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俺にはやり遂げたい夢がある。
母の連れ子で血が繋がらない、その上、結婚から二年で男を作り俺を置いて出て行った最低女の子供だった俺を、そのまま引き取り一人で育ててくれた父さんと夢見た親子での旅。
日本一周までとは言わないけど中古でいいから大きなキャンピングカーを買って各地を回り色んなものを見たり食べたりしたいな、とよく言っていた。
こういう装備を自作して付けよう、あれを持っていけば快適に過ごせそうだ、とか二人で語る時間は楽しく、俺も働きだしてからは実現のため金を貯めた。
数年かけその資金も潤沢に貯まり、二人の希望がつまったキャンピングカーの納車を迎え、今からいっぱい楽しんでいこう、と思っていた。
それなのに、それからわずか四日後に父さんは帰らぬ人となった。
その日は休みで試運転しようと待ち合わせたのにいくら待っても父さんは来なかった。
電話にも出ずおかしいと思い実家に行くとベッドの中で意識の無い父さんを発見、救急搬送したがその日の内に息を引き取った。同居せず社員寮生活だった俺にはどうする事も出来なかった事が、すごく悔しかった。
慌ただしい葬式の後、俺は糸が切れた様に何もかものやる気を無くし、引き留める職場の声も聞かず仕事を辞め、しばらく実家のリビングから見える駐車場のキャンピングカーをただただ眺める日々を送った。
父さんが死んで一年近く経ったある日の朝、停めたキャンピングカーを見てある事にふと気付く。毎日見ていたはずなのに何も見えてなかった。
納車の時はあんなにもキラキラ、ピカピカと光って見えた車体がくすんでいた。なんの手入れもされず放置され風雨で薄汚れている。
「俺、何してたんだろう……」
気付いた事で自分のするべき事に思い至った。
あれは二人の夢だったけど、自分一人でだってやればいいじゃないか。行きたいと言っていた観光地、食べたいと言っていた名物、キャンプや釣りだって、俺一人でも父さんの分まで俺が楽しめば父さんだって喜んでくれるはずだ。いっその事、日本一周してやる。
無くしていたやる気が自分の心に戻ってきていた。
そうと決めれば、必要なもの、あれば便利そうなもの、キャンプ動画配信者のおすすめ品だったりキャンプ用品店・ホームセンター・通販で見た良さそうと思ったもの全部購入して準備を済ます。快適に過ごすためやり過ぎなくらいがいいだろう。
そうして旅の準備を整え、しばらく帰らない実家も父さんの遺品を整理した上で、初めの第一歩として隣県の山中にあるキャンプ場を選び俺は出発した。
途中の道の駅や物産館にも立ち寄り地元の菓子や調味料だとかを買ったりしながら、その日の食材を色々買い込んでいく。
その後、緩くカーブした細い山道をキャンプ場目指し上へ進んでいたその時に、なんの前触れもなく有り得ない事が俺に起こった。
前方に突如として道を完全に塞ぐ大きさの背中に翼がある白い馬の様なものが現れ——
「うわああああああっ!!」
ブレーキを踏んで減速に間に合う距離も、回避するスペースも無く、成す術もないままそれへとぶつかり弾き飛ばされガードレールを突き破り……そこで俺の意識は途絶えた。
++++++
「……どういう事ですか」
口から出る自分の声は平素と変わらない声だった。怒っているはずなのに……自分の感情が自分で動かす事が出来ず歯痒い。
「説明に費やせる時間は短く何よりも話を優先させたかったため、貴方には得体のしれないものとしか思えないでしょうが魔法を使わせていただきました」
「いや、魔法ってのは気になりますがその事じゃなくて……、それに時間が短いっていうのも……?」
「ご説明します。 そして、選んでいただきたいのです。」
そう言って、俺の顔色なんて気にもしないで胡散臭さの増した笑顔でアシュマルナは説明を始めた。
母の連れ子で血が繋がらない、その上、結婚から二年で男を作り俺を置いて出て行った最低女の子供だった俺を、そのまま引き取り一人で育ててくれた父さんと夢見た親子での旅。
日本一周までとは言わないけど中古でいいから大きなキャンピングカーを買って各地を回り色んなものを見たり食べたりしたいな、とよく言っていた。
こういう装備を自作して付けよう、あれを持っていけば快適に過ごせそうだ、とか二人で語る時間は楽しく、俺も働きだしてからは実現のため金を貯めた。
数年かけその資金も潤沢に貯まり、二人の希望がつまったキャンピングカーの納車を迎え、今からいっぱい楽しんでいこう、と思っていた。
それなのに、それからわずか四日後に父さんは帰らぬ人となった。
その日は休みで試運転しようと待ち合わせたのにいくら待っても父さんは来なかった。
電話にも出ずおかしいと思い実家に行くとベッドの中で意識の無い父さんを発見、救急搬送したがその日の内に息を引き取った。同居せず社員寮生活だった俺にはどうする事も出来なかった事が、すごく悔しかった。
慌ただしい葬式の後、俺は糸が切れた様に何もかものやる気を無くし、引き留める職場の声も聞かず仕事を辞め、しばらく実家のリビングから見える駐車場のキャンピングカーをただただ眺める日々を送った。
父さんが死んで一年近く経ったある日の朝、停めたキャンピングカーを見てある事にふと気付く。毎日見ていたはずなのに何も見えてなかった。
納車の時はあんなにもキラキラ、ピカピカと光って見えた車体がくすんでいた。なんの手入れもされず放置され風雨で薄汚れている。
「俺、何してたんだろう……」
気付いた事で自分のするべき事に思い至った。
あれは二人の夢だったけど、自分一人でだってやればいいじゃないか。行きたいと言っていた観光地、食べたいと言っていた名物、キャンプや釣りだって、俺一人でも父さんの分まで俺が楽しめば父さんだって喜んでくれるはずだ。いっその事、日本一周してやる。
無くしていたやる気が自分の心に戻ってきていた。
そうと決めれば、必要なもの、あれば便利そうなもの、キャンプ動画配信者のおすすめ品だったりキャンプ用品店・ホームセンター・通販で見た良さそうと思ったもの全部購入して準備を済ます。快適に過ごすためやり過ぎなくらいがいいだろう。
そうして旅の準備を整え、しばらく帰らない実家も父さんの遺品を整理した上で、初めの第一歩として隣県の山中にあるキャンプ場を選び俺は出発した。
途中の道の駅や物産館にも立ち寄り地元の菓子や調味料だとかを買ったりしながら、その日の食材を色々買い込んでいく。
その後、緩くカーブした細い山道をキャンプ場目指し上へ進んでいたその時に、なんの前触れもなく有り得ない事が俺に起こった。
前方に突如として道を完全に塞ぐ大きさの背中に翼がある白い馬の様なものが現れ——
「うわああああああっ!!」
ブレーキを踏んで減速に間に合う距離も、回避するスペースも無く、成す術もないままそれへとぶつかり弾き飛ばされガードレールを突き破り……そこで俺の意識は途絶えた。
++++++
「……どういう事ですか」
口から出る自分の声は平素と変わらない声だった。怒っているはずなのに……自分の感情が自分で動かす事が出来ず歯痒い。
「説明に費やせる時間は短く何よりも話を優先させたかったため、貴方には得体のしれないものとしか思えないでしょうが魔法を使わせていただきました」
「いや、魔法ってのは気になりますがその事じゃなくて……、それに時間が短いっていうのも……?」
「ご説明します。 そして、選んでいただきたいのです。」
そう言って、俺の顔色なんて気にもしないで胡散臭さの増した笑顔でアシュマルナは説明を始めた。
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