23 / 70
2章。バフ・マスター、Lv5覚醒
23話。【バランSIDE】バラン団長、バフ・マスターに忠誠を誓わせられる
しおりを挟む
「アベルに忠誠を誓えだと!?」
バランは国王の言葉に愕然とした。
「アベル・ベオルブ伯爵をワシの後継者。次期国王とする。異議がある者は、この場にて申し出でよ!」
無論、国王の決定に、異論を述べることができる者などいない。
ひざまずいて、頭を垂れるのみだ。
「我らに異議はございません! 魔法王国フォルガナの脅威が高まっている現在、最良の選択かと存じます!」
「誠に、ご英断でございます!」
宰相ら国の重鎮たちが、大声で賛意を表する。
他の貴族たちも、次々に支持を表明した。
「それではアベルよ。みなに言葉を」
「はっ!」
アベルが国王の隣に立つ。
「アベル・ベオルブ伯爵です。この度、ルーンナイツ、ブラックナイツの力を借りて、アンデッドの討伐に成功し、リディア王女殿下の婚約者となる栄誉を得ました。
僕のスキル『バフ・マスター』は、3000人の全ステータスを10倍にアップさせる力です。
この力で王女殿下と、この国を守って行く所存でありますので、どうか御指導ごべんたつのほどよろしくお願い致します」
アベルが頭を下げると、万雷の拍手が鳴り響いた。
「アーデルハイドの軍神アベル様、ばんざい!」
「我らが王太子殿下!」
会場内で拍手をしていないのは、バランくらいなものだった。
そんなバランに、周囲が不審の目を向けてくる。
「バラン殿……?」
国王の決定に賛同を示さないなど、家臣として有り得ないことだ。
仕方なく、手を叩いているフリをする。
それだけでも、身を焼くような屈辱だった。
「では、ひとりずつ前に出て、我が息子に忠誠を誓うが良い」
「はっ!」
貴族たちが先を争って、アベルの前に出て平伏する。
次期国王に、真っ先に忠誠を見せることで、覚えを良くしようという目論見だ。
「次期国王陛下に、忠誠を捧げます!」
「アベル王太子殿下! 私はあなた様の手足となって働くことを誓います!」
「うむうむ!」
国王が満足そうに頷いている。
「どうかみなさん、未熟な僕を導いてください。いえ、冗談とかではなく……」
アベルが緊張した面持ちで、貴族たちと握手を交していた。
落ちこぼれが、すっかり次期国王気取りのようだ。
「バラン? あなたもアベルに忠誠を誓いなさい」
リディア王女が一向に動こうとしないバランに声をかけてきた。
会場の注目がバランに向けられる。
「バラン・オースティン殿は、なぜ動こうとしないのだ……?」
「まさか、国王陛下に叛意がお有りなのか?」
このままでは立場が悪くなる。
刺客を放ち、どうせアベルの命は今夜限りなのだ。
バランは意を決して、アベルの前に進み出てた。
「……アベル王太子殿下に忠誠を誓います!」
ヤケクソで叫んで返事も聞かぬまま、踵を返した。
本来は王太子に対して、忠誠の証として剣を捧げねはならなかったが、頭を軽く下げるだけにした。
「あっ、バラン団長。どちらへ?」
「バラン! 我が夫に対して無礼ですよ!」
アベルが困惑し、リディア王女の叱責が飛ぶ。
「ブラックナイツの団長たるお方が、王太子殿下に剣を捧げない?」
貴族たちからも訝しむ声が上がった。
「軍務に関わる急用ができました故に、失礼いたす!」
バランは聞く耳を持たずに、その場を後にした。
これ以上、この場にいるなど我慢がならなかった。
この態度が、後日バランをさらなる窮地に追い込むことになるとは、彼はこの時、思いもしていなかった。
バランは国王の言葉に愕然とした。
「アベル・ベオルブ伯爵をワシの後継者。次期国王とする。異議がある者は、この場にて申し出でよ!」
無論、国王の決定に、異論を述べることができる者などいない。
ひざまずいて、頭を垂れるのみだ。
「我らに異議はございません! 魔法王国フォルガナの脅威が高まっている現在、最良の選択かと存じます!」
「誠に、ご英断でございます!」
宰相ら国の重鎮たちが、大声で賛意を表する。
他の貴族たちも、次々に支持を表明した。
「それではアベルよ。みなに言葉を」
「はっ!」
アベルが国王の隣に立つ。
「アベル・ベオルブ伯爵です。この度、ルーンナイツ、ブラックナイツの力を借りて、アンデッドの討伐に成功し、リディア王女殿下の婚約者となる栄誉を得ました。
僕のスキル『バフ・マスター』は、3000人の全ステータスを10倍にアップさせる力です。
この力で王女殿下と、この国を守って行く所存でありますので、どうか御指導ごべんたつのほどよろしくお願い致します」
アベルが頭を下げると、万雷の拍手が鳴り響いた。
「アーデルハイドの軍神アベル様、ばんざい!」
「我らが王太子殿下!」
会場内で拍手をしていないのは、バランくらいなものだった。
そんなバランに、周囲が不審の目を向けてくる。
「バラン殿……?」
国王の決定に賛同を示さないなど、家臣として有り得ないことだ。
仕方なく、手を叩いているフリをする。
それだけでも、身を焼くような屈辱だった。
「では、ひとりずつ前に出て、我が息子に忠誠を誓うが良い」
「はっ!」
貴族たちが先を争って、アベルの前に出て平伏する。
次期国王に、真っ先に忠誠を見せることで、覚えを良くしようという目論見だ。
「次期国王陛下に、忠誠を捧げます!」
「アベル王太子殿下! 私はあなた様の手足となって働くことを誓います!」
「うむうむ!」
国王が満足そうに頷いている。
「どうかみなさん、未熟な僕を導いてください。いえ、冗談とかではなく……」
アベルが緊張した面持ちで、貴族たちと握手を交していた。
落ちこぼれが、すっかり次期国王気取りのようだ。
「バラン? あなたもアベルに忠誠を誓いなさい」
リディア王女が一向に動こうとしないバランに声をかけてきた。
会場の注目がバランに向けられる。
「バラン・オースティン殿は、なぜ動こうとしないのだ……?」
「まさか、国王陛下に叛意がお有りなのか?」
このままでは立場が悪くなる。
刺客を放ち、どうせアベルの命は今夜限りなのだ。
バランは意を決して、アベルの前に進み出てた。
「……アベル王太子殿下に忠誠を誓います!」
ヤケクソで叫んで返事も聞かぬまま、踵を返した。
本来は王太子に対して、忠誠の証として剣を捧げねはならなかったが、頭を軽く下げるだけにした。
「あっ、バラン団長。どちらへ?」
「バラン! 我が夫に対して無礼ですよ!」
アベルが困惑し、リディア王女の叱責が飛ぶ。
「ブラックナイツの団長たるお方が、王太子殿下に剣を捧げない?」
貴族たちからも訝しむ声が上がった。
「軍務に関わる急用ができました故に、失礼いたす!」
バランは聞く耳を持たずに、その場を後にした。
これ以上、この場にいるなど我慢がならなかった。
この態度が、後日バランをさらなる窮地に追い込むことになるとは、彼はこの時、思いもしていなかった。
0
お気に入りに追加
2,034
あなたにおすすめの小説
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。
ぽてさら
ファンタジー
ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。
それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。
個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。
青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~
竹間単
ファンタジー
【勇者PTを追放されたチートなユニークスキル持ちの俺は、美少女と旅をする】
役立たずとして勇者パーティーを追放されて途方に暮れていた俺は、美少女に拾われた。
そして俺は、美少女と旅に出る。
強力すぎるユニークスキルを消す呪いのアイテムを探して――――
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる