のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

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 部屋に戻りソランツェと共にベッドに腰掛け、二人してボケーッと顔を見合わせると少しだけ笑う。アルミオ達とテッドさん達、当人同士の話はまだだけど多分この先またここに泊まりにくれば二人に会える事になるんじゃないかな。

 アルミオは自分達の境遇が孤児院に入れるものである事を知らない様な無知な子ではなかった。それならなぜ孤児院だとか誰かに頼るって事を考えなかったのかってのはもう聞いてないけど、推察するに”自分だけしか”って考えがどこかで変に影響して孤立を深めていたのかもしれない。十歳から微々たるものだけど自分でお金を稼げるこの世界はその考えを後押ししてしまったんだろうか。


「アルミオは多分知ってはいてもって感じだったんだろうけど、同じ様な境遇になった時に孤児院だとか他人に頼る方法を知らないっていう子はいなくなって欲しいな」
「そうだな」
「皆へ一律に伝えられる機会って無い?」
「うーん……」

 ソランツェと二人で頭を捻る。伝えられる機会……なんか無いかなあ……。学校とか?でも、みんながみんな行ってる訳じゃないっぽいよね?てゆーか、あるのかな?ここら辺よく判んないな……。他に子供達が集まりそうな所って――

「あ!」
「ん?」
「なあ、十歳になったら適性検査を教会で必ずするんだろ?どの国でももれなく全員?」
「親が連れて行くが……教会……そうだな、ヴァルオム総教圏では……になるが……」

 よくよく考えてみれば、それ以外の国ではどうしているかは詳しくは知らないそう。色々国を回っているがまだそこまで行った事はないらしい。そもそもそういう物だと当たり前のように思い込んでいたがヴァルオム総教圏だけの慣習なのかもしれないと気付いたっぽい。

 まあ、慣習であってヴァルオム総教圏だけであっても、大神官さんとかにして、十歳の適性検査の時に講習みたいな感じでこういう時はこうしましょうねみたいに全員に伝える機会を……

「作ってもらうのってどうかなって思うんだけど」
「ああ、そうだな」
「あ、でも、十歳以前に親がいなくなった孤児院にも入っていない子が適性検査に赴く可能性は」
「低いな。知っていれば行くだろうが……十歳以前だと稼ぐ術がないしちゃんと生きていけるかどうかだ。まあ、隠れていない限りは大抵は周りに気付かれ孤児院へ行く事になるとは思うが」
「もし父親が亡くなったのがアルミオが十歳より前だったならあの子達も孤児院へ行ってた可能性が高いのかな……って、こんなたられば意味ないんだけど、つい口に出るな」

 あははと誤魔化すように笑うと、ソランツェもそうだなと相槌を打つ。

「孤児で十五歳前でも魔力量も多く亜空間収納持ちだったりするとちゃんと稼げるから、自らの意思で孤児院に入らない者もいない訳じゃない。そこを責めようとは思わないが」
「一人じゃないって事を、だな。厳しく言うと考えてはいても子供の考えだったって事か」
「まあ、十分に理解しただろうからもう言わないがな」

 なんつーか、十歳から働けるのも色々良し悪しなんだなあ……って思うが、それよりも。

「ちょっと話が逸れたけど、とりあえず十歳の適性検査の時にみんなに講習みたいなので伝える機会作ってもらえたらなって思うんだけど」
「いいと思うが……」
「うー……ソランツェの言わんとしてる事は判る」

 ソランツェの視線が本当に判っているのかと探ってくるけど、判ってますよ。判ってますとも。こういう事に口を出していくって事は、俺のを叶える為に、愛し子として表に出る事を要求される可能性があるって事は。
 いや、突っぱねったっていいかもしれないけど、そこはなんかねえ……強く出れない小心者故……。

「それは要相談って事で……。やっぱり直接会いに行った方が良いか」
「やってもらいたいの規模を考えればその方がいいだろうな」

 自分の願いを叶える為ならば、まあいいよ。俺も父さんがあのまま引き取ってくれなかったら施設で育つ身だったから、この事は、なんていうか心に来る事なので、ちょっと頑張ろうかなあって。

「じゃあ、ここでの用事が終わったら行こうか」








++++++






 夕飯は俺たちの分もロスティルさんに頼んだので、宿から出ず過ごす事にした。

 料理が届くまでソランツェは宿屋の裏庭で素振りをしに行って、俺は部屋で洋服を作る事にした。イルムの破れてしまっている服を見て作ってあげたいなって思ったから。これくらいはいいんじゃないかなぁと。布は異世界産の服が亜空間収納にたくさんあるからな、素材利用でタダで色々作れるし。

 国民的RPGの村人が着ているようなこの世界の普通の服を思い浮かべて魔法でえ~い!と作る。指を鳴らすとイルムのサイズの服が上下セットで出てきたので色違いとか刺しゅう入りとか考えて何回か繰り返す。ポンポン出てくるのが楽しくなってきたので他にはベストを作ってみたり鞄・ベルトに靴も何個か作ってみた。どれもいい感じに出来ているので着ている姿が見たいな~。

 そして、イルムの分をある程度作ったのでアルミオの分も!と同じ数になる様に黙々と量産していたらソランツェが戻って来る。

「おかえり~」
「……なんだこの量は」
「ん?……って、うわ」
 
 改めて見ると片方のベッドに二人分の服とかが山盛りになっていた。

「……作り過ぎちゃったかも」
「かも、じゃないだろう」

 呆れたソランツェから頭を軽く小突かれる。うぅぅ。

「少しならいいだろうが……」
「判ってる……良くないよなあ……でも、ポンポン出てくるのが楽しくなっちゃって」
「必要といえば必要な物だから……作り過ぎたというしかないか」
「うん」
「この前もそうだったが加減を覚えるようにな」
「はい……」

 年下に怒られる三十路再び……。
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