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「ひどいってなんだよ」
「無防備……世間知らず過ぎて危険だ」
「そんな事――」
ない!と言おうとして、ソランツェに差し出していたお金の入った袋に気付きスッと下げて後ろに隠す。そんな事あるわ、ある。
俺があまりにも気まずそうな顔をしていたんだろう、それを見たソランツェがクシャっと笑い俺の頭を撫でてきた。頭を撫でられるなんていつぶりだろうと父さんを思い出してちょっとグッと来る。
「金貨以外は知らなそうだな」
「……うん、知らない」
「旅に出た経緯は判らないが、そんな状態で一人で旅をしていこうというのは無謀だと俺は思う」
「それはそうだけど」
この流れのまま行くとソランツェが付いてきそうだけど、この世界の事を知らな過ぎる俺に反論の余地はない。どうしよう。
「リヒト殿は神に愛され加護を持っているが万能ではないだろう? 金貨一枚で銀貨十枚分だとか町への入場料が幾らだとかそもそも生活に関わる事は何も知らないんじゃないか? 神はいちいちそんな事まで教えて下さるのか?」
「うぅ……」
「護るというよりは、手助けをしたいんだ。貴方が困る事が無いように」
図星ばかり突かれたあげく、そんな言い方されたら断れなくなる。だって、知らない事が多すぎて困るのは間違いなさそうなのは今の時点でもう判る。
俺が無言でどうしようか考えていたら、ポーンというあの電子音が車内から聞こえた。ドア開けっ放しだったね、そういえば。
何の音だと聞き慣れないに音にソランツェがサッと身構えるも、大丈夫だからちょっと待っててと声をかけ車内に行き例の物を手に取る。
確認すると今回は普通のメッセージアプリだった。て事は、返信出来るんだろうか?
えーっと?と確認する。
======
『連れて行け』
『ちょっと待て なんでだよ』
『丁度良い アイツの言う様にいちいちお前に教えるのも面倒だからな』
『そりゃそうだけど』
『それにお前戦いたくないんだろう?丁度良いじゃないか』
======
くそ。対アシュマルナにも反論出来ないとは。たしかに俺は戦いたくないけど、友達でもない他人と二人旅ってハードルが高くない?
逃げ道ほぼゼロだがどうにか回避出来ないかと思っていたら、外から何やら驚く声が聞こえた。
何かあったか声をかけようと外に出かけた所でアシュマルナからの追撃。
『護衛騎士の首輪をしておいた』
「はああああああ???」
「なんだ?! どうした!!」
カオス。
++++++
「では、リヒトの昼食後出発しよう」
「……はーい」
あの後、ソランツェの首になんか変な模様みたいな痣がぐるっと一周出来ているのを確認した。俺と繋がってるんだって。へぇ~、どうでもいい。
ソランツェがめちゃくちゃしっぽブンブンさせて喜んでたのでもう何も言えなかった。犬だ、犬。
訊けば、ソランツェは元々聖騎士だったんだって!崇めていたのが(この世界の創造神)アシュマルナ!首を差し出すあの過激な行動も納得だね!ソランツェの祖国の教会内部は汚職だらけのろくでもない所だったらしくて辞めたんだって!へぇ~、どうでもいい!
ちなみに、俺の事は内容は知らないがアシュマルナが直接ソランツェの脳内に語りかけて(多分自分の良い様に)説明しやがったらしい。震えてた。
まあ、そんな経緯でもう決定ですよ。よろしくお願いしますよ、と。
渋ってたけど殿呼びも廃止させた。
一緒に行くって事で軽く車内の説明したりしてたら、機能に驚くその驚きっぷりに笑ってしまったんだけど、操作とかすぐ覚えてた。順応性高いし優秀過ぎん?
とりあえず、大体の事は神の御業って言っておけばいいみたい。チョロい。
さて、その優秀な護衛騎士さんに見つめられながら、俺は冷めきった昼食を眺めている。
完成してから一時間以上経ってんですけど。外に放置された状態で。これ食べるの?
出来立て食べたかったなあ、出来立てに戻ったりしないかなあと出来心でちょっと指鳴らしてみたら……戻った。
「え?」
「お?」
ステーキ丼は出来立ての見た目に戻り、味噌汁は湯気が戻っているし、ドレッシングでしんなりしていたサラダも瑞々しさが戻っている。
やってしまった俺も戸惑っているし何か判らないが見た目がいきなり変わったそれにソランツェも戸惑っている。
「も、戻せちゃった」
「……今のはリヒトが?」
「多分……いや、うん」
「一体何を?」
「出来立てに戻ったらいいなって思ったら」
「戻った、と」
「うん。魔法で、かな?」
「いや、うーん……」
ソランツェは腕を組んで目を瞑り何やら考え出したので、とりあえず食べるねって食べ始めた。
美味かった。肉は正義。
「無防備……世間知らず過ぎて危険だ」
「そんな事――」
ない!と言おうとして、ソランツェに差し出していたお金の入った袋に気付きスッと下げて後ろに隠す。そんな事あるわ、ある。
俺があまりにも気まずそうな顔をしていたんだろう、それを見たソランツェがクシャっと笑い俺の頭を撫でてきた。頭を撫でられるなんていつぶりだろうと父さんを思い出してちょっとグッと来る。
「金貨以外は知らなそうだな」
「……うん、知らない」
「旅に出た経緯は判らないが、そんな状態で一人で旅をしていこうというのは無謀だと俺は思う」
「それはそうだけど」
この流れのまま行くとソランツェが付いてきそうだけど、この世界の事を知らな過ぎる俺に反論の余地はない。どうしよう。
「リヒト殿は神に愛され加護を持っているが万能ではないだろう? 金貨一枚で銀貨十枚分だとか町への入場料が幾らだとかそもそも生活に関わる事は何も知らないんじゃないか? 神はいちいちそんな事まで教えて下さるのか?」
「うぅ……」
「護るというよりは、手助けをしたいんだ。貴方が困る事が無いように」
図星ばかり突かれたあげく、そんな言い方されたら断れなくなる。だって、知らない事が多すぎて困るのは間違いなさそうなのは今の時点でもう判る。
俺が無言でどうしようか考えていたら、ポーンというあの電子音が車内から聞こえた。ドア開けっ放しだったね、そういえば。
何の音だと聞き慣れないに音にソランツェがサッと身構えるも、大丈夫だからちょっと待っててと声をかけ車内に行き例の物を手に取る。
確認すると今回は普通のメッセージアプリだった。て事は、返信出来るんだろうか?
えーっと?と確認する。
======
『連れて行け』
『ちょっと待て なんでだよ』
『丁度良い アイツの言う様にいちいちお前に教えるのも面倒だからな』
『そりゃそうだけど』
『それにお前戦いたくないんだろう?丁度良いじゃないか』
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くそ。対アシュマルナにも反論出来ないとは。たしかに俺は戦いたくないけど、友達でもない他人と二人旅ってハードルが高くない?
逃げ道ほぼゼロだがどうにか回避出来ないかと思っていたら、外から何やら驚く声が聞こえた。
何かあったか声をかけようと外に出かけた所でアシュマルナからの追撃。
『護衛騎士の首輪をしておいた』
「はああああああ???」
「なんだ?! どうした!!」
カオス。
++++++
「では、リヒトの昼食後出発しよう」
「……はーい」
あの後、ソランツェの首になんか変な模様みたいな痣がぐるっと一周出来ているのを確認した。俺と繋がってるんだって。へぇ~、どうでもいい。
ソランツェがめちゃくちゃしっぽブンブンさせて喜んでたのでもう何も言えなかった。犬だ、犬。
訊けば、ソランツェは元々聖騎士だったんだって!崇めていたのが(この世界の創造神)アシュマルナ!首を差し出すあの過激な行動も納得だね!ソランツェの祖国の教会内部は汚職だらけのろくでもない所だったらしくて辞めたんだって!へぇ~、どうでもいい!
ちなみに、俺の事は内容は知らないがアシュマルナが直接ソランツェの脳内に語りかけて(多分自分の良い様に)説明しやがったらしい。震えてた。
まあ、そんな経緯でもう決定ですよ。よろしくお願いしますよ、と。
渋ってたけど殿呼びも廃止させた。
一緒に行くって事で軽く車内の説明したりしてたら、機能に驚くその驚きっぷりに笑ってしまったんだけど、操作とかすぐ覚えてた。順応性高いし優秀過ぎん?
とりあえず、大体の事は神の御業って言っておけばいいみたい。チョロい。
さて、その優秀な護衛騎士さんに見つめられながら、俺は冷めきった昼食を眺めている。
完成してから一時間以上経ってんですけど。外に放置された状態で。これ食べるの?
出来立て食べたかったなあ、出来立てに戻ったりしないかなあと出来心でちょっと指鳴らしてみたら……戻った。
「え?」
「お?」
ステーキ丼は出来立ての見た目に戻り、味噌汁は湯気が戻っているし、ドレッシングでしんなりしていたサラダも瑞々しさが戻っている。
やってしまった俺も戸惑っているし何か判らないが見た目がいきなり変わったそれにソランツェも戸惑っている。
「も、戻せちゃった」
「……今のはリヒトが?」
「多分……いや、うん」
「一体何を?」
「出来立てに戻ったらいいなって思ったら」
「戻った、と」
「うん。魔法で、かな?」
「いや、うーん……」
ソランツェは腕を組んで目を瞑り何やら考え出したので、とりあえず食べるねって食べ始めた。
美味かった。肉は正義。
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