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さてと、ようやくやって来ました。冒険者ギルドファンディオ支部の中。
昨日、あの後は普通に何事もなく部屋で二人きりで過ごした。ベッドとか家具を一旦収納し部屋を防水仕様に改造して実家の大きい浴槽だけを出現させて二人で一緒にお風呂入ったりはしたけど。浴槽の外側がむき出しになるのは微妙なのでどうにかしたい。あ、家具はちゃんと戻しました。
「なんか……区役所とかみたい……」
カウンターとかカウンター内部も含めてお役所!って感じの造り。違うのは使用されている建材とか机やイスが違う。レンガと木材メインだからなんだか新鮮だ。くるくる回るオフィスチェアは勿論ない。
内部は広く、入口の近くに常設依頼の掲示板・単発依頼の掲示板・長期依頼の掲示板があり、冒険者っぽい人達やアルミオくらいの子供が居たりと人で賑わっている。ソランツェが言うには規模の大きいダンジョンだったりするともっと人がいるそうだ。
待合スペースはショッピングセンター内のフードコートみたい感じ。お酒や軽食を注文出来たりもするっぽい。カウンターには登録・受注・納品・報酬受け取りと順番に窓口が並んでいてそれぞれ二つはある。受注窓口はやっぱりメインだけあって五つ。受付の窓口担当は種族問わず綺麗だったり可愛かったする若い男女……顔採用?!って言いたくなるくらい。世界が違えどやっぱりそうなのか……。みんな同じ服着てるから、ギルド職員って制服あるんだな。
「ソランツェさぁん。おはよぉございますぅ~!」
俺がキョロキョロと室内を見渡していたら、俺の後ろに居たソランツェが誰かに挨拶されている。なんかすごい甘ったるい喋り方……。
チラッと見れば、淡いピンクのふわふわロングヘア―にうさぎ耳の女の子がいた。服は他のギルドの職員と同じ格好だけど、大きな胸を強調する為か胸元はがっつり開けている。顔は……受付の子達ほどではない……いや、可愛い方だけど……めっちゃくちゃ自分に自信ありそうな雰囲気で……。
「ああ」
「この間ぁ、来られてた時にぃお話ぃ出来なくてぇ残念だなぁってぇ思ってたんですぅ~」
「そうか」
「この間もぉ久し振りにぃお顔見れたんでぇ私ぃすごぉ~く嬉しくてぇ~」
「そうか」
多分、この子の決め顔なのかなって顔でソランツェを見つめながら話し掛けている。話しながらちょっとくねくねしてて……なんか、媚びを隠してない感じが凄い……。媚び媚び攻撃を受けてもソランツェは無表情から全く変わってないけど、俺はドン引きで冷めちゃうからこういう子苦手なんだよな。
ひえぇ~と思っていたら、一部の冒険者や窓口に居る職員やカウンター内の職員達のその子を見る辟易した顔に気付き、これは厄介そうな人物だと認識したので関わりたくないと結論を出す。
すまんソランツェと思いながらスーッとその場を離れようとしたら、俺の動きを瞬時に察知したソランツェにグッと腕を掴まれて阻止され引き寄せられた。体はぴったりソランツェにくっついて……
「俺から離れるな」
耳元でボソッと甘くて低い声……って、ソランツェてめぇこのやろう。彼女から俺の事認識される前に離れたかったのに台無しじゃねぇか。うわぁ、すっごい形相で俺睨まれてるぅ~!!本性見えてます見えてますよお嬢さん!!!可愛いうさ耳が台無しだよ!!
「もういいな」
断定的にそう言い切るとソランツェは彼女を見もせず、俺の腰を抱いてその場からさっさと移動する。ひぇぇぇ……背中に恐ろしい視線が突き刺さってるんですけど!やめてほしいよぉ……。
++++++
単発依頼の掲示板の前まで来てからコソッとソランツェに確認を取る。
「知ってる子だったんだろ? いいのか?」
「? 職員だが?」
おっと。こりゃあ、名前知らねえな。ドンマイ、うさ耳ガール。カウンター内から俺を射殺す様な目で睨むのをやめてくれ。早くここから脱出したいッス。
つーか、ソランツェって竜殺しの英雄だったよな。強くてカッコよくてモテない訳ないじゃん。狙ってる子はあの子だけじゃなくていっぱいいるよなあ、絶対。
……つーか、もしかして、色んな所でこんな感じの女の人や、時に男の人とか相手にしてるのか?なんか溜息出るなあ……。
「どうした?」
「いや、なんかこれから大変そうだなって思って」
横にいるのが。まあ、譲る気ないけどな!……って、マジかよ俺。
うーわー、しっかり完熟してんじゃん。食べ頃になっちゃってるよ俺……いや、ほぼ毎日裸でイチャついてるからもう判りきってる事だったけど、改めて気付いたらなんか恥ずかしくて堪らない。うわー顔熱いっ!
「本当にどうしたんだ? 何かあったか?」
急に顔を手で隠して俯いてしまった俺をソランツェが心配してくれている。
「いや、ちょっと、今、俺、ソランツェの、顔、見れない」
「は?」
どういう事だと言わんばかりに覗き込んできて、僅かな隙間の指越しに視線が合ってしまう。それに怯んだ隙に手を外され、真っ赤に染まった顔を目撃されてしまった。
「なんでそんな可愛い顔になっているんだ?」
「あー……ここじゃ言えない」
ソランツェは、俺の言葉にふむ、と考える素振りを見せたが、何かに気付いたのか顔がパァッと明るくなりニコリと笑った。ニコニコしながら今日は簡単に常設依頼でいいなと俺の腰を抱いたままギルドを出て行こうとする。笑顔のソランツェなんてレアなのか、ソランツェを知っているっぽい人達が信じられない……!みたいな顔をして俺達を見送っている。
「ちょ、ちょ……ちょっと待って、待って!」
「待たない、もう待ったからな」
あーー!!もうーーー!!!アシュマルナーーーー!!!!
昨日、あの後は普通に何事もなく部屋で二人きりで過ごした。ベッドとか家具を一旦収納し部屋を防水仕様に改造して実家の大きい浴槽だけを出現させて二人で一緒にお風呂入ったりはしたけど。浴槽の外側がむき出しになるのは微妙なのでどうにかしたい。あ、家具はちゃんと戻しました。
「なんか……区役所とかみたい……」
カウンターとかカウンター内部も含めてお役所!って感じの造り。違うのは使用されている建材とか机やイスが違う。レンガと木材メインだからなんだか新鮮だ。くるくる回るオフィスチェアは勿論ない。
内部は広く、入口の近くに常設依頼の掲示板・単発依頼の掲示板・長期依頼の掲示板があり、冒険者っぽい人達やアルミオくらいの子供が居たりと人で賑わっている。ソランツェが言うには規模の大きいダンジョンだったりするともっと人がいるそうだ。
待合スペースはショッピングセンター内のフードコートみたい感じ。お酒や軽食を注文出来たりもするっぽい。カウンターには登録・受注・納品・報酬受け取りと順番に窓口が並んでいてそれぞれ二つはある。受注窓口はやっぱりメインだけあって五つ。受付の窓口担当は種族問わず綺麗だったり可愛かったする若い男女……顔採用?!って言いたくなるくらい。世界が違えどやっぱりそうなのか……。みんな同じ服着てるから、ギルド職員って制服あるんだな。
「ソランツェさぁん。おはよぉございますぅ~!」
俺がキョロキョロと室内を見渡していたら、俺の後ろに居たソランツェが誰かに挨拶されている。なんかすごい甘ったるい喋り方……。
チラッと見れば、淡いピンクのふわふわロングヘア―にうさぎ耳の女の子がいた。服は他のギルドの職員と同じ格好だけど、大きな胸を強調する為か胸元はがっつり開けている。顔は……受付の子達ほどではない……いや、可愛い方だけど……めっちゃくちゃ自分に自信ありそうな雰囲気で……。
「ああ」
「この間ぁ、来られてた時にぃお話ぃ出来なくてぇ残念だなぁってぇ思ってたんですぅ~」
「そうか」
「この間もぉ久し振りにぃお顔見れたんでぇ私ぃすごぉ~く嬉しくてぇ~」
「そうか」
多分、この子の決め顔なのかなって顔でソランツェを見つめながら話し掛けている。話しながらちょっとくねくねしてて……なんか、媚びを隠してない感じが凄い……。媚び媚び攻撃を受けてもソランツェは無表情から全く変わってないけど、俺はドン引きで冷めちゃうからこういう子苦手なんだよな。
ひえぇ~と思っていたら、一部の冒険者や窓口に居る職員やカウンター内の職員達のその子を見る辟易した顔に気付き、これは厄介そうな人物だと認識したので関わりたくないと結論を出す。
すまんソランツェと思いながらスーッとその場を離れようとしたら、俺の動きを瞬時に察知したソランツェにグッと腕を掴まれて阻止され引き寄せられた。体はぴったりソランツェにくっついて……
「俺から離れるな」
耳元でボソッと甘くて低い声……って、ソランツェてめぇこのやろう。彼女から俺の事認識される前に離れたかったのに台無しじゃねぇか。うわぁ、すっごい形相で俺睨まれてるぅ~!!本性見えてます見えてますよお嬢さん!!!可愛いうさ耳が台無しだよ!!
「もういいな」
断定的にそう言い切るとソランツェは彼女を見もせず、俺の腰を抱いてその場からさっさと移動する。ひぇぇぇ……背中に恐ろしい視線が突き刺さってるんですけど!やめてほしいよぉ……。
++++++
単発依頼の掲示板の前まで来てからコソッとソランツェに確認を取る。
「知ってる子だったんだろ? いいのか?」
「? 職員だが?」
おっと。こりゃあ、名前知らねえな。ドンマイ、うさ耳ガール。カウンター内から俺を射殺す様な目で睨むのをやめてくれ。早くここから脱出したいッス。
つーか、ソランツェって竜殺しの英雄だったよな。強くてカッコよくてモテない訳ないじゃん。狙ってる子はあの子だけじゃなくていっぱいいるよなあ、絶対。
……つーか、もしかして、色んな所でこんな感じの女の人や、時に男の人とか相手にしてるのか?なんか溜息出るなあ……。
「どうした?」
「いや、なんかこれから大変そうだなって思って」
横にいるのが。まあ、譲る気ないけどな!……って、マジかよ俺。
うーわー、しっかり完熟してんじゃん。食べ頃になっちゃってるよ俺……いや、ほぼ毎日裸でイチャついてるからもう判りきってる事だったけど、改めて気付いたらなんか恥ずかしくて堪らない。うわー顔熱いっ!
「本当にどうしたんだ? 何かあったか?」
急に顔を手で隠して俯いてしまった俺をソランツェが心配してくれている。
「いや、ちょっと、今、俺、ソランツェの、顔、見れない」
「は?」
どういう事だと言わんばかりに覗き込んできて、僅かな隙間の指越しに視線が合ってしまう。それに怯んだ隙に手を外され、真っ赤に染まった顔を目撃されてしまった。
「なんでそんな可愛い顔になっているんだ?」
「あー……ここじゃ言えない」
ソランツェは、俺の言葉にふむ、と考える素振りを見せたが、何かに気付いたのか顔がパァッと明るくなりニコリと笑った。ニコニコしながら今日は簡単に常設依頼でいいなと俺の腰を抱いたままギルドを出て行こうとする。笑顔のソランツェなんてレアなのか、ソランツェを知っているっぽい人達が信じられない……!みたいな顔をして俺達を見送っている。
「ちょ、ちょ……ちょっと待って、待って!」
「待たない、もう待ったからな」
あーー!!もうーーー!!!アシュマルナーーーー!!!!
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