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副隊長カクラードの鋭い視線を受けながら、待っているとユーゴが戻って来た。カクラードに何やら耳打ちした後、俺達にもうしばらくお待ちくださいと言い、俺達を残しカクラードと共に詰所から出て行く。ララタス育ちっぽいユーゴに町の事とか聞きたいなと思っていたのに残念。
まあ、俺にはソランツェに訊かなきゃいけない事があるから切り替えてと。手招きして隣へ座れと呼ぶ。
「教会行くって何?俺は知らなかった」
「今朝、町へ着いたらまず向かえと」
「アイツに言われてたと。で、何故?」
「どうやらリヒトが降り立った時に神託を下していたそうだぞ」
「はぁ?! 何て!?」
「さあ、それは判らないが……」
「なんで行く事すぐ教えてくれなかったの?」
「言わなくてよい、と仰られていた」
「言えよ!!」
そりゃ、アシュマルナの言う事きくでしょうけども、言えよ。マジで。
ユーゴに使いを頼んだのは、予想していた以上に何故か注目されているので安全策の為教会に知らせれば、向かえと言われてるのもあるし神託の件知ってるんだろうからどうにかするだろうと思ったそうですよ。
「も~~~~……嫌な予感しかしないんだけど……」
そりゃあね、『困る事のない』様にって何重もの対策有難いとは思いますが~~寧ろこれに困ってるって言いますか~~……アシュマルナ、暇だからって俺で遊ぶ事にしたんだな。クソが。
「どういう事になっているかは判らないが、終わったら市場にでも行こうな」
ソランツェは机に突っ伏して不貞腐れている俺の頭を撫でながら慰めてくれた。
三十分ほど待っていると、詰所のドアがノックされユーゴからお待たせしましたと声がかけられる。
ユーゴに誘導されて町の中に繋がるドアに近付けば外がなかなかに騒がしいのが判った。行きたくねええええ。
しかし、残念な事にユーゴはしっかり仕事をしてくれてドアを開けてくれる。
「えぇ……」
もうね、目の前に広がる光景にドン引きしか出来ない。さすがにソランツェも戸惑っている様だ。
俺達が出て来た扉の前は正門と繋がる広場みたいになっていて、扉から半径30メートルほど離れてぐるっと半円状にかなりの数の野次馬がいる。警備隊の人らしき人達が規制線を張ってくれているのでこちらに来る事はなさそうだけれど、物凄く異様な雰囲気になっている。
そして、規制線の内側には数台の馬車と馬、ごつい甲冑の騎士たちに護られてる一集団がいて、どう考えても俺の行く先はその人達の元。でも、そこへ向かいたくないなって気持ちとこの異様な雰囲気に足が竦んでしまう。
困ってしまってすぐ横に来てくれていたソランツェの腕へと縋ろうとするとすぐさま気付いて引き寄せてくれた。ソランツェも有名人らしいからか野次馬から何やらどよめきが起こるが気にしてられない。
俺が動けず、ソランツェに縋りついたのを見て、例の一団の中の一番煌びやかな帽子と祭服ってやつ?を着た偉そうな年配の男性がこちらへ歩いてきた。それに続いて煌びやかではあるけど幾分抑え目な祭服を着た残りの人達や騎士達が続く。その様子に先程まで騒めいていた野次馬が水を打った様に静まり返った。
そして、三十数名からなる一団は俺の近くまで来ると全員がスッと跪き、
「「「「お待ちしておりました。我らが神、創造神アシュマルナの愛し子リヒト・ソメヤ様」」」」
++++++
「……あれ?」
慣れないゴトゴトとした揺れに起こされる。ん?どういう事だ……俺、寝ていた?
「ああ、起きたんだな? よかった。」
「え?」
「あの後大変だったぞ」
ククッと笑いながらソランツェは話してくれるがピンと来ない。
今の俺の状態は、多分馬車の中でソランツェに膝枕されて横になっている……?
「どういう事?」
「衆人環視の中でのあれで気を失ったんだよ」
あの異様な雰囲気の中での大仰なあれを見た瞬間、俺の脳はキャパオーバーだったらしくソランツェにしか聞こえない小さな悲鳴を上げてフッと気を失ったらしい。
ソランツェが支えてくれたのでどこも打つ事は無かったけど、気を失って倒れたという事であの集団も野次馬もそれはそれはもう恐慌状態に陥ったそう。
あの偉そうな年配の人はトップの大神官様だったらしいが、顔を青くして倒れそうになって何人かに支えられていたと……。そりゃ、『神の愛し子』って言って大仰に迎え入れた瞬間にぶっ倒れられたんですからね……。
「どうやって収拾つけた?」
「わが神が大丈夫だと俺に教えて下さったんだが……」
アシュマルナは空から暖かな光と触れると消える花びらを降らせると、ソランツェが抱き上げている俺の体をそれで包み、その光をソランツェの痣に繋げ光らせるとかいうこれもまた大仰な事やったらしい。
それを受けてからソランツェが大丈夫だと伝えたそうだ。
「それはそれで大変な事になったんじゃあ……」
「それはもう凄かったぞ」
目の当たりにした神の御業に一帯は安堵と歓喜に包まれお祭り騒ぎになるし、大神官様はいよいよ倒れてしまったので、とりあえず教会に移動するぞという事で今馬車に乗っているそうな。
「俺普通に市場とか行って散策したかったのに……」
「うーん……行けたらいいな」
絶対無理じゃんか……。
まあ、俺にはソランツェに訊かなきゃいけない事があるから切り替えてと。手招きして隣へ座れと呼ぶ。
「教会行くって何?俺は知らなかった」
「今朝、町へ着いたらまず向かえと」
「アイツに言われてたと。で、何故?」
「どうやらリヒトが降り立った時に神託を下していたそうだぞ」
「はぁ?! 何て!?」
「さあ、それは判らないが……」
「なんで行く事すぐ教えてくれなかったの?」
「言わなくてよい、と仰られていた」
「言えよ!!」
そりゃ、アシュマルナの言う事きくでしょうけども、言えよ。マジで。
ユーゴに使いを頼んだのは、予想していた以上に何故か注目されているので安全策の為教会に知らせれば、向かえと言われてるのもあるし神託の件知ってるんだろうからどうにかするだろうと思ったそうですよ。
「も~~~~……嫌な予感しかしないんだけど……」
そりゃあね、『困る事のない』様にって何重もの対策有難いとは思いますが~~寧ろこれに困ってるって言いますか~~……アシュマルナ、暇だからって俺で遊ぶ事にしたんだな。クソが。
「どういう事になっているかは判らないが、終わったら市場にでも行こうな」
ソランツェは机に突っ伏して不貞腐れている俺の頭を撫でながら慰めてくれた。
三十分ほど待っていると、詰所のドアがノックされユーゴからお待たせしましたと声がかけられる。
ユーゴに誘導されて町の中に繋がるドアに近付けば外がなかなかに騒がしいのが判った。行きたくねええええ。
しかし、残念な事にユーゴはしっかり仕事をしてくれてドアを開けてくれる。
「えぇ……」
もうね、目の前に広がる光景にドン引きしか出来ない。さすがにソランツェも戸惑っている様だ。
俺達が出て来た扉の前は正門と繋がる広場みたいになっていて、扉から半径30メートルほど離れてぐるっと半円状にかなりの数の野次馬がいる。警備隊の人らしき人達が規制線を張ってくれているのでこちらに来る事はなさそうだけれど、物凄く異様な雰囲気になっている。
そして、規制線の内側には数台の馬車と馬、ごつい甲冑の騎士たちに護られてる一集団がいて、どう考えても俺の行く先はその人達の元。でも、そこへ向かいたくないなって気持ちとこの異様な雰囲気に足が竦んでしまう。
困ってしまってすぐ横に来てくれていたソランツェの腕へと縋ろうとするとすぐさま気付いて引き寄せてくれた。ソランツェも有名人らしいからか野次馬から何やらどよめきが起こるが気にしてられない。
俺が動けず、ソランツェに縋りついたのを見て、例の一団の中の一番煌びやかな帽子と祭服ってやつ?を着た偉そうな年配の男性がこちらへ歩いてきた。それに続いて煌びやかではあるけど幾分抑え目な祭服を着た残りの人達や騎士達が続く。その様子に先程まで騒めいていた野次馬が水を打った様に静まり返った。
そして、三十数名からなる一団は俺の近くまで来ると全員がスッと跪き、
「「「「お待ちしておりました。我らが神、創造神アシュマルナの愛し子リヒト・ソメヤ様」」」」
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「……あれ?」
慣れないゴトゴトとした揺れに起こされる。ん?どういう事だ……俺、寝ていた?
「ああ、起きたんだな? よかった。」
「え?」
「あの後大変だったぞ」
ククッと笑いながらソランツェは話してくれるがピンと来ない。
今の俺の状態は、多分馬車の中でソランツェに膝枕されて横になっている……?
「どういう事?」
「衆人環視の中でのあれで気を失ったんだよ」
あの異様な雰囲気の中での大仰なあれを見た瞬間、俺の脳はキャパオーバーだったらしくソランツェにしか聞こえない小さな悲鳴を上げてフッと気を失ったらしい。
ソランツェが支えてくれたのでどこも打つ事は無かったけど、気を失って倒れたという事であの集団も野次馬もそれはそれはもう恐慌状態に陥ったそう。
あの偉そうな年配の人はトップの大神官様だったらしいが、顔を青くして倒れそうになって何人かに支えられていたと……。そりゃ、『神の愛し子』って言って大仰に迎え入れた瞬間にぶっ倒れられたんですからね……。
「どうやって収拾つけた?」
「わが神が大丈夫だと俺に教えて下さったんだが……」
アシュマルナは空から暖かな光と触れると消える花びらを降らせると、ソランツェが抱き上げている俺の体をそれで包み、その光をソランツェの痣に繋げ光らせるとかいうこれもまた大仰な事やったらしい。
それを受けてからソランツェが大丈夫だと伝えたそうだ。
「それはそれで大変な事になったんじゃあ……」
「それはもう凄かったぞ」
目の当たりにした神の御業に一帯は安堵と歓喜に包まれお祭り騒ぎになるし、大神官様はいよいよ倒れてしまったので、とりあえず教会に移動するぞという事で今馬車に乗っているそうな。
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