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「申し訳ございませんが、こちらでお待ち下さい。」
しばらく馬車で走って着いた所は、ララタスの中心地にある教会。そこでも待機していた人達に恭しく迎え入れられ、若い神官さんに別棟の貴賓室まで俺達は案内された。
教会は特別大きいという事もなく小さいという事もなく普通な大きさだけど、もちろん日本の住宅よりはかなり大きく、学校の体育館くらいの大きさはある。それに前庭と鐘塔と体育館2/3くらいの広さの二階建ての別棟がくっ付いたレンガ造りの建物だった。礼拝堂を通って別棟に案内されたのでどんな感じなのか見れたが、中は華美なものではないが質素でもない、厳かといえばそうなんだろうなという感じ。
ぶっちゃけ今まで生きて来て宗教的なものに全く興味なかったのでよく判んないし、そういうものは修学旅行とかで教会とか寺や神社を見学して『おーすげー』くらいの感想しか今まで持った事ないんだよな。俺にとってはただの観光地扱い……。
「俺、ここの宗教について欠片も知識もないんだけど……」
案内してくれた神官さんとお茶などを用意してくれた女性が下がってからソランツェに訊く。
とりあえず、大まかに教えてもらうと、まず世界の八割強は創造神アシュマルナを崇拝しているヴァルオム総教を信仰しているんだそう。熱心って訳じゃない人も含めた感じで。
ヴァルオムってのは何だと聞くと、人の名前でどうやら遥か遥か昔の初代加護持ちさんで、世界最初の国と総教を興した人っぽい。先輩!
世界は21カ国に分かれていて、いくつかの島国も未知の島もあるがほぼ一つの大陸にまとまっているそうで、その大陸の真ん中に人の力では登頂不可能な(俺の出身地となっている)霊峰シシュヴァルト山を有するヴァルオム総教国という国があり、さっきのはそこからの人達。大神官様を始め、各国に派遣されている神官長達が居たそうです。
大神官様はヴァルオム総教国のトップだがあくまで代理、国の主はアシュマルナという事になっているらしい。
「そんな人達に下にも置かない扱いされるとか、もう一回ぶっ倒れたい気分だ」
「それは困るな」
困るとか言いながらソランツェはほぼ笑っているのでデコピンしてやったら、俺の指の方が痛かった。なんでだよ、ダメージ受けないんじゃないのかよアシュマルナ……。痛い指をさすりつつため息を吐くと笑いながら頭を撫でてくる。く、悔しい!
「あんな扱いを俺にするってさ、そもそも神託ってのがどういう感じだったんだろう」
「詳しくは聞いていないが、馬車に乗る前に大神官補佐の方から謝罪を頂いた」
「謝罪?」
「どうやら愛し子が『ララタス』に現れるだろうという事まで神託があった様で、それも含めてすぐに内容が各地域に伝わったが、ペダソクで情報が漏れたらしい」
「え? じゃあ、もしかして……?」
「噂としてかなりの早さと範囲で広まっていったらしいから、それを耳にしたペダソクの人達がララタスへ来てここでもすぐさま噂が広まり、そこへ俺達が現れ『あの見慣れない珍しい見た目の人物がそうなのかもしれない』となってしまったようだ」
謝罪されたのは、情報が漏れた事、それで人が集まってしまった事。あとは、ここまで広まれば秘匿する訳にもいかず収拾を付ける意味合いもあって良かれと思い馬車だけを寄越さず迎えに出た事、俺を倒れさせちゃった事など。
まあ、そのまま寄越された馬車に乗って教会まで行くとしても多分皆付いてきただろうし、俺達だけで教会内に入っていたとしてもあの大仰なお出迎えならやっぱりぶっ倒れてたと思う。うーん、避けられないぶっ倒れ。
つーか、あれだけ人が集まったのはねえ……どうやら有名人らしいソランツェが横にいるという事で期待に拍車が掛かり、ソランツェのユーゴへの対応で決定じゃね?ってなったんだろうねえ。ソランツェは噂が広まる前にというか、俺がこの世界に降り立つ前にはララタスを出ていて全く知らなかったから……。
なんかもうお腹いっぱいだよ、と嘆いていたらドアがノックされた。
「お開けしてもよろしいでしょうか」
良いって言いたくないけど、それじゃあ埒が明かないので了承する。
ノックされた時点でソランツェは席を立って俺の後ろに控えてしまう。落ち着かなさ過ぎて今まで横に座ってもらっていたけれど……離れられると不安だ。
先程の神官さんがドアを開き、入って来たのは大神官様と色々書類を持ってるっぽい補佐と思われる人と兜を外した護衛の聖騎士の三人だけだった。俺を怯えさせない様に少人数って事かな?
入って来てすぐにまたもや跪こうとするのを駆け寄って慌てて止める。
「俺にそんな事しないで下さいっ」
「いえ、そのよ「お願いします!止めてください!ごめんなさい!」
大神官様の言葉を遮ってこっちが頭を下げる。あちら側が狼狽えてるのが判るが先手必勝(合ってる)だ!
そういえば、ソランツェとも似た様なやり取りやったな。既に昨日会ったばかりとは思えないくらいソランツェを頼りにしてる自分に吃驚だ。
「慣れないんです……、こういうの……俺は嫌です」
『愛し子』の『俺が嫌』なんだ、と判る様にちょっと強調し、顔を上げながら手を胸の前に組み大神官様と一瞬目を合わせた後悲しげに目を伏せる。自分の主張を男に通す為母親があざとくこんな感じにやってたなってのを思い出し真似してみる。届け俺の思い。
「そ、その様に申されましても……」
「えっと、じゃあ……とりあえず、座りませんか?それからお話、神託の事とか聴かせて下さい」
動揺させる事には成功したが、ソランツェとのあのやり取りでの経験からこのままでは長引くなと察知し、話題の転換を図る。
それでは、と渋々ながらも上手く行ったようで大神官様はテーブルを挟んだ俺の前のソファに座ってくれた。そして、その後ろに補佐っぽい人と聖騎士が立つ。
さて、どんな神託だったか聴きたくないけど聴かなきゃなあ。
しばらく馬車で走って着いた所は、ララタスの中心地にある教会。そこでも待機していた人達に恭しく迎え入れられ、若い神官さんに別棟の貴賓室まで俺達は案内された。
教会は特別大きいという事もなく小さいという事もなく普通な大きさだけど、もちろん日本の住宅よりはかなり大きく、学校の体育館くらいの大きさはある。それに前庭と鐘塔と体育館2/3くらいの広さの二階建ての別棟がくっ付いたレンガ造りの建物だった。礼拝堂を通って別棟に案内されたのでどんな感じなのか見れたが、中は華美なものではないが質素でもない、厳かといえばそうなんだろうなという感じ。
ぶっちゃけ今まで生きて来て宗教的なものに全く興味なかったのでよく判んないし、そういうものは修学旅行とかで教会とか寺や神社を見学して『おーすげー』くらいの感想しか今まで持った事ないんだよな。俺にとってはただの観光地扱い……。
「俺、ここの宗教について欠片も知識もないんだけど……」
案内してくれた神官さんとお茶などを用意してくれた女性が下がってからソランツェに訊く。
とりあえず、大まかに教えてもらうと、まず世界の八割強は創造神アシュマルナを崇拝しているヴァルオム総教を信仰しているんだそう。熱心って訳じゃない人も含めた感じで。
ヴァルオムってのは何だと聞くと、人の名前でどうやら遥か遥か昔の初代加護持ちさんで、世界最初の国と総教を興した人っぽい。先輩!
世界は21カ国に分かれていて、いくつかの島国も未知の島もあるがほぼ一つの大陸にまとまっているそうで、その大陸の真ん中に人の力では登頂不可能な(俺の出身地となっている)霊峰シシュヴァルト山を有するヴァルオム総教国という国があり、さっきのはそこからの人達。大神官様を始め、各国に派遣されている神官長達が居たそうです。
大神官様はヴァルオム総教国のトップだがあくまで代理、国の主はアシュマルナという事になっているらしい。
「そんな人達に下にも置かない扱いされるとか、もう一回ぶっ倒れたい気分だ」
「それは困るな」
困るとか言いながらソランツェはほぼ笑っているのでデコピンしてやったら、俺の指の方が痛かった。なんでだよ、ダメージ受けないんじゃないのかよアシュマルナ……。痛い指をさすりつつため息を吐くと笑いながら頭を撫でてくる。く、悔しい!
「あんな扱いを俺にするってさ、そもそも神託ってのがどういう感じだったんだろう」
「詳しくは聞いていないが、馬車に乗る前に大神官補佐の方から謝罪を頂いた」
「謝罪?」
「どうやら愛し子が『ララタス』に現れるだろうという事まで神託があった様で、それも含めてすぐに内容が各地域に伝わったが、ペダソクで情報が漏れたらしい」
「え? じゃあ、もしかして……?」
「噂としてかなりの早さと範囲で広まっていったらしいから、それを耳にしたペダソクの人達がララタスへ来てここでもすぐさま噂が広まり、そこへ俺達が現れ『あの見慣れない珍しい見た目の人物がそうなのかもしれない』となってしまったようだ」
謝罪されたのは、情報が漏れた事、それで人が集まってしまった事。あとは、ここまで広まれば秘匿する訳にもいかず収拾を付ける意味合いもあって良かれと思い馬車だけを寄越さず迎えに出た事、俺を倒れさせちゃった事など。
まあ、そのまま寄越された馬車に乗って教会まで行くとしても多分皆付いてきただろうし、俺達だけで教会内に入っていたとしてもあの大仰なお出迎えならやっぱりぶっ倒れてたと思う。うーん、避けられないぶっ倒れ。
つーか、あれだけ人が集まったのはねえ……どうやら有名人らしいソランツェが横にいるという事で期待に拍車が掛かり、ソランツェのユーゴへの対応で決定じゃね?ってなったんだろうねえ。ソランツェは噂が広まる前にというか、俺がこの世界に降り立つ前にはララタスを出ていて全く知らなかったから……。
なんかもうお腹いっぱいだよ、と嘆いていたらドアがノックされた。
「お開けしてもよろしいでしょうか」
良いって言いたくないけど、それじゃあ埒が明かないので了承する。
ノックされた時点でソランツェは席を立って俺の後ろに控えてしまう。落ち着かなさ過ぎて今まで横に座ってもらっていたけれど……離れられると不安だ。
先程の神官さんがドアを開き、入って来たのは大神官様と色々書類を持ってるっぽい補佐と思われる人と兜を外した護衛の聖騎士の三人だけだった。俺を怯えさせない様に少人数って事かな?
入って来てすぐにまたもや跪こうとするのを駆け寄って慌てて止める。
「俺にそんな事しないで下さいっ」
「いえ、そのよ「お願いします!止めてください!ごめんなさい!」
大神官様の言葉を遮ってこっちが頭を下げる。あちら側が狼狽えてるのが判るが先手必勝(合ってる)だ!
そういえば、ソランツェとも似た様なやり取りやったな。既に昨日会ったばかりとは思えないくらいソランツェを頼りにしてる自分に吃驚だ。
「慣れないんです……、こういうの……俺は嫌です」
『愛し子』の『俺が嫌』なんだ、と判る様にちょっと強調し、顔を上げながら手を胸の前に組み大神官様と一瞬目を合わせた後悲しげに目を伏せる。自分の主張を男に通す為母親があざとくこんな感じにやってたなってのを思い出し真似してみる。届け俺の思い。
「そ、その様に申されましても……」
「えっと、じゃあ……とりあえず、座りませんか?それからお話、神託の事とか聴かせて下さい」
動揺させる事には成功したが、ソランツェとのあのやり取りでの経験からこのままでは長引くなと察知し、話題の転換を図る。
それでは、と渋々ながらも上手く行ったようで大神官様はテーブルを挟んだ俺の前のソファに座ってくれた。そして、その後ろに補佐っぽい人と聖騎士が立つ。
さて、どんな神託だったか聴きたくないけど聴かなきゃなあ。
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