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1章。バフ・マスター、Lv4覚醒
1話。バフ・マスター、騎士団長に無能と追放されるも、王女を助けてドラゴンを倒す
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「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕は、開口一番、クビを宣言された。
バランはこの国最強の騎士団、ブラックナイツの頂点に立つ男だ。
「な、何故ですか……!? ボクは【バフ・マスター】のスキルで、必死に後方支援をしてきたつもりですが!?」
「【バフ・マスター】だと? くだらん! たかだか、他人のステータスを多少、引き上げるだけの力ではないか!?」
「最初は確かにそうでしたが……毎日、スキルを使い続けることで、今では騎士団3000人分のステータスを上げることができるようになったのですよ」
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
英雄の息子に相応しくないパッとしないスキルだと……
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「それがどうした? 団員たちからも苦情が出ておる。貴様は、戦場で戦いもせず、ただ突っ立ているだけだとな。
さらには国王陛下もご覧になった剣術大会において、最下位! 剣の稽古を怠けて、貴様、毎日、何をしておった?」
「何度もご説明していますが、【バフ・マスター】のスキルを3000人にかけ続けるためには、極度の集中力を必要とします。その間、僕は動けなくなってしまうんです!」
この国の北側には魔王領があり、そこから、ひんぱんに魔物の大群が侵入してきていた。
だから剣術大会の最中も、僕は騎士団にいつ出動命令がかかっても大丈夫なように、全員にバフをかけ続けた。
それが僕の役目であり、仲間を守るために必要なことだからだ。
剣術大会は団長に辞退を申し出たのだけど、むりやり出場させられた。
皮肉なことに、僕は【バフ・マスター】で強くなった仲間に、剣術大会でボコボコにされるハメになった。
「黙れ! 言い訳をするな! 俺は貴様のような軟弱者がヘドが出るほど嫌いだ! 数々の英雄を輩出してきた名門ベオルブ伯爵家も地に墜ちたものだな!?」
バランが激しく机を叩いた。
「跡取りが、このていたらくとは。前団長のシグルド殿は、子育てにおいては無能であったということか?」
父上をバカにされて、僕は怒りをこらえるのに必死だった。
父上は3年前、ブラックナイツを率いて魔物の大軍勢と戦って、亡くなった。
父と入れ代わりに入団した僕だったが、剣術も得意ではなく、レベルは未だに1。
落ちこぼれだと、みんなから嘲笑われた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数が増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。
これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「クックック! アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。
そんな嘘八百を並べ立ててまで、ブラックナイツに残りたいのか!?」
団長は大声で笑った。
確かに常軌を逸した効果だと思うが、これは紛れもない僕の8年間の努力の成果だ。
「詳細については、報告書をあげています。僕はこの力で、みんなを守れる立派な騎士になりたいと、精進してきたのですが……」
「剣を取って戦ってこそ騎士! 戦えぬ無能など不要だ! さっさと出いけ!
これは俺だけでなく、騎士団の総意である!」
僕は、もはや何を言っても無駄だと悟った。
団長の中で、すでに結論は決まっているのだ。必死にがんばってきたつもりだったが……
僕は誉れ高きブラックナイツのお荷物でしかなかったのだろう。
「……わかりました。団長、お世話になりました」
込み上げるモノを抑えながら、僕はその場を後にした。
◇
この時、騎士団長バランは思いもしていなかった。
アベルが去ったその直後、最強の名を轟かせていたブラックナイツが、連戦連敗を重ね、やがては崩壊するということに。
ブラックナイツの栄光は、アベルが支えていたということに。
◇
「はぁ……団長に、まるで評価されていなかったなんて」
家に向かってトボトボ歩く僕は、大きくため息を吐いた。
ここは王宮へと続く、大通りである。
「きゃああああっ!?」
その時、甲高い悲鳴が響いた。
聞き覚えのある女の子の声。
まさかとは思うが、僕の直感が正しければ、この声は……
大勢の人が、血相を変えて逃げ出してくる。
振り返れば、僕の視線の先には巨大なドラゴンがいた。
バカな……
ここは王宮の近くだ。こんな最強クラスの魔物がいるなど、絶対にあり得ない。
生存本能に逆らって、僕はドラゴンに向かって駆け出した。悲鳴を上げた女の子が気になったからだ。
救援に駆け出した先に、彼女はいた。
流れ星を束ねたかのような金髪をした美しい少女。この国の王女リディア・リィ・アーデルハイド殿下だ。
「リディア王女殿下……!」
尻もちをつく王女の周りでは、護衛の騎士たちが、震えながら剣を構えている。
「ア、アベル……!?」
リディアと目が合う。
彼女とは幼馴染であり、昔はよく一緒に城の庭園で、隠れんぼなどをして遊んだ。
子供のお遊びで、結婚の約束もしたものだ。
僕が外れスキル持ちの落ちこぼれになってからは、周囲の目もあって交流が途絶えてしまったのだが……
そのリディアに向かって、ドラゴンが灼熱のブレスを吐き出した。
「うぉおおおおおおっ!」
無我夢中だった。
それは、一瞬のひらめき。
今までブラックナイツにかけていた【バフ・マスター】のステータス上昇効果をすべて解除して、自分に集中させた。
―――――――
名 前:アベル・ベオルブ
レベル:1
体 力: 46 ⇒ 4600(UP!)
筋 力: 71 ⇒ 7100(UP!)
防御力: 53 ⇒ 5300(UP!)
魔 防: 50 ⇒ 5000(UP!)
魔 力: 60 ⇒ 6000(UP!)
敏 捷: 42 ⇒ 4200(UP!)
全ステータスが100倍になりました!
―――――――
ステータスアップを告げる無機質な声が、頭に鳴り響く。
全ステータス100倍だって?
これは王国最強の騎士であるバラン団長を遥かに上回る能力値だぞ。
ステータスはひとつでも4桁を超えれば、冒険者ならAランクに認定される。
僕は、そのままリディアの前に立って盾となった。
火炎が全身に浴びせられるが、覚悟していたような痛みはない。
驚いたことにノーダメージだった。
防御力が5000以上になったおかげだ。
「ア、アベル、なんて無茶を……!?」
リディアが絶叫する。
―――――――
スキル熟練度を獲得! スキルレベルがアップしました!
スキル:【バフ・マスター】Lv4(UP!)
Lv2ボーナス: 効果人数最大3000人
Lv3ボーナス: 全ステータス10倍アップ
Lv4ボーナス: スキル発動中の行動制限なし(NEW!)
Lv5ボーナス: ???
―――――――
「スキル発動中の行動制限なし!?」
今まで、【バフ・マスター】を使っている間は、歩く程度の行動しかできなくなっていた。この行動制限が、なくなったらしい。
僕はそのままドラゴンに突っ込み、力任せに剣を叩きつけた。
剣圧ですさまじい衝撃波が発生し、木々が弾け飛び、大地に亀裂が走る。
ドラゴンが、あっさり両断された。
「「「……はぇ?」」」
僕を含めた全員が、驚きに目を瞬いた。
騎士団長バランに呼び出された僕は、開口一番、クビを宣言された。
バランはこの国最強の騎士団、ブラックナイツの頂点に立つ男だ。
「な、何故ですか……!? ボクは【バフ・マスター】のスキルで、必死に後方支援をしてきたつもりですが!?」
「【バフ・マスター】だと? くだらん! たかだか、他人のステータスを多少、引き上げるだけの力ではないか!?」
「最初は確かにそうでしたが……毎日、スキルを使い続けることで、今では騎士団3000人分のステータスを上げることができるようになったのですよ」
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
英雄の息子に相応しくないパッとしないスキルだと……
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「それがどうした? 団員たちからも苦情が出ておる。貴様は、戦場で戦いもせず、ただ突っ立ているだけだとな。
さらには国王陛下もご覧になった剣術大会において、最下位! 剣の稽古を怠けて、貴様、毎日、何をしておった?」
「何度もご説明していますが、【バフ・マスター】のスキルを3000人にかけ続けるためには、極度の集中力を必要とします。その間、僕は動けなくなってしまうんです!」
この国の北側には魔王領があり、そこから、ひんぱんに魔物の大群が侵入してきていた。
だから剣術大会の最中も、僕は騎士団にいつ出動命令がかかっても大丈夫なように、全員にバフをかけ続けた。
それが僕の役目であり、仲間を守るために必要なことだからだ。
剣術大会は団長に辞退を申し出たのだけど、むりやり出場させられた。
皮肉なことに、僕は【バフ・マスター】で強くなった仲間に、剣術大会でボコボコにされるハメになった。
「黙れ! 言い訳をするな! 俺は貴様のような軟弱者がヘドが出るほど嫌いだ! 数々の英雄を輩出してきた名門ベオルブ伯爵家も地に墜ちたものだな!?」
バランが激しく机を叩いた。
「跡取りが、このていたらくとは。前団長のシグルド殿は、子育てにおいては無能であったということか?」
父上をバカにされて、僕は怒りをこらえるのに必死だった。
父上は3年前、ブラックナイツを率いて魔物の大軍勢と戦って、亡くなった。
父と入れ代わりに入団した僕だったが、剣術も得意ではなく、レベルは未だに1。
落ちこぼれだと、みんなから嘲笑われた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数が増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。
これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「クックック! アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。
そんな嘘八百を並べ立ててまで、ブラックナイツに残りたいのか!?」
団長は大声で笑った。
確かに常軌を逸した効果だと思うが、これは紛れもない僕の8年間の努力の成果だ。
「詳細については、報告書をあげています。僕はこの力で、みんなを守れる立派な騎士になりたいと、精進してきたのですが……」
「剣を取って戦ってこそ騎士! 戦えぬ無能など不要だ! さっさと出いけ!
これは俺だけでなく、騎士団の総意である!」
僕は、もはや何を言っても無駄だと悟った。
団長の中で、すでに結論は決まっているのだ。必死にがんばってきたつもりだったが……
僕は誉れ高きブラックナイツのお荷物でしかなかったのだろう。
「……わかりました。団長、お世話になりました」
込み上げるモノを抑えながら、僕はその場を後にした。
◇
この時、騎士団長バランは思いもしていなかった。
アベルが去ったその直後、最強の名を轟かせていたブラックナイツが、連戦連敗を重ね、やがては崩壊するということに。
ブラックナイツの栄光は、アベルが支えていたということに。
◇
「はぁ……団長に、まるで評価されていなかったなんて」
家に向かってトボトボ歩く僕は、大きくため息を吐いた。
ここは王宮へと続く、大通りである。
「きゃああああっ!?」
その時、甲高い悲鳴が響いた。
聞き覚えのある女の子の声。
まさかとは思うが、僕の直感が正しければ、この声は……
大勢の人が、血相を変えて逃げ出してくる。
振り返れば、僕の視線の先には巨大なドラゴンがいた。
バカな……
ここは王宮の近くだ。こんな最強クラスの魔物がいるなど、絶対にあり得ない。
生存本能に逆らって、僕はドラゴンに向かって駆け出した。悲鳴を上げた女の子が気になったからだ。
救援に駆け出した先に、彼女はいた。
流れ星を束ねたかのような金髪をした美しい少女。この国の王女リディア・リィ・アーデルハイド殿下だ。
「リディア王女殿下……!」
尻もちをつく王女の周りでは、護衛の騎士たちが、震えながら剣を構えている。
「ア、アベル……!?」
リディアと目が合う。
彼女とは幼馴染であり、昔はよく一緒に城の庭園で、隠れんぼなどをして遊んだ。
子供のお遊びで、結婚の約束もしたものだ。
僕が外れスキル持ちの落ちこぼれになってからは、周囲の目もあって交流が途絶えてしまったのだが……
そのリディアに向かって、ドラゴンが灼熱のブレスを吐き出した。
「うぉおおおおおおっ!」
無我夢中だった。
それは、一瞬のひらめき。
今までブラックナイツにかけていた【バフ・マスター】のステータス上昇効果をすべて解除して、自分に集中させた。
―――――――
名 前:アベル・ベオルブ
レベル:1
体 力: 46 ⇒ 4600(UP!)
筋 力: 71 ⇒ 7100(UP!)
防御力: 53 ⇒ 5300(UP!)
魔 防: 50 ⇒ 5000(UP!)
魔 力: 60 ⇒ 6000(UP!)
敏 捷: 42 ⇒ 4200(UP!)
全ステータスが100倍になりました!
―――――――
ステータスアップを告げる無機質な声が、頭に鳴り響く。
全ステータス100倍だって?
これは王国最強の騎士であるバラン団長を遥かに上回る能力値だぞ。
ステータスはひとつでも4桁を超えれば、冒険者ならAランクに認定される。
僕は、そのままリディアの前に立って盾となった。
火炎が全身に浴びせられるが、覚悟していたような痛みはない。
驚いたことにノーダメージだった。
防御力が5000以上になったおかげだ。
「ア、アベル、なんて無茶を……!?」
リディアが絶叫する。
―――――――
スキル熟練度を獲得! スキルレベルがアップしました!
スキル:【バフ・マスター】Lv4(UP!)
Lv2ボーナス: 効果人数最大3000人
Lv3ボーナス: 全ステータス10倍アップ
Lv4ボーナス: スキル発動中の行動制限なし(NEW!)
Lv5ボーナス: ???
―――――――
「スキル発動中の行動制限なし!?」
今まで、【バフ・マスター】を使っている間は、歩く程度の行動しかできなくなっていた。この行動制限が、なくなったらしい。
僕はそのままドラゴンに突っ込み、力任せに剣を叩きつけた。
剣圧ですさまじい衝撃波が発生し、木々が弾け飛び、大地に亀裂が走る。
ドラゴンが、あっさり両断された。
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