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 絶対、あの時アシュマルナがソランツェに囁きやがったはず。なんて事してくれるんだよ!こいつらタッグ組んでんの忘れてたわクソが。ソランツェめちゃくちゃ上機嫌じゃねぇか。しっぽが嬉しそうに揺れてて可愛いんだよ!……好き!




「とりあえず十匹くらい頑張れ」

 ……しっかり俺に魔物討伐させる事を忘れないブレない所も好きだよクソ。

 となる森へ着くまでの間は上機嫌なソランツェにゴブリンやキラーアント討伐のコツとか注意事項を教えてもらいながら移動した。でも俺、もう力の使い方判ってきたから大丈夫だよ……だって、

「わざわざ一匹一匹やる必要無いんだよなあ」

 アルミオを見つけた時みたいに対象をサーチすればいい。”魔物”って指定でいいよな~っつーか、魔物ってそもそも何なん?魔石は何?って思ってて一応教えてもらったけど、そもそも魔物は?だよな。なんか当たり前の様に受け入れてたけど……正式名称は魔石保有動物?とか?んー……動物?いや、生物?魔石保有生物?うーん、よく判んねえな。
 ゲームとかでも何も気にする事なくプレイしてたし……この世界細かい事は気にしちゃダメなんだよな。うんうん。

「それでどうするんだ?」
「ん?」

 思考をちょっと飛ばしてる間に、目の前には森の中を映した例のパネルがあって対象と見られるシンボルが表示されている。

「なんか判り易いようになってるな」

 多分、ゴブリンであろうものは尖った耳にデカくて尖った鼻にギザ歯の薄い緑色の生物の顔がシンボルとして表示されていて、キラーアントはそのまんま蟻の顔。色は目は赤で他は白。白い虫って絶妙な気持ち悪さがあるよな。昔、某虫さんの白い個体の写真見せられて叫んだ記憶があるんだよ……。ちなみに、キラーアントって小型犬くらいの大きさらしいので、俺は、絶対に、目の前で見たくないです!

「討伐するのはいいけど、殺し過ぎてもダメなんだよな」
「そうだな」

 魔物にも弱肉強食の世界な生態系があるらしいので、人との生活圏が近い場合、程々の方が良いっぽい。根こそぎやっちゃうと弱い奴を餌にしている強い奴が餌がなくなったっていう事で奥の方から出て来ちゃうらしい。へぇ~。

 ソランツェが聞いた話だとファンディオ周辺は強い奴もいないからその心配はあまり無いと思われるらしいが、根こそぎ駆除出来た事はないみたいなので、その場合どうなるかは判らないとの事。

 あと、初心者さん達の実戦経験とか資金稼ぎの手段がなくなるので推奨はされないとか……って、魔物は居ても困るが居なくなっても困るんだな。アシュマルナが『そういう風に作った世界』だから。

 そういえば、これ、初めから違和感なく受け入れてたけど俺って頭おかしいのかな?言ってしまえば、俺たちはアシュマルナの作る箱庭の住人ですって話なのに、いきなり死んで訳判んないながらも、へぇ~ってくらいだった様な?ん?普通でもそんなもん?あ、鎮静魔法のせいだった?でも、なんか、おさらいです、みたいな感じで気にならなかったんだよな。

「リヒト?」
「あ、そうだった。ボケーっとしてた」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」

 変な事考えてないで、さっさと終わらせてしまおう。俺ってば遠隔でも討伐出来る気がするんだよな、と思うので実験。
 討伐証明部位はゴブリンは耳でキラーアントは牙なのでその部分と魔石のみ抽出して、それ以外は骨も残さず焼却処分にしよう。木や草とか対象以外が燃えない様に膜みたいなので包んでその中で焼こうかな。

「各々十匹、ここら辺のやつにしとくか」

 道の付近にいる奴らはやめておいて、森の中にいるのを指でシンボルを触ってピックアップする。選んだら、実行だな。指をパチンと鳴らせば目の前に計二十匹分の結果がドサッと現れる。

「すごい事だな……」
「ま、この方法ソランツェ以外の人前じゃ無理だけど」

 力の使い方が判って来て、本当にちょっと考えるだけで思うがままに実行出来るから、だんだんと人間じゃなくなっていくみたいで怖いものがあるけど、まあいいや。その力のおかげで色々助かってるんだし。
 もう今の俺は元の世界の俺とは別個体だという事にしておこう。むしろ、これが普通であっちがイレギュラーだったんだと思い込めばいい気がする。

「すぐ終わっちゃったけど、どうする?ファンディオ戻る?ダンジョンまで行く?」
「そうだな……。リヒトは宿がいいか?」
「は?」









++++++








「わー、なんか久し振りな感じー」
「リヒト、さっきから目を合わせようとしないな」
「わざわざ言うなよもう」

 討伐後、ソランツェが何を言いたいのか、そりゃまあすぐに判った俺は例の平原に転移して馬車を出した。もうこれだけでも恥ずかしいんだけど、イルム達がいる宿屋で爛れる訳にはいかないっていうか、爛れちゃう程籠もるかもって思ってんのかとか……とにかく久し振りの我が家(馬車)です。

 とりあえず、ソファに座って一息と思って座ると、ソファには多少余裕があるのにソランツェはぴったりと俺の横に座り、当たり前の様に肩を抱き寄せ頬にキスをしてくる。

「……あー、もうなんか改めてって恥ずかしいな……」
「それは嬉しい事だ」
「……ソランツェは?」
「そうだな。俺は一目見た時から虜になった」
「でも、それでも俺を始末しようとしたんだろ?アシュマルナに聞いた」

 微妙に根に持つタイプなんだ、俺は。あの時怖かったんだからな。

「ああ。俺を惑わす類の魔物だと思った。それくらい心が乱されたんだ」
「惑わすも何も俺あの時がっつり怯えてたと思うんだけど……初めは普通に質問してきてたのにさ、だんだん怖くなるし」
「その……怯えていく様にますますどうしようもなく心が乱されていってな」

 それ……パッと聞くと、穏やかじゃない感じだが、ソランツェはそのタイプじゃないのは判ってるので……

「……えーっと、これは俺を惑わす演技だ!みたいな?」
「そうだな、魔物を護りたいと思うなどと、とな」

 あー、なんつーかなんとも難儀な……。本人には言わないけど。

「実際はリヒトに勝てる事などなかっただろうが、もし、そういう事になってしまっていたら、その後俺はどうしたんだろうなと考える事があるが……」
「?」
「気が狂っていただろうとしか考え付かないくらいだ」

 それ以外全く思い浮かばない、とソランツェは俺を自分の方に向かせ視線を合わせると少しだけ微笑む。そして、グッと俺を抱き寄せると

「それほどリヒトを愛しく思っている」

 そう、耳元で教えてくれた。
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