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俺の意を決しためちゃくちゃ小さい声は、相手側に届いていたらしくこっちに向かって歩いてきた。
どんだけ耳がいいんだ、異世界人すごいなと思っていたら理由が判った。
だんだん近付いて来て見えたその人の頭には犬っぽい耳がついていた。顔とかは人間と一緒だけど動物の耳としっぽがある。
「獣人ってやつ?」
そういえば、獣人も居るって言ってたなと思いつつポツリと呟いた声も聞こえていた様で、ピタッと相手の動きが止まった。やっぱり聴覚が優れているらしい。
「……獣人を見た事ないのか?」
元々こちらを探る視線だったのがますます強くなったので、ヤバい!と思い慌てて頭を下げる。
「あ、はい、そうです! 不快に思われたならすみません!」
「いや、あー……」
頭を上げたら気まずそうな顔をして、またこっちに近付いてきた。
「こんなところで何やってるんだ?見慣れないものが停まっていたから気になって見ていたんだが」
「ち、昼食にしようと思って……料理してました」
「料理? どこで?」
「この中です……けど」
何なんだよぅ……と思いつつ、目の前の獣人を観察する。
シルバーグレーの短髪に灰茶とシルバーが混ざった耳としっぽ、金色の目の若い兄ちゃん。映画とかに出てきそうな顔面。
そして、俺なんかより遥かに体格が良く、着慣れてるっていう感じの白のシャツと黒いパンツに黒いブーツ、金属で出来た簡素な鎧っぽいやつを付け剣らしき物を両方の腰に差していて、背に荷物を大きな背負っている。
「この中というがどういう事だ? これは一体なんだ?」
「え? 馬車……ですけど」
馬車を指さし怪訝そうな顔をしている。たしかにデカいし見慣れないものなのかなとは思う。今、タープとか張ってるしなおさらかも。
「あの馬みたいなものは何だ? 生きているものの気配が感じられない」
「気配……?」
「その代わり巨大な魔力だけは感じられるが」
この馬そもそも生きてないしそんな事言われても困る。俺に判る事は少ないから説明するにも何て言えばいいんだろう。めっちゃ怪しまれてる。
「えっと、これは馬車みたいな魔道具らしいです。貰い物なので詳しくは知らないです」
「魔道具? 馬まで魔力で動くというのか?」
「はい、そう聞いてます」
「そんな物見た事も聞いた事もないんだが、貰い物とは?」
うぅ、ガンガン問い詰めてくる……。俺、ご飯食べようとしただけなのに。
「貰い物は貰い物なんですけど……」
「誰からだ?」
「え? 誰からって言われても……」
これアシュマルナからって言っても良いんだろうか?
「この周辺国ではランプ型魔道具がようやく平民に普及し始めたばかりだぞ。明らかにおかしいだろう」
おっと、もしかしたら、ここの水準から言うとこれって明らかなオーバーテクノロジーなのかも。
だったら、とんでもない代物だよねえ。そりゃ怪しまれる。どうしよう。
「お前からも魔力を、この馬よりも遥かに巨大な物を感じる……。しかも、お前は見慣れぬ容姿をしているし一体何者で何が目的でここまで来た?」
ぐるぐるとどうしようかと考えていたが、ふと気付くと獣人の手が剣のグリップを握っている……?は?
殺気とかいうやつ、俺でも判るくらい出してきてる。なんでだよ!
「え、え、えぇぇ?! ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 俺はただ旅行、旅をしているだけですってば!!」
「……なぜ?」
えええええええええ?????
正直に答えてるのに何かますます殺気が強くなり、どうすりゃいいんだと向けられた殺気のせいでパニックになる。
「な、なぜって?? なぜ???? いやいや? 旅に目的って、目的無くたって旅は旅だろうがよ?! ああ、もう訳が判らん! 何て答えれば満足なんだこの野郎!」
涙目でいきなり喚きだした俺に、少し怯んだ気配がするが殺気は消えない。多分、大型犬に怯えながらキャンキャン喚く超小型犬みたいな感じなんだろう。
「何者かって、俺は俺だ! 何者でもねぇよ! つか、あー、何だ?! ステータスでも見せれば満足すんのかよ?! なあ?!」
混乱極まった超小型犬な俺は、自分のステータスパネルをその場に表示させる。
「っ!?」
======
■リヒト・ソメヤ
性別:男 種族:人 年齢:30
職業:無 体力:30000 魔力:∞
出身:シシュヴァルト山
□神アシュマルナの愛し子
□神アシュマルナの加護
======
目の前の獣人にもはっきり見える様にデカく表示されたパネルには、俺の知らん項目がちょっと増えている。何でや。出身地どこそれ。
「こ、これは……偽装では、ないのだな?」
パネルを見て地球出身でもなくなっている……と唖然としている俺の横で、同じく俺のステータスパネルを隅々まで目にした獣人は何かプルプルしている。
「偽装の仕方なんて知ってたらこんな得体の知れんもんにする訳ねーだろ」
「っ! 得体の知れ……そうだな、それにそもそも愛し子と騙るなど出来る事でもない……」
「ふーん?」
そこら辺はよく判らんが、ステータス見ただけでなんかあっさり納得しそうな雰囲気になってきたのでまあいいか。
と、思っていたら、いきなり獣人が剣を抜きその場にひれ伏してしまった。
「知らなかったとはいえ、神の愛し子様に刃を向けようとした事は許される事ではない。その罪、この首をもって贖いたく思う」
「ええええええええ?!」
とんでもない事言いつつ俺に剣差し出してんじゃねぇよ!
どんだけ耳がいいんだ、異世界人すごいなと思っていたら理由が判った。
だんだん近付いて来て見えたその人の頭には犬っぽい耳がついていた。顔とかは人間と一緒だけど動物の耳としっぽがある。
「獣人ってやつ?」
そういえば、獣人も居るって言ってたなと思いつつポツリと呟いた声も聞こえていた様で、ピタッと相手の動きが止まった。やっぱり聴覚が優れているらしい。
「……獣人を見た事ないのか?」
元々こちらを探る視線だったのがますます強くなったので、ヤバい!と思い慌てて頭を下げる。
「あ、はい、そうです! 不快に思われたならすみません!」
「いや、あー……」
頭を上げたら気まずそうな顔をして、またこっちに近付いてきた。
「こんなところで何やってるんだ?見慣れないものが停まっていたから気になって見ていたんだが」
「ち、昼食にしようと思って……料理してました」
「料理? どこで?」
「この中です……けど」
何なんだよぅ……と思いつつ、目の前の獣人を観察する。
シルバーグレーの短髪に灰茶とシルバーが混ざった耳としっぽ、金色の目の若い兄ちゃん。映画とかに出てきそうな顔面。
そして、俺なんかより遥かに体格が良く、着慣れてるっていう感じの白のシャツと黒いパンツに黒いブーツ、金属で出来た簡素な鎧っぽいやつを付け剣らしき物を両方の腰に差していて、背に荷物を大きな背負っている。
「この中というがどういう事だ? これは一体なんだ?」
「え? 馬車……ですけど」
馬車を指さし怪訝そうな顔をしている。たしかにデカいし見慣れないものなのかなとは思う。今、タープとか張ってるしなおさらかも。
「あの馬みたいなものは何だ? 生きているものの気配が感じられない」
「気配……?」
「その代わり巨大な魔力だけは感じられるが」
この馬そもそも生きてないしそんな事言われても困る。俺に判る事は少ないから説明するにも何て言えばいいんだろう。めっちゃ怪しまれてる。
「えっと、これは馬車みたいな魔道具らしいです。貰い物なので詳しくは知らないです」
「魔道具? 馬まで魔力で動くというのか?」
「はい、そう聞いてます」
「そんな物見た事も聞いた事もないんだが、貰い物とは?」
うぅ、ガンガン問い詰めてくる……。俺、ご飯食べようとしただけなのに。
「貰い物は貰い物なんですけど……」
「誰からだ?」
「え? 誰からって言われても……」
これアシュマルナからって言っても良いんだろうか?
「この周辺国ではランプ型魔道具がようやく平民に普及し始めたばかりだぞ。明らかにおかしいだろう」
おっと、もしかしたら、ここの水準から言うとこれって明らかなオーバーテクノロジーなのかも。
だったら、とんでもない代物だよねえ。そりゃ怪しまれる。どうしよう。
「お前からも魔力を、この馬よりも遥かに巨大な物を感じる……。しかも、お前は見慣れぬ容姿をしているし一体何者で何が目的でここまで来た?」
ぐるぐるとどうしようかと考えていたが、ふと気付くと獣人の手が剣のグリップを握っている……?は?
殺気とかいうやつ、俺でも判るくらい出してきてる。なんでだよ!
「え、え、えぇぇ?! ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 俺はただ旅行、旅をしているだけですってば!!」
「……なぜ?」
えええええええええ?????
正直に答えてるのに何かますます殺気が強くなり、どうすりゃいいんだと向けられた殺気のせいでパニックになる。
「な、なぜって?? なぜ???? いやいや? 旅に目的って、目的無くたって旅は旅だろうがよ?! ああ、もう訳が判らん! 何て答えれば満足なんだこの野郎!」
涙目でいきなり喚きだした俺に、少し怯んだ気配がするが殺気は消えない。多分、大型犬に怯えながらキャンキャン喚く超小型犬みたいな感じなんだろう。
「何者かって、俺は俺だ! 何者でもねぇよ! つか、あー、何だ?! ステータスでも見せれば満足すんのかよ?! なあ?!」
混乱極まった超小型犬な俺は、自分のステータスパネルをその場に表示させる。
「っ!?」
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■リヒト・ソメヤ
性別:男 種族:人 年齢:30
職業:無 体力:30000 魔力:∞
出身:シシュヴァルト山
□神アシュマルナの愛し子
□神アシュマルナの加護
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目の前の獣人にもはっきり見える様にデカく表示されたパネルには、俺の知らん項目がちょっと増えている。何でや。出身地どこそれ。
「こ、これは……偽装では、ないのだな?」
パネルを見て地球出身でもなくなっている……と唖然としている俺の横で、同じく俺のステータスパネルを隅々まで目にした獣人は何かプルプルしている。
「偽装の仕方なんて知ってたらこんな得体の知れんもんにする訳ねーだろ」
「っ! 得体の知れ……そうだな、それにそもそも愛し子と騙るなど出来る事でもない……」
「ふーん?」
そこら辺はよく判らんが、ステータス見ただけでなんかあっさり納得しそうな雰囲気になってきたのでまあいいか。
と、思っていたら、いきなり獣人が剣を抜きその場にひれ伏してしまった。
「知らなかったとはいえ、神の愛し子様に刃を向けようとした事は許される事ではない。その罪、この首をもって贖いたく思う」
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