のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

文字の大きさ
上 下
56 / 148

54

しおりを挟む
 今日も俺の目覚めはソランツェの腕の中。抱き締められて眠るのって良いな。離れたくないなあって今日もすりすりとソランツェに擦りついていたらギュッと頭を抱き締められて動きを止めさせられる。

「ソランツェ、苦しいってば」
「これ以上は今はダメだ」

 抗議の声を上げるとダメなんて言いながら腰をクイッと押し付けてきたので、ダメってのに色んな意味があるなあと笑ってしまった。一旦離してもらって顔をあげると悪戯っぽい笑みを浮かべたソランツェの顔があってどちらからともなく軽くおはようのキスをする。

「やらしいなあ」
「昨日は大人しく寝たからな」


 昨日は届けられた夕飯を食べた後、気が抜けたのか早々に眠くなってしまったのでソランツェと一緒にベッドに入ってすんなりと寝た。寝ようという意思を持てば一瞬で寝れるからな、アシュマルナのおかげで。
 食器は廊下に出して置いてくれというのでそうしたから、昨日テッドさん達とアルミオ達が話したかどうかも知らない。起きたら聞こうとは思うけど……

「まだ早いよな」
「ああ」
「じゃあ、もうちょっとだけくっついてよっと」

 そう言って腕を上げて誘うとスッと体が入り込んで来て抱き締めてきた。そのままソランツェは首筋や鎖骨周辺を痕にならない強さで何回もキスしてきたり腰をやらしい手付きで揉んだりしてくるので身体が反応してしまいそうになる。

「もう……ダメなんじゃないのかよ」
「くっついてるだけだが?」
「うーん、見解の相違があるな」
「あるなら無くせばいい」

 二人でクスクス笑いながら抱き合う。お互いの手付きにこれはもう単純に抱き合うだけじゃないなあ、なんて。








++++++








 さて、した朝ですね!って感じでお着替えしましょうか。魔法でですけど。

「まずはテッドさん達の方でいいかな」


 昨日、あれから話したのかどうか聞きに行く。一階の受付に顔を出すとすぐに俺達に気付いたテッドさんは穏やかな笑顔で挨拶をしてくれた。その表情から良い方向に話が進んだのかなって予想できる。

「おはようございます。昨日はどうでした?」
「おはようございます。お陰様でって言い方も変ですが、はい」

 昨日はアルミオ達の夕食後に話したそうだけど、すぐに話はまとまったらしい。アルミオから「本当にお願いしても大丈夫なんでしょうか」と言われた時に、昔コルアディオさんも住み込みでと提案した時に同じ言葉を言ったなと思い出し、そう告げ親子なんだねえと言うとアルミオがわんわん泣き出したそうだ。

「もう、私も泣いてしまいましたよ」

 イルムはイルムで泣いているアルミオの横で「俺はこれから宿屋さんになるんだよね!」と言って喜んでいたそうだが、ミルロレーヌさんも当時「わたくしはこれから宿屋さんになるのね!」とこれまた言っていたそうで、こりゃすごいとあまりの偶然に大笑いしたそうだ。

「私もアルミオも涙がどっか行ってねえ」
「そりゃそうなりますよねえ」

 聞いただけでもこっちまで笑ってしまう。あー、本当によかったなあって思う。

「話し合った結果、アルミオ達には宿屋の仕事を手伝ってもらう事にしたんです」

 アルミオは、初めはただ置いてもらうのは出来ないとイルムが宿屋の手伝いをしてアルミオが変わらずギルドで依頼を熟してお金を稼いで渡すという事にしようと思っていたらしいが、今回の事を経験してイルムがギルドの仕事はもう嫌だ、しないでと泣いて嫌がったので二人で宿屋の仕事を手伝う事でも良いだろうかと申し訳無さそうに言ってきたらしい。
 そんな事考えなくていい、まずは健康的な体になるのが先だよとは言ったが全てが父親似のアルミオがそれだけでは良しと出来ないだろうと思ったので受け入れ、手伝ってもらう事にしたそうだ。

「まずは部屋の清掃とか買い物とかからですがね」

 聞くとアルミオは”おそらく平民ではない”両親からの教育のおかげか字は書けるし読めるし算術も問題ないらしく、慣れたら色々手伝ってもらう事が増えそうですと笑っていた。

「でも、まずは兄弟二人ともに安らいでもらいたいですね」

 柔らかく笑うテッドさんに心から同意して、まだ部屋にいるアルミオ達に会いに行こう。



++++++





「入っていいか?」

 アルミオ達の部屋をソランツェにノックしてもらう。ええ、俺は手が塞がっているのです。調子乗って作り過ぎた服をそれぞれのものに分けて袋に詰めて抱えてるんですね。

 どうぞ、と開けてくれたアルミオがソランツェの後ろの俺をみてちょっと戸惑っているが、そのまま中に入りベッドの上にドンと袋を置く。

「リヒト兄ちゃんこれなに?」

 本当は完全におじさん年齢なのに兄ちゃんと呼んでくれるイルムに少々後ろめたさを感じつつ、大きな袋に興味津々のイルムに袋の中身を見せる。

「これさ、作り過ぎちゃってもらって欲しいんだ」
「服?」
「そうだよ」
「すごい!いっぱいだ!」

 袋の中身を見て無邪気に喜ぶイルムに、予想通りめちゃくちゃ戸惑っているアルミオがいる。

「あ、あの……」
「拾ったとでも思ってくれ。必要な物だしと作り過ぎたらしい」
「あんなにいっぱい、いいんでしょうか……というか、作ったって……」
「……詳しくは言えないが、作る事に関して彼には何の負担も無いから気にするな」
「はあ……あの、はい、有難うございます」

 イルムと袋の中身を出してキャッキャッとしつつもソランツェとアルミオの会話に聞き耳を立てていたので、アルミオが一応受け入れたのを確認してから着替えてみようかとイルムに提案する。うん!と言ってくれたので

「アルミオもね」
「え?あ、はい。え?」
「あっ、待て!リヒ――「はい、いくよ~」


 パチンと指を鳴らして二人を着替えさせた。着替えさせた服は俺が作ったやつの一着だったけど、アシュマルナが無駄に光と花びらのエフェクト付けてくれたもんで、イルムは純粋にすごいすごいとはしゃいでいたが、アルミオは驚き戸惑っていて、どういう事かといった目で俺を見てソランツェを見てと何回も繰り返している。


「……詳しく言っても良いが聞きたいか?」

 アルミオが顔をめちゃくちゃブンブン振っている横で俺はソランツェに軽くではあるけど拳骨を喰らった……。めっちゃくちゃ痛いっす。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...