パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん

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1章。バフ・マスター、Lv4覚醒

4話。バフ・マスター、元最強騎士団ナンバー2の美少女から忠誠を誓われる

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「アベル様! ドラゴンを単騎で倒し、リディア王女をお守りしたと、お聞きしました!」

 息を切らしたハーフエルフの美少女、ティファが転がり込んできた。
 ここは僕の家、ベオルブ伯爵家の屋敷だ。

「てっ、おい……大丈夫か?」

 ティファはボロボロだった。着込んだ鎧は、あちこちひび割れ、顔もすすけている。

 侵入してきた魔物の軍勢に、ブラックナイツは破れたと聞いたが、本当だったようだ。

 魔物の軍勢は、村々を襲撃して、略奪の限りを尽くした挙げ句、引き上げていったらしい。
 
「まずは、手当と。それから、食事を……」

「私のことは、どうでも良いのです!」

 ティファが大声をあげる。

「ああっ……! そ、それはシグルド様の神剣グラム。力と勇気を兼ね備えた最強の騎士の証!」

 僕が腰から下げた剣を目の当たりにして、ティファは、ボロボロと涙を流した。

「やはり、アベル様こそ、私がお仕えすべき真の英雄です!」

「そんな大げさな……ドラゴンに勝てたのは、まぐれみたいなモノだ」

「どこの世界に、まぐれでドラゴンを倒せる者がいますか!? 
 アベル様は、やがて、この国になくてはならない存在に成長するとおっしゃられたシグルド様の目に、やはり狂いはありませんでした!」

 片膝をついたティファは、剣を抜いて逆手に持つ。刃を自分の胸に当て、柄の部分を僕に向けた。

「アベル様! 我が忠誠の剣をお受けください」

 これは相手に対して絶対の忠誠を誓う騎士の『剣の誓い』の儀式だ。
 王家ではなく、僕の家臣になりたいという意思表示だ。

 剣を受け取れば、僕はティファの忠誠を受け取ったことになる。
 
「ちょっと待ってくれ。ティファはブラックナイツのナンバー2だろ? バラン団長に断りもなく、僕に剣を捧げるのは……」

「ブラックナイツは辞して参りました。何の問題もありません!」

 ティファは僕の父上の愛弟子だ。
 魔法剣士として、国内外にその雷名を轟かせている。

 正直、剣も魔法も人並み以下でしかない僕なんかの家臣に収まるような人物ではない。

「ご主人様。ティファ様の剣をお受けください。お家、再興のためにも」

 僕の背後に控えたメイドのコレットが、そのように促した。

 ベオルブ伯爵家の所領は小さく、騎士団長の地位にあった父上が亡くなってからは、没落の一途をたどっていた。

 収入が激減して、召使いを雇えなくなったんだ。
 コレットは、給金が少なくとも構わないと、唯一残ってくれたメイドだった。

 そうだ。そんなコレットにも報いなくてはならない。

「わかった。僕はリディア王女殿下から近衛騎士団の団長になって欲しいと言われている。ティファには、副団長として僕を支えてもらいたい」

「王女殿下の近衛騎士団長!? はっ! 身命を賭して、アベル様をお支えいたします」

「ティファ・フィクサリオの剣、確かに受け取った」

 僕は剣を受け取って掲げ、柄の部分をティファに向けて返した。

 ティファは、僕にとって、ずっとこの屋敷で一緒に過ごしてきた姉のような存在だった。

 ティファは、かつてエルフの里で暮らしていたが、ハーフエルフであると疎まれて、追放されたらしい。

 8年前、僕はお腹を空かせて森の中で倒れていたティファに出会った。

 ひとりぼっちで、寒さに震えている彼女は、外れスキルを得て爪弾きにされた僕と同じだと思った。
 
 僕はティファに食料を渡し、家に招いた。
 そうして、僕たちは家族になった。

「ありがたき幸せです!」

 あの日から、ずっとティファは僕の味方だ。
 それはこれからも永遠に変わらなかったのである。
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