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2章。バフ・マスター、Lv5覚醒
32話。【ティファSIDE】ティファ、愛するアベルに命を救われる
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「何をするつもりか知らないけど、まだ勝ち目が無いとわからないの?」
アンジェラの揶揄を無視し、ティファは精神を集中する。
彼女に魔法剣を教えてくれたシグルドはかつて言っていた。
人は欲望を満たすために剣を振るう。だが、そんな剣では最強には届かない。
「剣は心を写す鏡。誰かを守るために振るう剣にこそ力は宿る。そうですよねシグルド様」
アンジェラの騎士となったシグルドは応えない。
意思なきアンデッドである彼は黙って剣を構えた。
「この一撃にすべてを込めます!」
これは生命力を魔力に変換して放つ一撃必殺の奥義。
恐れも迷いも捨て、愛するアベルを守るためにティファは踏み込んだ。
「真・鳳凰剣!」
剣から噴出する炎が、爪を振りかざす巨大な鳳凰となって、シグルドに襲いかかる。
生命力を燃やすこの技は、命無きアンデッドには使えない。
シグルドは下位の技である鳳凰剣で、これを迎撃した。
激突する両者の剣。2体の鳳凰がお互いを喰らい合い……ティファのミスリルの剣がへし折れた。
「なっ!?」
シグルドの剣撃を受け続けた剣は、とっくに耐久限界を迎えていたのだ。
「あっ、ぐぅうううっ……」
ティファは鳳凰剣の炎を浴びて、地面を転がる。痛みに気が遠くなる中、なんとか立ち上がろうとするが、その足を何者かに掴まれた。
「誰かを守るための剣にこそ、力が宿るですって?
ロマンチックで素敵だけど、この力の差は、いかんともし難かったみたいね」
見れば地面を突き破って、いくつもの手が、ティファの両手両足を掴んでいた。
ここは墓場、アンジェラが操る死体には事欠かない場所だ。
「い、イヤッ!」
振りほどこうとするが、ゾンビたちの力が強くてできない。
「そのまま押さえつけておいて。さぁ、ティファ。私とお友達になりましょう。大丈夫、怖くて痛いのは最初だけだから。すぐに気持ち良くなれるわ」
アンジェラが歩み寄って来る。
ティファの全身の肌が泡立ち、背中に冷たい物が走った。
無理矢理、吸血鬼にされる。
そう思ったティファは、舌を噛み切って死のうとした。
「あぅ」
だが、ゾンビの手に顎を捕まれて、それはできなかった。
高位アンデッドとなって、自我を保ったままアベルとその愛する人を襲う。それだけは死んでも嫌だった。
同じアンデッドにされるなら、アベルの脅威になりにくい低位アンデッドになる方がマシだ。
なにの自害することができないとは……
ティファは悔し涙を流した。
「まさか死のうとするなんて……そうまでして、アベルを守りたいの? そんなに彼が好きなの?」
アンジェラが信じられないといった面持ちになっている。
「理解できないわ……でも、そんなに彼が好きなら、そうね。アベルと殺し合いをさせたりしたら、あなたはどんな顔をするかしら?」
頭が恐怖と怒りでいっぱいになった。
ティファは必死で魔法を使おうとするが、口を押さえられているため、呪文が発せられない。
「クスッ、冗談よ。大事なお友達にそんなヒドイことはしないわ。あなたのことは、とても気に入っているの。本当よ」
アンジェラの手にバチバチと、魔法の光が弾ける。
ティファを吸血鬼に転生させるための魔法を発動させようとしているのだろう。
「あなたと私は似ているもの。これから、ずっとずっと仲良くやっていきましょうね。大丈夫よ。あなたの大好きな彼も、ふぐにコッチに来るわ」
ティファは涙を流しながら、全力でもがく。
ボヤける視界の中で、アンジェラが手を伸ばしてくる。あの手に触れた瞬間、自分の人生は終わるのだと直感した。
アベル様!
この世で一番大切な人の名前を心の中で叫びながら、ティファはギュッと目を閉じた。
「ティファ!」
有り得ない声が聞こえた。
何よりも聞きたかったアベルの声が。
「ティファを離しなさい亡者ども。【ターン・アンデッド】!」
浄化の光が降り注ぐ。
ティファを束縛していたゾンビたちが、悲鳴を上げて消え去った。
アベルが猛然と突っ込んできて、剣をアンジェラに叩きつける。
黒衣の騎士シグルドが、それを受けた。
「こいつ……!?」
アベルが驚いている。まさか神剣グラムの一撃を受け止められるとは思っていなかったのだろう。
アンジェラが飛び退いて距離を作ると、シグルドも彼女の側まで後退した。
「あなた、どうやってここへ? ここには誰も近寄れないように結界を張っておいたのに」
「誰が教えるか!」
ティファは知っている。バフ・マスターのスキルは強化した相手がどこにいるのか、わかるのだ。
「結界なら私が解除したわよ?」
アベルのとなりで、ドレス姿のリディア王女が、怒りのこもった声で告げた。
『もしティファを泣かす奴がいたら、僕がぶっ飛ばしてやるからな!』
ティファの胸に、幼い頃アベルに言われた約束が蘇ってくる。
温かい思い出。
あの約束を、彼は大人になっても守ってくれた。
「……アベル様っ」
込み上げ来るモノが抑えられず、ティファはひたすら涙を流す。
感情が入り乱れて、言葉が出てこない。
「ティファ! 待たせて、すまない。もう大丈夫だ」
彼女を背に守ったアベルが力強く宣言した。
アンジェラの揶揄を無視し、ティファは精神を集中する。
彼女に魔法剣を教えてくれたシグルドはかつて言っていた。
人は欲望を満たすために剣を振るう。だが、そんな剣では最強には届かない。
「剣は心を写す鏡。誰かを守るために振るう剣にこそ力は宿る。そうですよねシグルド様」
アンジェラの騎士となったシグルドは応えない。
意思なきアンデッドである彼は黙って剣を構えた。
「この一撃にすべてを込めます!」
これは生命力を魔力に変換して放つ一撃必殺の奥義。
恐れも迷いも捨て、愛するアベルを守るためにティファは踏み込んだ。
「真・鳳凰剣!」
剣から噴出する炎が、爪を振りかざす巨大な鳳凰となって、シグルドに襲いかかる。
生命力を燃やすこの技は、命無きアンデッドには使えない。
シグルドは下位の技である鳳凰剣で、これを迎撃した。
激突する両者の剣。2体の鳳凰がお互いを喰らい合い……ティファのミスリルの剣がへし折れた。
「なっ!?」
シグルドの剣撃を受け続けた剣は、とっくに耐久限界を迎えていたのだ。
「あっ、ぐぅうううっ……」
ティファは鳳凰剣の炎を浴びて、地面を転がる。痛みに気が遠くなる中、なんとか立ち上がろうとするが、その足を何者かに掴まれた。
「誰かを守るための剣にこそ、力が宿るですって?
ロマンチックで素敵だけど、この力の差は、いかんともし難かったみたいね」
見れば地面を突き破って、いくつもの手が、ティファの両手両足を掴んでいた。
ここは墓場、アンジェラが操る死体には事欠かない場所だ。
「い、イヤッ!」
振りほどこうとするが、ゾンビたちの力が強くてできない。
「そのまま押さえつけておいて。さぁ、ティファ。私とお友達になりましょう。大丈夫、怖くて痛いのは最初だけだから。すぐに気持ち良くなれるわ」
アンジェラが歩み寄って来る。
ティファの全身の肌が泡立ち、背中に冷たい物が走った。
無理矢理、吸血鬼にされる。
そう思ったティファは、舌を噛み切って死のうとした。
「あぅ」
だが、ゾンビの手に顎を捕まれて、それはできなかった。
高位アンデッドとなって、自我を保ったままアベルとその愛する人を襲う。それだけは死んでも嫌だった。
同じアンデッドにされるなら、アベルの脅威になりにくい低位アンデッドになる方がマシだ。
なにの自害することができないとは……
ティファは悔し涙を流した。
「まさか死のうとするなんて……そうまでして、アベルを守りたいの? そんなに彼が好きなの?」
アンジェラが信じられないといった面持ちになっている。
「理解できないわ……でも、そんなに彼が好きなら、そうね。アベルと殺し合いをさせたりしたら、あなたはどんな顔をするかしら?」
頭が恐怖と怒りでいっぱいになった。
ティファは必死で魔法を使おうとするが、口を押さえられているため、呪文が発せられない。
「クスッ、冗談よ。大事なお友達にそんなヒドイことはしないわ。あなたのことは、とても気に入っているの。本当よ」
アンジェラの手にバチバチと、魔法の光が弾ける。
ティファを吸血鬼に転生させるための魔法を発動させようとしているのだろう。
「あなたと私は似ているもの。これから、ずっとずっと仲良くやっていきましょうね。大丈夫よ。あなたの大好きな彼も、ふぐにコッチに来るわ」
ティファは涙を流しながら、全力でもがく。
ボヤける視界の中で、アンジェラが手を伸ばしてくる。あの手に触れた瞬間、自分の人生は終わるのだと直感した。
アベル様!
この世で一番大切な人の名前を心の中で叫びながら、ティファはギュッと目を閉じた。
「ティファ!」
有り得ない声が聞こえた。
何よりも聞きたかったアベルの声が。
「ティファを離しなさい亡者ども。【ターン・アンデッド】!」
浄化の光が降り注ぐ。
ティファを束縛していたゾンビたちが、悲鳴を上げて消え去った。
アベルが猛然と突っ込んできて、剣をアンジェラに叩きつける。
黒衣の騎士シグルドが、それを受けた。
「こいつ……!?」
アベルが驚いている。まさか神剣グラムの一撃を受け止められるとは思っていなかったのだろう。
アンジェラが飛び退いて距離を作ると、シグルドも彼女の側まで後退した。
「あなた、どうやってここへ? ここには誰も近寄れないように結界を張っておいたのに」
「誰が教えるか!」
ティファは知っている。バフ・マスターのスキルは強化した相手がどこにいるのか、わかるのだ。
「結界なら私が解除したわよ?」
アベルのとなりで、ドレス姿のリディア王女が、怒りのこもった声で告げた。
『もしティファを泣かす奴がいたら、僕がぶっ飛ばしてやるからな!』
ティファの胸に、幼い頃アベルに言われた約束が蘇ってくる。
温かい思い出。
あの約束を、彼は大人になっても守ってくれた。
「……アベル様っ」
込み上げ来るモノが抑えられず、ティファはひたすら涙を流す。
感情が入り乱れて、言葉が出てこない。
「ティファ! 待たせて、すまない。もう大丈夫だ」
彼女を背に守ったアベルが力強く宣言した。
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