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バッと上を見上げソランツェの顔を確認すると柔らかく微笑んでくれて、一気にヘロヘロと力が抜けてしまった。脱力感からその場に崩れ落ちそうになるもソランツェがしっかり受け止めてくれる。
「よかった……本当によかったよぉ……」
もう泣きそう。だって、死んでさえいなければ、俺が回復出来るから……。
「早く行ってやろう」
「うん!」
アルミオが倒れている場所の座標を詳細で確認していたのでそれを元に転移する。必要時って今だよ、今!
転移して着いた場所は、川がすぐ近くにある崖下だった。
上を見ると千切れた植物の蔓と側面に所々土が付いた岩がありここを降りようとして足を踏み外して落ちたんだろうと判る。なんでこんな所を降りようとしたんだろう……。
崖は出来るだけ地面に近い所を選んでいたのかそこまでの高さはなかったのが幸いしたのと、どうやら頭は腕で庇っていた様で全身結構な怪我だけれど直接命に関わる事はなかったみたい。もちろん、ここに俺達が来なければ時間の問題だっただろうけど。
気になる点はあるが、今は息も細く眉間に皺を寄せ痛みからか気を失っているアルミオを助ける事が優先だとすぐに回復魔法をかける。
かけると言っても怪我よ治ってくれと願うしか出来ないんだけど、それでもちゃんと効果はあって穏やかさを感じる光がアルミオを包んでいきみるみる内に傷が消え綺麗な状態になっていく。アシュマルナありがとう、俺に力をくれて。
「このまま街に戻るまで寝かせておこう」
「そうだね」
毛布を取り出して包み魔法で眠りを深くさせてから、ファンディオの近くまで一気に転移し、そこからブランに乗せて城門まで移動する。
「おや、その子……」
中に入る為にソランツェが手続きをしていると、一人の門番の兵士がアルミオの顔を見て反応する。
「知ってるんですか?」
「いや、名前を知ってるとかじゃないけど昨日出て行った子だなと思ってな。武器も何も持たないで外に行ったから気にはなってたんだが」
「そうなんですか……」
「今は寝てる……みたいだけど、どうかしたのかい?」
「えーっと……傷だらけで倒れてたから保護したんです」
「あぁ、それは良かった」
一応、大丈夫かと声はかけたらしいが大丈夫と返されたそうで無事だった事を喜んでいた。
++++++
城門を抜けてから人目に付かない場所で宿の部屋に転移する。
部屋にはちょうどイルムの様子を見に来たテッドさんが居たので驚かせてしまったが、彼の中では規格外のソランツェの恋人との認識だからか俺も規格外なんだろうと扱っている様で、転移魔法が使えてもそりゃあ便利ですねえくらいの反応だった。詮索して来ないテッドさんの豪放磊落な性格を有難く思う。
イルムが寝ている隣に寝かせてあげてから俺達も一息つく。テッドさんにはこの子達が起きた時用に軽食を用意してくれるように頼んだ。
イルム達を寝かせているのとは別のベッドに腰掛けて二人を見ていると、横にソランツェも座ってくれたので体を凭れかける。
「ホッとしたよ……」
「そうだな」
眠りを深くする魔法は解いたのでイルムはそろそろ起きるかなと思う。起きたら横に寝ている兄ちゃんを起こすだろうし、起きたらアルミオからちゃんと話を聞こう。
寝ているアルミオは顔にまだ少し幼さがあるけど、背は高い。でも、やっぱり痩せていて苦労しているんだろうと判る。この子達の為に何か出来るかな。
しばらくすると、部屋がノックされテッドさんが入って来る。トレイに二人分のパンとスープを載せ持ってきてくれた。琥珀色に澄んだスープからいい匂いがして美味しそうだ。
受け取ってテーブルに置いていると近付いた匂いに刺激されたのか、イルムが身じろぎしだしたので頭を撫でて声をかける。
「お兄ちゃん、帰って来たよ」
声を認識したのかパチッと目を開き、ガバッと起き上がった。自分の真横に体温があるのにすぐさま気付いたイルムは兄を見て、急いで振り返って俺達を見て目で訴えかけてくる。
「大丈夫。ただ寝ているだけだ」
「怪我してたけどちゃんと治したから安心して」
そう告げると、イルムの目に涙が浮かび声を上げて泣き出した。アルミオの体に突っ伏し、にいちゃんのばかー!と言いながらボコボコと叩いている。それを受けてアルミオがうめき声をあげ少し動いたのに気付いたイルムが手を振りかぶりこちらが止める間もなく――
「兄ちゃん起きてぇっ!!!」
「いっ、てぇーーー!!!!」
フルスイングでビンタをお見舞いしてしまった。おお……小さな手でも絶対痛いのが判るよ……。
痛さで跳ね起きたアルミオと起きた兄を泣きながらボコボコ殴り続けているイルムを見て、ソランツェは笑っている。まあ、そりゃイルムが怒る気持ちも判るよ。うん。
イルムが怒っているのをごめん!ごめん!と謝りながらも、アルミオは周囲を見回し俺達を見て自分が俺達に助けられたと気付いたようだ。
「俺を助けてくれたんですよね。本当に有難うございました!」
俺達の方を向いてガバッと頭を下げた兄を見てイルムも自分を取り戻した様で、ありがとうございましたと頭を下げてくれた。
「でも、なんで……」
そう言ってイルムと俺達を交互に見る。そりゃ、まあ不思議に思うよな~と思いつつ、まずはお腹を満たしてからの方がいいだろうと判断し、食べながら話そうとアルミオにトレイを渡す。
案の定戸惑って遠慮していたが、昨日から何も食べてないはずだし食べて、と言えば大人しく食べ始めてくれた。
食べられる時にはしっかり食べてね。
「よかった……本当によかったよぉ……」
もう泣きそう。だって、死んでさえいなければ、俺が回復出来るから……。
「早く行ってやろう」
「うん!」
アルミオが倒れている場所の座標を詳細で確認していたのでそれを元に転移する。必要時って今だよ、今!
転移して着いた場所は、川がすぐ近くにある崖下だった。
上を見ると千切れた植物の蔓と側面に所々土が付いた岩がありここを降りようとして足を踏み外して落ちたんだろうと判る。なんでこんな所を降りようとしたんだろう……。
崖は出来るだけ地面に近い所を選んでいたのかそこまでの高さはなかったのが幸いしたのと、どうやら頭は腕で庇っていた様で全身結構な怪我だけれど直接命に関わる事はなかったみたい。もちろん、ここに俺達が来なければ時間の問題だっただろうけど。
気になる点はあるが、今は息も細く眉間に皺を寄せ痛みからか気を失っているアルミオを助ける事が優先だとすぐに回復魔法をかける。
かけると言っても怪我よ治ってくれと願うしか出来ないんだけど、それでもちゃんと効果はあって穏やかさを感じる光がアルミオを包んでいきみるみる内に傷が消え綺麗な状態になっていく。アシュマルナありがとう、俺に力をくれて。
「このまま街に戻るまで寝かせておこう」
「そうだね」
毛布を取り出して包み魔法で眠りを深くさせてから、ファンディオの近くまで一気に転移し、そこからブランに乗せて城門まで移動する。
「おや、その子……」
中に入る為にソランツェが手続きをしていると、一人の門番の兵士がアルミオの顔を見て反応する。
「知ってるんですか?」
「いや、名前を知ってるとかじゃないけど昨日出て行った子だなと思ってな。武器も何も持たないで外に行ったから気にはなってたんだが」
「そうなんですか……」
「今は寝てる……みたいだけど、どうかしたのかい?」
「えーっと……傷だらけで倒れてたから保護したんです」
「あぁ、それは良かった」
一応、大丈夫かと声はかけたらしいが大丈夫と返されたそうで無事だった事を喜んでいた。
++++++
城門を抜けてから人目に付かない場所で宿の部屋に転移する。
部屋にはちょうどイルムの様子を見に来たテッドさんが居たので驚かせてしまったが、彼の中では規格外のソランツェの恋人との認識だからか俺も規格外なんだろうと扱っている様で、転移魔法が使えてもそりゃあ便利ですねえくらいの反応だった。詮索して来ないテッドさんの豪放磊落な性格を有難く思う。
イルムが寝ている隣に寝かせてあげてから俺達も一息つく。テッドさんにはこの子達が起きた時用に軽食を用意してくれるように頼んだ。
イルム達を寝かせているのとは別のベッドに腰掛けて二人を見ていると、横にソランツェも座ってくれたので体を凭れかける。
「ホッとしたよ……」
「そうだな」
眠りを深くする魔法は解いたのでイルムはそろそろ起きるかなと思う。起きたら横に寝ている兄ちゃんを起こすだろうし、起きたらアルミオからちゃんと話を聞こう。
寝ているアルミオは顔にまだ少し幼さがあるけど、背は高い。でも、やっぱり痩せていて苦労しているんだろうと判る。この子達の為に何か出来るかな。
しばらくすると、部屋がノックされテッドさんが入って来る。トレイに二人分のパンとスープを載せ持ってきてくれた。琥珀色に澄んだスープからいい匂いがして美味しそうだ。
受け取ってテーブルに置いていると近付いた匂いに刺激されたのか、イルムが身じろぎしだしたので頭を撫でて声をかける。
「お兄ちゃん、帰って来たよ」
声を認識したのかパチッと目を開き、ガバッと起き上がった。自分の真横に体温があるのにすぐさま気付いたイルムは兄を見て、急いで振り返って俺達を見て目で訴えかけてくる。
「大丈夫。ただ寝ているだけだ」
「怪我してたけどちゃんと治したから安心して」
そう告げると、イルムの目に涙が浮かび声を上げて泣き出した。アルミオの体に突っ伏し、にいちゃんのばかー!と言いながらボコボコと叩いている。それを受けてアルミオがうめき声をあげ少し動いたのに気付いたイルムが手を振りかぶりこちらが止める間もなく――
「兄ちゃん起きてぇっ!!!」
「いっ、てぇーーー!!!!」
フルスイングでビンタをお見舞いしてしまった。おお……小さな手でも絶対痛いのが判るよ……。
痛さで跳ね起きたアルミオと起きた兄を泣きながらボコボコ殴り続けているイルムを見て、ソランツェは笑っている。まあ、そりゃイルムが怒る気持ちも判るよ。うん。
イルムが怒っているのをごめん!ごめん!と謝りながらも、アルミオは周囲を見回し俺達を見て自分が俺達に助けられたと気付いたようだ。
「俺を助けてくれたんですよね。本当に有難うございました!」
俺達の方を向いてガバッと頭を下げた兄を見てイルムも自分を取り戻した様で、ありがとうございましたと頭を下げてくれた。
「でも、なんで……」
そう言ってイルムと俺達を交互に見る。そりゃ、まあ不思議に思うよな~と思いつつ、まずはお腹を満たしてからの方がいいだろうと判断し、食べながら話そうとアルミオにトレイを渡す。
案の定戸惑って遠慮していたが、昨日から何も食べてないはずだし食べて、と言えば大人しく食べ始めてくれた。
食べられる時にはしっかり食べてね。
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