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「愚かな女だ、この国の王ですら救えぬお前の命、この男がどうにか出来ると思っているのか」
「いや、こんな事で命なんていらねえし」
入って来るなり言い放ったそこそこイケメン君(と思われる聖騎士)の発言にポロッとついツッコミを入れてしまった俺の頭をソランツェが撫でる。
「リヒトはそうだろうが、リヒトを護る俺達はそうはいかない」
ソランツェの言葉にそこイケ君が頷いている。
「判ってる、判ってるよもう」
++++++
流石に聖騎士が現れたとなれば本気でヤバいのだと理解したうさ耳は大人しくなり、抵抗を止めて連れて行かれた。ギルドマスターも一緒に連れて行かれてそれを見送る周囲も静まり返っている。
軽い嫌がらせとして規模は小さいとはいえ立派な傷害事件ばかり起こしている彼女は、この後領主の方に引き渡されるそうで、過去に被害の訴えがあるのを知りながら野放しにしていたギルドマスターはもちろんの事、彼女の被害に直接遭った人やその話を詳しく知っている人なども後で事情を聞かれるらしい。
「判ってるけどさ……でも、俺相手だったからって言って特別視しないでって……、それだけの事で極刑みたいな事しないでって一応言ってくれる?俺には未遂だったんだし」
「承知いたしました。リヒト様の御心のままに」
兜を取ったそこそこイケメン君改めライアス・ニングレー君(ようやく聞いた)にお願いすると、了承してくれたし信じるけど……もう俺にはどうなるか判んない。結果が俺の耳に入る事あるかな?……うーん、無さそう。
「そういえば、ギルドマスターの用事はそもそも何だったの?」
近くにいたアレンさんに訊くと苦笑しながら、多分(愛し子の)俺に『挨拶』をしたかっただけだったのではと教えてくれた。
「(上の人間に取り入るのにひどく長けている人でして)」
「(ああ、なるほど)」
すぐさま謝罪したのはそういう所もあるんだろうなって……そうだ。ここに居る人達に謝っておこう。俺達きっかけだもん、これ。
「みなさん、お騒がせしてしまってすみませんでした!」
俺が周りの人達に向けて頭を下げて謝ると、ソランツェやライアスまで一緒に下げてくれた。うおぉ……。まあ、こういう事なんだよなあ……。
顔を上げるとみんなポカンとしてしまっていたが、そのまま続ける。ついでにもういいやとフードも取り、この世界ではいないらしい珍しい髪色を露にすると戸惑いと驚きの声が上がった。
「お疲れのところご迷惑おかけしました。みなさんの疲れが癒えますように」
胸の前で手を組んだそれっぽいポーズで魔法を発動させる。疲労回復と怪我してる人はついでに治癒しておこうかな。
俺の体が柔らかい光に包まれるとギルド内全体に例の花びらと光が舞いみんなに吸収されて消え、どうかな?と思っていると、自分たちの体調の変化に気付いたのかざわざわし始めた。怪我をしていた人達も綺麗に治癒されてる事に気付いて驚いている。
「では、リヒト様」
まだ全員が驚きから立ち直っていない間にライアスの誘導で外に出ようとすると
「あんたらは何も悪くねえんだから気にすんなよ」
「そうそう、災難だったな」
と、言ってくれる声がどこかからか聞こえ他の人達も同意の声をあげてくれてちょっとホッとした。
「ありがとうございます」
++++++
「明日、そっちに行くってジェロイスさんに伝えてくれる?」
ギルドから少し離れた場所で一旦止まりライアスにそう告げるとすぐに了承してくれ、そういう事ならば明日俺達の宿まで迎えに行くとそのまま別れた。
宿屋に戻る前に夕飯を食べようと店まで歩きながら、自由に歩けるのってこれが最後?どうなの?とぐるぐる考える。うーん……。
「……いいのか?」
黙ったまま歩く俺に少し心配そうな声で尋ねてきたソランツェに仕方ないよと返す。それ以外ないよな。
「まさかあの子があんな事やらかすとは思わなかったなあ」
「俺の目の前でやるとはな」
「ホントだよ……」
乾いた笑いしか出てこないわ、マジで。
「……あの時、リヒトが傷付けられそうになった怒りからか……。無意識とはいえ剣まで抜くのは少しやり過ぎたかと思ってな」
「うん」
「そのまま”伴侶”に危害を加えられそうになったから激怒したという風に、どうにかしようと思っていたんだが……」
「は?」
え?俺、慌てて遮ったけど……?
「遮られたと同時に少し冷静になったからか教会の者だろう強い怒気を感じ取れて、”愛し子様”として、これはこのままリヒトに命を庇わせた方がいいかもしれんと」
「そうじゃなかったら……」
「後日物言わぬ姿で発見されていたかもな。しかし、あの女は飛び抜けていたが……」
ファンディオに限らずの話で結構稼いでいる冒険者には群がる者も多くて、互いを蹴落とそうと似た様な事をする人達は男女ともによくいるらしい。うわぁお。
「この先も似た様な事起こりそうだし、やっぱり俺の事公表してもらうしかないんだよなあ……」
触らぬ神に祟りなし状態を自ら作り出すしかないという事に、大きなため息を吐くとクイッと引き寄せられてチュッと軽く頬にキスされた。
「俺が横にいる理由も併せてな」
え~っと、それどっちの理由?
「いや、こんな事で命なんていらねえし」
入って来るなり言い放ったそこそこイケメン君(と思われる聖騎士)の発言にポロッとついツッコミを入れてしまった俺の頭をソランツェが撫でる。
「リヒトはそうだろうが、リヒトを護る俺達はそうはいかない」
ソランツェの言葉にそこイケ君が頷いている。
「判ってる、判ってるよもう」
++++++
流石に聖騎士が現れたとなれば本気でヤバいのだと理解したうさ耳は大人しくなり、抵抗を止めて連れて行かれた。ギルドマスターも一緒に連れて行かれてそれを見送る周囲も静まり返っている。
軽い嫌がらせとして規模は小さいとはいえ立派な傷害事件ばかり起こしている彼女は、この後領主の方に引き渡されるそうで、過去に被害の訴えがあるのを知りながら野放しにしていたギルドマスターはもちろんの事、彼女の被害に直接遭った人やその話を詳しく知っている人なども後で事情を聞かれるらしい。
「判ってるけどさ……でも、俺相手だったからって言って特別視しないでって……、それだけの事で極刑みたいな事しないでって一応言ってくれる?俺には未遂だったんだし」
「承知いたしました。リヒト様の御心のままに」
兜を取ったそこそこイケメン君改めライアス・ニングレー君(ようやく聞いた)にお願いすると、了承してくれたし信じるけど……もう俺にはどうなるか判んない。結果が俺の耳に入る事あるかな?……うーん、無さそう。
「そういえば、ギルドマスターの用事はそもそも何だったの?」
近くにいたアレンさんに訊くと苦笑しながら、多分(愛し子の)俺に『挨拶』をしたかっただけだったのではと教えてくれた。
「(上の人間に取り入るのにひどく長けている人でして)」
「(ああ、なるほど)」
すぐさま謝罪したのはそういう所もあるんだろうなって……そうだ。ここに居る人達に謝っておこう。俺達きっかけだもん、これ。
「みなさん、お騒がせしてしまってすみませんでした!」
俺が周りの人達に向けて頭を下げて謝ると、ソランツェやライアスまで一緒に下げてくれた。うおぉ……。まあ、こういう事なんだよなあ……。
顔を上げるとみんなポカンとしてしまっていたが、そのまま続ける。ついでにもういいやとフードも取り、この世界ではいないらしい珍しい髪色を露にすると戸惑いと驚きの声が上がった。
「お疲れのところご迷惑おかけしました。みなさんの疲れが癒えますように」
胸の前で手を組んだそれっぽいポーズで魔法を発動させる。疲労回復と怪我してる人はついでに治癒しておこうかな。
俺の体が柔らかい光に包まれるとギルド内全体に例の花びらと光が舞いみんなに吸収されて消え、どうかな?と思っていると、自分たちの体調の変化に気付いたのかざわざわし始めた。怪我をしていた人達も綺麗に治癒されてる事に気付いて驚いている。
「では、リヒト様」
まだ全員が驚きから立ち直っていない間にライアスの誘導で外に出ようとすると
「あんたらは何も悪くねえんだから気にすんなよ」
「そうそう、災難だったな」
と、言ってくれる声がどこかからか聞こえ他の人達も同意の声をあげてくれてちょっとホッとした。
「ありがとうございます」
++++++
「明日、そっちに行くってジェロイスさんに伝えてくれる?」
ギルドから少し離れた場所で一旦止まりライアスにそう告げるとすぐに了承してくれ、そういう事ならば明日俺達の宿まで迎えに行くとそのまま別れた。
宿屋に戻る前に夕飯を食べようと店まで歩きながら、自由に歩けるのってこれが最後?どうなの?とぐるぐる考える。うーん……。
「……いいのか?」
黙ったまま歩く俺に少し心配そうな声で尋ねてきたソランツェに仕方ないよと返す。それ以外ないよな。
「まさかあの子があんな事やらかすとは思わなかったなあ」
「俺の目の前でやるとはな」
「ホントだよ……」
乾いた笑いしか出てこないわ、マジで。
「……あの時、リヒトが傷付けられそうになった怒りからか……。無意識とはいえ剣まで抜くのは少しやり過ぎたかと思ってな」
「うん」
「そのまま”伴侶”に危害を加えられそうになったから激怒したという風に、どうにかしようと思っていたんだが……」
「は?」
え?俺、慌てて遮ったけど……?
「遮られたと同時に少し冷静になったからか教会の者だろう強い怒気を感じ取れて、”愛し子様”として、これはこのままリヒトに命を庇わせた方がいいかもしれんと」
「そうじゃなかったら……」
「後日物言わぬ姿で発見されていたかもな。しかし、あの女は飛び抜けていたが……」
ファンディオに限らずの話で結構稼いでいる冒険者には群がる者も多くて、互いを蹴落とそうと似た様な事をする人達は男女ともによくいるらしい。うわぁお。
「この先も似た様な事起こりそうだし、やっぱり俺の事公表してもらうしかないんだよなあ……」
触らぬ神に祟りなし状態を自ら作り出すしかないという事に、大きなため息を吐くとクイッと引き寄せられてチュッと軽く頬にキスされた。
「俺が横にいる理由も併せてな」
え~っと、それどっちの理由?
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