のんびり異世界旅行~キャンピングカーごと死んだので特典てんこ盛りで転移しました~

みりん/鷹山リン

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 行くって言ってしまった後だったし、仕方がないから行くか、と決めて歩き出すと素直に付いて来た俺にソランツェは偉いぞなんて言ってくる。だから、子供じゃないってば。

 向かうのは俺が道を作った所より二百メートルほど離れた所の山の中。
 ズンズン進んでいくソランツェに遅れない様に中へ突き進む。周りには見た事ある様なない様な植物がいっぱい生えている。同じだと思っても名前が違ったりするんだろうなと思っていたら、ソランツェが立ち止まり足元の草の葉っぱを一枚摘み取った。

「ほら、これが回復薬の原料となるジギ草の葉だ」
「これ……」

 そう言って見せてくれたソランツェの手にあったのは、ヨモギの葉っぱに似てるもの。匂いも似てる気がする。ヨモギってたしか薬とかにもなるんだったし、まあ、納得。名前だけ違うと覚えておこう。

「じゃ、これは若葉を摘み取るって事でいい?」
「そうだな」

 辺りを確認するといっぱい生えていたので、若葉だけこっちおいで~と魔法を使うと足元にこんもりと山が出来た。
 人からもらった観葉植物にあげる為に液肥を買ったまま部屋に放置していたのを思い出したので、ミストにしてジギ草達の根元付近に散布する。お返しです。

「何をしたんだ?」
「ありがとって事で栄養成分撒き散らしておいた」
「そうか。面白い事をするもんだな」
「また頑張っていっぱい葉っぱ出せよ~っていう賄賂ともいう」

 摘み取った葉は乾燥させてから細かい粉末にするらしいので、魔法で一気に乾燥させて、ジッパー付き保存袋に小分けしておいた。出来るかなと真空状態になれと念じてみたら成功したっぽい。

「便利な袋だな。中身が見える」
「空気も入らないよ。一応って感じだけど」
「すごいな……」


 回復薬の材料は他にもあるらしいので、それも探しに行く。
 ジギ草が生えている場所からもっと奥の方に行くとあまり木の生えていない日当たりのいい場所があって、そこに紫の小さい花が鈴なりに咲いている茎が太めの草があり、ソランツェによるとこれが回復薬のもう一つの材料・コルス草だそうだ。ジギ草粉末はそのままだともの凄く苦いらしく甘みのあるこのコルス草と合わせないと飲めたものじゃないらしい。この茎を乾燥させ細かく砕き、煮出した甘い液にジギ草の粉末を混ぜれば回復薬が完成するというので、ちょっと作ってみたいな。

「でも、使う量や煮出し時間までは知らないぞ。薬師の領域だ」
「多分、魔法使えば俺にはそこら辺関係なさそうだけどなあ」
「そういえば、回復薬は買取やってるぞ。リヒトが作るなら高品質なものになりそうだ」
「あー……資金調達には良さそうだけど……でも、薬師さんの仕事に影響出したくないしなあ」

 数本売るくらいならいいかなと思いながら、コルス草をまたこんもりと採取し、液肥をまた散布しておく。また頑張って茂ってくれ。




++++++




 薬草採取を終えて、ソランツェがまたもズンズン進んでいくのについて行く。
 この先にスピアディアという魔物が二匹いるんだってさ。木の皮を食べたりして木を枯らすので増え過ぎると山が死んでしまうらしい。間引き対象との事。
 説明を聞いた限りじゃ普通に鹿だなディアだし。肉も食べられるし買取もやってるらしい。

「頭に槍の様な鋭い角を持つ奴で、人を見ると突進してくる」
「えぇ?」

 いや~~~、もうそれだけで無理なんですけど俺。

「大丈夫だ。俺がいる」
「…………」
「気付かれる前に魔法や矢で攻撃すればいい」
「二匹いるって事は……勿論一匹は俺担当って事だよな?」
「そうだな」

 やっぱりね。判ってたよ、ちゃんと。でも一応、聞きたいじゃん。
 はああああと盛大な溜息を吐く俺の背中をトントンと叩いてから、ソランツェはスピアディアがいる方向に近付いていく。
 その背中を追いながらどんな感じで魔法を使おうかと考え、そういえば鹿肉って食べた事無いんだよな、食べるなら血抜き必須だよなとか考える。もう食材として見よう。
 生きたまま宙に浮かせたり出来るなら逆さにして頸動脈切れば血抜き出来るよな?その後の解体とかは魔法でどうにか出来そうな気がするから心配はしてないが。

「ソランツェ、俺試したい事あるから二匹ともまとめて俺やるよ」
「ん?大丈夫か?」
「うん」


 スピアディアが見える位置に潜んで様子を窺う。外見は普通の鹿に槍というより巨大針が三本付いていた。うん、フォークだな。
 気付かれる前に眠らせる。何されても起きないくらいぐっすり眠りなね。そのまま体を浮かせて逆さまにする。よし、成功。駄目だった場合、そこら辺の植物の蔓で逆さ吊りにする予定だったが問題なく二匹とも浮いてくれた。さっさと処理しよう。
 
 二匹とも首を切る。切り落とすイメージを持って指をスッと横に振るだけで出来た。何魔法に該当するのかは判らないけど何でもいいや。
 思いの外、血って出るもんなんだなと思ったし、周り汚れるしどの位時間が掛かるのか判らないので、血を消滅させてみる。解体も想像するだけで大丈夫だった。いらない部位は消滅、食べられる部分は色んな部位に分かれて亜空間収納に勝手に追加されたらしい。あとでスマホから確認しよう。討伐証明部位の角六本と魔石二つもその場に無いのでこれもまた勝手に収納されていると思われる。

「終わった」
「ここまでくると笑いしか出ないな」

 やるって言ってから十五分も経ってない。
 両手を挙げ首をすくめて呆れたように笑うソランツェの気持ちはよく判る。俺も呆れてるから。
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