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夕方前にファンディオに着いて、ギルドに行く前に先に部屋を確保するため宿屋に行くとカウンターにはテッドさんと宿泊者に部屋の鍵を渡すお手伝い中のイルムが居た。
「昨日はなんで?」
「う、」
何で泊まらなかったのかと、すごく純粋な瞳でイルムに訊ねられて答えに詰まってしまった。だって、籠って耽ってましたなんて絶対言えないからさあ。
カーッと顔が熱くなるのが自分で判る。本当にもう駄目な大人だ俺は。
「どうしたの?」
「あー……っと、」
「昨日は森の中で野営だ」
「やえい?」
駄目な俺の代わりにサラッと嘘を吐くソランツェが頼もしいぜ……ごめんねイルム。こんな大人になるんじゃないぞ。
そんなやり取りの後、部屋の確保はやけにニコニコしたテッドさんに処理してもらい、冒険者ギルドに向かうが、ある事を思い出した。
「あの子、いるよなあ」
「あの子?」
言ってしまえば当て馬になってしまった、例のうさ耳ガールですが……と説明すれば
「そうだった、彼女のおかげだったな。礼でも言うか」
「煽ってくスタイルすげーなおい」
「まあ、勿論嘘だが。うーん……そうだな、俺から離れるなよ」
「言われなくても」
++++++
ギルド内に入ると仕事を終えた冒険者さん達が納品と依頼達成報告をする為に納品カウンターに並んでいた。いっぱい荷物を持ってる人とかちょっと怪我してる初心者っぽい人とか色々いて、本当にこういう事で生活が成り立っているんだなーって感じられた。
俺達も同じ様にそこに並んでいると、ここでもソランツェに気付いた周りの人達がざわざわし始め、知名度ヤベーなとか思っていたらソランツェにグイッとフードを引っ張られてもっと深く被らされる。あの~、顔半分隠れちゃってるんですけど……?
「なあ、ほぼ前見えなくて歩き辛いんだけど……」
「それでいい」
「人にぶつかるじゃん」
「俺に掴まっていろ」
何なんだ、と思いつつも言われた通り開けてくれた腕の隙間に腕を絡めて組む。俺がピタッとくっ付いた瞬間一際ざわついた気がして……?
視界が遮られている分周りの音がよく聞こえる気がするので、じっと聞いてみるとどうやらソランツェの事は勿論言ってるんだけど、殆どが俺の事言ってるみたい。
パーティーを組んだりしない一匹狼なドラゴンスレイヤー・ソランツェが人と一緒にいる事の珍しさがまず目を引いて、そして、その横に当たり前の様にいる俺の容姿が……えーっと、顔も顔以外の肌の白さや肌の綺麗さだとかも……なんつーか、その、魅力的なんだそうです……特に男性の目に。耳の良いソランツェにフード深めに被らされた理由が判ったが……。
「……訳が判らん」
「自覚が無いのも困ったものだな」
「自覚も何もなあ……」
対象が同性であろうと関係ないって事はもう判ってるし、自分の容姿は自分で自覚してると思うけど、なんで俺がここではこんなに男受けいいのかは全然判んねえよ?日本では……まあ、女受けいいって評価だったし。
不思議に思いながら少しだけそっとフードを上げて周りを見渡すと一つ気付く。ファンディオは小さいながらもダンジョンがあるのでガチめの冒険者が多く、よくよく見ると冒険者は女性でも鍛えてる人が多いからみんな結構ガタイ良いんだね……。それに比べれば俺って結構華奢なのかも。ソランツェはもちろんの事、騎士とか門兵とかはそういう人達だしと思ってたし、森の中で会った冒険者さん達はブランに乗ってて上から見てた所為か気付かなかったみたい……うん、なんか判ったよ。うん。ここまでって事に何だか微妙に引っ掛かる気もするけどな。なあ、アシュマルナ?
なーんか判っちゃったので、ソランツェと組む腕をもっとギュッと組むとクスッと笑われた。
「美しく可憐な花は手折りたくなる奴も多い」
「……言わなくていいってば」
自分で花認識してるってなんかヤバい奴じゃん……。もうやだ。
++++++
色んな人の視線を感じながら順番を待って納品カウンターまで辿り着くとソランツェに促されて受付のお兄さんに俺のカードを手渡す。顔が判った方がいいだろうと思ったのでフードを少し上げて待っていると、ソランツェとはまた系統の違うイケメンだったお兄さんは俺の名前を確認した後年齢の所で一瞬止まったが、気を取り直して営業スマイルを見せてくれた。プロだね。
「リヒトさん、こんにちは。アレンが担当いたします。納品でしょうか?達成報告でしょうか?」
「常設依頼のゴブリンとキラーアントだ」
「では、こちらに討伐証明部位の提出をお願いします」
ソランツェが対応してくれているので少しぼーっとカウンター内を眺めていたら、少し離れた所で例のうさ耳ガールが怖い顔してこちらを見ているのに気付いてしまった。目を合わせない様に急いで視線を戻すとソランツェとアレンさんが不思議そうな顔して俺を見ている。
「リヒト?ほら、早く出せ」
「あ、そうだった。ごめんなさい」
慌てて亜空間収納から物を取り出すとアレンさんは数を確認し、例のあの黒い板にカードをセットし俺に向けてきた。
「手を置くんだったよな?」
「ああ」
俺が手を置くとピカッと一瞬光って、離すと表面に文字が表示される。アレンさんが内容を確認して実数と相違無い事を確認し問題なければ報告終了となるみたい。
「報酬はすぐにお受け取りになりますか?」
「どうするんだ?」
「今は別に必要じゃないし、後でもいいの?」
「はい、大丈夫です。では、これでリヒトさんの処理は終了致しました」
黒い板から俺のカードを取り出し手渡してくれる。
「ソランツェさんの方は付き添いだけですか?」
「ああ、そうだ」
「えーっと、あの、これから時間大丈夫ですか?この間来られた後に、ソランツェさんがまたギルドに来られたらマスターに知らせろという事になっていて……。昨日はすぐ帰られてしまいましたのでお伝えできず」
「何か用事があるのか?」
「私達には知らせろとだけでして」
何だろう?ソランツェも首を傾げていてどうするか目で聞いてくるので、用事があるんだろうし会った方がいいんじゃない?と頷いておく。
「じゃあ、俺達は待っておこう」
「ありがとうございます」
邪魔にならない様に待合スペースに移動しようとすると、いつの間にか貼り付けた様な笑顔のうさ耳ガールが空いている場所にいてこちらへどうぞと俺達を待っていた。
うわぁ、行きたくない。
「昨日はなんで?」
「う、」
何で泊まらなかったのかと、すごく純粋な瞳でイルムに訊ねられて答えに詰まってしまった。だって、籠って耽ってましたなんて絶対言えないからさあ。
カーッと顔が熱くなるのが自分で判る。本当にもう駄目な大人だ俺は。
「どうしたの?」
「あー……っと、」
「昨日は森の中で野営だ」
「やえい?」
駄目な俺の代わりにサラッと嘘を吐くソランツェが頼もしいぜ……ごめんねイルム。こんな大人になるんじゃないぞ。
そんなやり取りの後、部屋の確保はやけにニコニコしたテッドさんに処理してもらい、冒険者ギルドに向かうが、ある事を思い出した。
「あの子、いるよなあ」
「あの子?」
言ってしまえば当て馬になってしまった、例のうさ耳ガールですが……と説明すれば
「そうだった、彼女のおかげだったな。礼でも言うか」
「煽ってくスタイルすげーなおい」
「まあ、勿論嘘だが。うーん……そうだな、俺から離れるなよ」
「言われなくても」
++++++
ギルド内に入ると仕事を終えた冒険者さん達が納品と依頼達成報告をする為に納品カウンターに並んでいた。いっぱい荷物を持ってる人とかちょっと怪我してる初心者っぽい人とか色々いて、本当にこういう事で生活が成り立っているんだなーって感じられた。
俺達も同じ様にそこに並んでいると、ここでもソランツェに気付いた周りの人達がざわざわし始め、知名度ヤベーなとか思っていたらソランツェにグイッとフードを引っ張られてもっと深く被らされる。あの~、顔半分隠れちゃってるんですけど……?
「なあ、ほぼ前見えなくて歩き辛いんだけど……」
「それでいい」
「人にぶつかるじゃん」
「俺に掴まっていろ」
何なんだ、と思いつつも言われた通り開けてくれた腕の隙間に腕を絡めて組む。俺がピタッとくっ付いた瞬間一際ざわついた気がして……?
視界が遮られている分周りの音がよく聞こえる気がするので、じっと聞いてみるとどうやらソランツェの事は勿論言ってるんだけど、殆どが俺の事言ってるみたい。
パーティーを組んだりしない一匹狼なドラゴンスレイヤー・ソランツェが人と一緒にいる事の珍しさがまず目を引いて、そして、その横に当たり前の様にいる俺の容姿が……えーっと、顔も顔以外の肌の白さや肌の綺麗さだとかも……なんつーか、その、魅力的なんだそうです……特に男性の目に。耳の良いソランツェにフード深めに被らされた理由が判ったが……。
「……訳が判らん」
「自覚が無いのも困ったものだな」
「自覚も何もなあ……」
対象が同性であろうと関係ないって事はもう判ってるし、自分の容姿は自分で自覚してると思うけど、なんで俺がここではこんなに男受けいいのかは全然判んねえよ?日本では……まあ、女受けいいって評価だったし。
不思議に思いながら少しだけそっとフードを上げて周りを見渡すと一つ気付く。ファンディオは小さいながらもダンジョンがあるのでガチめの冒険者が多く、よくよく見ると冒険者は女性でも鍛えてる人が多いからみんな結構ガタイ良いんだね……。それに比べれば俺って結構華奢なのかも。ソランツェはもちろんの事、騎士とか門兵とかはそういう人達だしと思ってたし、森の中で会った冒険者さん達はブランに乗ってて上から見てた所為か気付かなかったみたい……うん、なんか判ったよ。うん。ここまでって事に何だか微妙に引っ掛かる気もするけどな。なあ、アシュマルナ?
なーんか判っちゃったので、ソランツェと組む腕をもっとギュッと組むとクスッと笑われた。
「美しく可憐な花は手折りたくなる奴も多い」
「……言わなくていいってば」
自分で花認識してるってなんかヤバい奴じゃん……。もうやだ。
++++++
色んな人の視線を感じながら順番を待って納品カウンターまで辿り着くとソランツェに促されて受付のお兄さんに俺のカードを手渡す。顔が判った方がいいだろうと思ったのでフードを少し上げて待っていると、ソランツェとはまた系統の違うイケメンだったお兄さんは俺の名前を確認した後年齢の所で一瞬止まったが、気を取り直して営業スマイルを見せてくれた。プロだね。
「リヒトさん、こんにちは。アレンが担当いたします。納品でしょうか?達成報告でしょうか?」
「常設依頼のゴブリンとキラーアントだ」
「では、こちらに討伐証明部位の提出をお願いします」
ソランツェが対応してくれているので少しぼーっとカウンター内を眺めていたら、少し離れた所で例のうさ耳ガールが怖い顔してこちらを見ているのに気付いてしまった。目を合わせない様に急いで視線を戻すとソランツェとアレンさんが不思議そうな顔して俺を見ている。
「リヒト?ほら、早く出せ」
「あ、そうだった。ごめんなさい」
慌てて亜空間収納から物を取り出すとアレンさんは数を確認し、例のあの黒い板にカードをセットし俺に向けてきた。
「手を置くんだったよな?」
「ああ」
俺が手を置くとピカッと一瞬光って、離すと表面に文字が表示される。アレンさんが内容を確認して実数と相違無い事を確認し問題なければ報告終了となるみたい。
「報酬はすぐにお受け取りになりますか?」
「どうするんだ?」
「今は別に必要じゃないし、後でもいいの?」
「はい、大丈夫です。では、これでリヒトさんの処理は終了致しました」
黒い板から俺のカードを取り出し手渡してくれる。
「ソランツェさんの方は付き添いだけですか?」
「ああ、そうだ」
「えーっと、あの、これから時間大丈夫ですか?この間来られた後に、ソランツェさんがまたギルドに来られたらマスターに知らせろという事になっていて……。昨日はすぐ帰られてしまいましたのでお伝えできず」
「何か用事があるのか?」
「私達には知らせろとだけでして」
何だろう?ソランツェも首を傾げていてどうするか目で聞いてくるので、用事があるんだろうし会った方がいいんじゃない?と頷いておく。
「じゃあ、俺達は待っておこう」
「ありがとうございます」
邪魔にならない様に待合スペースに移動しようとすると、いつの間にか貼り付けた様な笑顔のうさ耳ガールが空いている場所にいてこちらへどうぞと俺達を待っていた。
うわぁ、行きたくない。
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