パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん

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1章。バフ・マスター、Lv4覚醒

15話。バフ・マスター、国の英雄としてみんなから賞賛される。バラン団長は石を投げられる

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 王都の城門をくぐった僕たちルーンナイツは、大喝采に迎えられた。

「アベル様! アベル様!」

「国を救った我らが新たなる英雄!」

「王女近衛騎士団ルーンナイツ、ばんざい!」

 道の両脇を埋め尽くした人々が、ボクに向かって手を振り上げ、喜びの声を上げている。

 みな一様に僕を褒めたたえるので、心臓に悪いことこの上なかった。

 ボクの勝利は早馬を送ったので、すでに人々に知れ渡っているようだ。

「すごい人気ねアベル。せっかくだから、みんなの声援に応えてあげたら?」

 歓声に手を振りながら、リディアがそんなことを言ってくる。

「いや、しかし……僕ひとりの力で勝った訳じゃないからな」

「この国の守護神だと思われてきたブラックナイツが敗北続きで、今この国の民たちは、新たな英雄を欲しているのよ。
 その期待に応えてあげるのも、シグルド様の跡継ぎであるあなたの役目じゃない?」
 
「ブラックナイツのこれまでの活躍も、すべてはアベル様のお力があったればこそです。すでにアベル様は、シグルド様に比肩しうる英雄であると存じます。どうか胸を張ってください」

 リディアだけでなく、ティファまで僕を持ち上げてくる。
 まいったな……

 ドラゴンやアンデッドの大軍の襲来により、みんなの不安が高まっているのも事実だ。
 彼らを安心させるのも、父上の跡継ぎを目指してきた僕の役目だろう。

「そうだな。これも騎士団長の務めだ」

 僕は神剣グラムを抜き放って天高く掲げた。日の光りを反射して、神剣が銀色に輝いた。

「「「わぁあああああっ!」」」

「うおっ!?」

 王都全体が揺れるような凄まじい大歓声が轟き、身を竦ませてしまう。
 
「きゃあ!? アベル様が、私を見てくれたわ!」

「違うわ! 私を見てくれたのよ!」

「あーん! なんて凛々しくてカッコいいお方なの!?」
 
 ボクが視線を向けた若い女性たちが、黄色い声を上げている。
 民たちの熱狂ぶりはすさまじく、感涙にむせんでいる者もいた。

 うれしいけれど、いたたまれない。

 僕はこんな賞賛を浴びるなど、初めてのことだからな……

「これは、ヤバい。早く屋敷に帰るとするか」

「そうは参りませんよ、アベル様。王宮で国王陛下に戦勝のご報告をせねばなりません」

 ティファに生真面目に告げられる。

 それもそうだった。
 僕たちは、歓声に包まれながら王宮へと向かった。



 アベルたちルーンナイツに続いて、バラン団長に率いられたブラックナイツも王都の城門をくぐった。
 大量の戦死者を出した彼らは、みな疲弊しズタボロだった。

「おい、見ろよ。バラン団長のブラックナイツだぜ?」

「また負けたんだってな……」

 かつては拍手喝采で迎えられたバランであったが、人々から向けられるのは侮蔑の眼差しだった。

「アンデッドの軍団に何も考えずに突っ込んで、危うく全滅しかけたところをアベル様に助けられたって話だぜ?」

「カッコわりぃ。っていうか、無能な指揮官の下で戦う騎士様たちが、かわいそうだぜ。今回は何人、死んだんだ……?」

「俺、ブラックナイツの入団試験を受けようと思っていたんだけど、やめるわ!」

「それがいい。今、あんな騎士団に入るヤツは自殺志願者がマゾだぜ」

「私、絶対にルーンナイツの入団試験を受けるわ! それでアベル様の元で戦うの! ブラックナイツの彼氏がいたけど、もう別れる! アベル様の方が100倍素敵だもん!」

「おおっ! 嬢ちゃん絶対そうしろよ!」

 ブラックナイツは、民たちから失望と落胆の声を浴びせられる。
 もはや最強騎士団の栄光は見る影もなかった。

「無能のバラン! お兄ちゃんを返せ!」

 なんとバランに向けて石を投げてくる少年がいた。おそらく戦死した騎士の遺族だろう。

「こ、この餓鬼っ! おい、そいつを捕らえて殺せ!」

「やめなさい」

 バランが命じると、イブが制止した。

「その子に危害を加える者は、私が斬る」

 剣聖にそこまで言われては、動く者はいなかった。
 
「くそぅ! 愚民どもめ、この俺が! ブラックナイツが今まで守ってやった恩を忘れおって!」

 バラン団長は、悔しさのあまり歯ぎしりした。
 そんな彼を、イブを始めとした配下の騎士たちは冷たい目で見つめていた。
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