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3章。バフ・マスター、Lv6覚醒

49話。バフ・マスター、敵将を討ち取る

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「皆の者! ゼルギウス将軍にありたっけのバフをかけろ!」
 
 無数の魔法の輝きが敵将を覆う。筋力強化、敏捷性強化、武器強化など、様々なタイプのバフがかけられたようだ。

「貴様もバフ・マスターなるスキルを使うようだが、我がフォルガナの魔法研究成果にかなうかな?」

「この剣で、ぶち壊す!」

 僕の剣技と神剣グラムは、最強の騎士である父上から受け継いだモノ。フォルガナの魔法などに屈しはしない。

 僕の振りかざした剣とゼルギウスの剣が、激しくぶつかり合った。
 剣ごと相手を真っ二つにするつもりだったが、硬い感触に弾き返される。

 神剣グラムと打ち合えるとは、ゼルギウスの武器も名のある魔剣、聖剣の類いだろう。

「ほぅ? この俺の剣をとめるか!」

 ゼルギウスは笑みを浮かべたと思うと、閃光のような連続突きを放った。

 すさまじい技だが、父上ほどの凄みは感じない。僕はそれらを剣で弾いて、上段斬りを放つ。

「なんとっ!?」

「悪いが、すぐに勝負を決めさせてもらう!」

 僕の剣撃を受けたゼルギウスの顔から余裕が消えた。
 父上と剣を交えたことで、剣技が飛躍的に成長していることを実感する。

「アベル様の一撃を受けて両断されないとは。『鉄壁』の異名は伊達ではないようですね!」

 横合いから僕に襲いかかってきた敵兵を、ティファが斬り捨てて叫ぶ。

「アベル様の邪魔はさせません!」

「くっ! ゼルギウス将軍をお守りしろ! 護衛はたかだか小娘一匹だ!」

 ゼルギウスが不利と見た敵集団が、僕に突進してくる。

「一騎打ちから逃げるつもりかゼルギウス! フォルガナのバフ魔法とはその程度か?」

「なんだと!? おのれ、望むところよ!」

 ゼルギウスを挑発すると、怒りに顔を真っ赤にして襲ってきた。
 ゼルギウスは武人としての自分に誇りを持っているようだ。フォルガナのバフ魔法が負けたと感じるのも癪なのだろう。

「鳳凰剣!」

 ティファが、僕らの戦いに横槍を入れようとした敵集団を、魔法剣でまとめて薙ぎ払う。

「こやつ! 音に聞こえた魔法剣士ティファ・フィクサリオか!?」

「まさか、こんな小娘が!?」

「シグルド様より受け継ぎし魔法剣、あなたたちに破れますか!?」

 ティファが見得を切ると、フォルガナの騎馬隊が怯んだ。

「ええい! 誇り高きフォルガナの魔法騎士団が、小娘ひとりに何を手間取るか!?」

 敵はまずティファを仕留めようと、彼女に魔法を撃ち込む構えを見せる。

 その時、鬨の声と共に、敵軍に突撃してくる騎馬隊がいた。剣聖イブに率いられたブラックナイツだ。

「蹴散らせ!」

 黒髪をなびかせたイブが、剣を抜いて叫ぶ。
 フォルガナ軍は先頭のイブに触れると同時に、血煙に変えられた。

 イブのスキル『剣聖』は、僕のバフ・マスターによって『剣帝』へとグレードアップしていた。
 これは剣の攻撃力を5倍に高めるスキルだ。

 その突撃を止められる者などいない。

「ブラックナイツだと!? 突撃だけしか能のない猪武者どもではないか!」

 ゼルギウスが叫ぶ。
 その認識は誤りだ。

 こと突撃の練度に関しては、ブラックナイツは大陸最強と言える。
 正しく運用すれば、その攻撃力はすさまじい。

 さらにブラックナイツは騎士だけでなく、軍馬にもバフ・マスターの強化をかけておいた。
 軍馬にもバフがかけれるのか? 疑問に思って試したのだが、結果は当たりだった。

 全ステータスが10倍に強化された軍馬による突撃だ。フォルガナ軍はおもしろいようになぎ倒されていく。

 苦戦していたルーンナイツの少女たちから歓喜の声が上がった。

「おのれ! おのれ! アーデルハイドの小童が!」

 ゼルギウスが、しゃにむに剣を振るう。焦りによって、その剣からは技のキレが失われていた。

「終わりだ。この国から出ていけフォルガナ!」

 僕はゼルギウスに上段斬りを叩き込んだ。彼は落馬して絶命する。

「お見事ですアベル様! みんな勝ち鬨よ!」

 ティファの叫びに、地を震わすような勝ち鬨が響いた。
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