったものを、ここに持って来る為に大皿一つにセンス良く盛ったみたいな感じでその他にパンやスープが付いている。皿に盛られている料理はレストランとかで見た料理っぽいやつで美味しそう。
「この鴨のコンフィっぽいの美味しい」
「ああ、美味いな」
「なんか前菜っぽいのもスープも美味しかったし、料理が美味しいってだけでここの子になるって言っちゃいそうだ」
「それはどうかと思うぞ」
もし、そんな事言ったら本当にここから出られなくなりそうなので言わないけどな。
「そういえば、俺ソランツェの事で一つ気になってる事あってさ」
「なんだ?」
「隠してるって感じでもないなって思ったから聞くけど、ソランツェって貴族だよな?」
「ああ、そうだ」
実は気になってたんだよな。この世界は平民は家名がないから家名があるソランツェは貴族なのかなーって。食事してる時もフォークやナイフで綺麗に食べるから、そうなんだろうなーって。で、元々気になってたけど前よりももっと気になってきたのはですね……
「すっごい今更なんだけど、俺の護衛や伴侶になっちゃったりとかして家とか……えーっと相続とか大丈夫なの?三男とかで関係ないとか?」
「ああ、ルーダル家は大丈夫だろうが……ビスラトイルム帝国皇帝の周辺が何か言い出すかもしれないとは思う」
「え?何で?」
「皇帝は腹違いとは言え俺の兄だからな」
「は?」
は?
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