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4章。傾国の大魔族ジゼルとの決戦
54話。破滅するハズだった悪役は、王女と幸せになる
しおりを挟む「ヴァイス君、大事な話って何かな!?」
昼休み、セリカを学園の屋上に呼び出すと、彼女は喜び勇んで現れた。
昼夜問わず、俺に付きまとっている使い魔ジゼルには、購買部の1番人気である焼きそばパンを買い占めろと命令して、追っ払っていた。
おそらくフィアナや他の生徒たちと大戦争になって、ここにはやってこれないハズだ。
「もしかして、改めて愛の告白!? 屋上といったらソレしかないものね!」
「……うん、そうだ。セリカには改めて、愛の告白をしたいと思って呼び出したんだ」
「きゃあああッ! 今や【栄光なる騎士】のヴァイス君に告白してもらえるんなんて、光栄だわ!」
セリカは両手を頬に当てて、モジモジしていた。
これから、俺は人生で最大の勝負をすることになる。
もしかすると、後悔することになるかも知れないが、この試練を乗り越えなくては、真の幸せは得られないと確信していた。
「実は驚かないで聞いて欲しいんだけど……俺はこの世界で起こることを予め知っていたんだ。俺は本来、ジゼルによって魔族化されて殺される雑魚悪役だった」
「へっ……?」
セリカは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。
「な、なに? どうしちゃったの?」
「……そんな俺が生き残るために必要だったのが、ジゼルの天敵のセリカと仲良くなって、ずっと一緒にいられる立場になることだったんだ。俺はそのために、危険を冒して魔族ガロンに立ち向かった」
「……はっ、な、なによソレ?」
セリカは笑顔を凍りつかせた。彼女は俺の言っていることの意味がわからず、動揺していた。
「つまり、俺はセリカが好きだから、セリカのために命を賭けたんじゃなくて、最初は全部、自分のためだったんだ」
「わ、訳がわからないわ! それじゃ、私が好きじゃなかったってこと!?」
セリカは理解を拒否するかのように、俺を睨みつけた。
「ま、まさか、別れて欲しいなんて、言わないわよね!? 嫌よ、そんなの!」
「もちろん、そんなことはない。言ったろ、これは愛の告白だって……」
俺は片膝をついて、指輪を差し出した。
【栄光なる騎士】の給料3ヶ月分を前借りして買ったものだ。
「えっ、こ、これって……!?」
「最初は、自分のためだけにセリカに近づいた俺だけど。セリカと一緒にいる中で、どんどんセリカに惹かれていった。今ではセリカのことが、心の底から好きだと言える」
とたんに、セリカの顔が薔薇色に染まる。
「真実を……俺の本当の気持ちを伝えないまま、なし崩し的に、セリカと恋人のままでいるのは良くないと思ったんだ。だから、セリカを傷つけてしまうことを覚悟して、本当のことを話すことに決めた。どうか許して欲しい。そして、もし俺の気持ちを受け入れてくれるなら、これを受け取ってもらいたいんだ」
「この宝石はダイヤモンド……!」
俺が手に持つのはダイヤモンドが象嵌された指輪だ。セリカが好むであろうデザインの指輪を妹のエレナと、アチコチの宝石店をはしごして探した。
ダイヤモンドは『永遠に変わらぬ愛』を象徴する宝石と言われている。
「こんな俺で良ければ、卒業後は俺と結婚して欲しい。俺はそれまで、誰にも負けない。どんな強敵からも、セリカを守ってみせる」
「ヴァイス君……は、はい、喜んで!」
セリカは感激に肩を震わせて、指輪を受け取った。
前世では、天涯孤独で家族も友達も恋人もいなかった俺は、この瞬間、人生を共に歩むパートナーを得たのだ。
大魔族を相手にするより、はるかに恐ろしい俺の最大の戦いは、大勝利に終わった。
昼休み、セリカを学園の屋上に呼び出すと、彼女は喜び勇んで現れた。
昼夜問わず、俺に付きまとっている使い魔ジゼルには、購買部の1番人気である焼きそばパンを買い占めろと命令して、追っ払っていた。
おそらくフィアナや他の生徒たちと大戦争になって、ここにはやってこれないハズだ。
「もしかして、改めて愛の告白!? 屋上といったらソレしかないものね!」
「……うん、そうだ。セリカには改めて、愛の告白をしたいと思って呼び出したんだ」
「きゃあああッ! 今や【栄光なる騎士】のヴァイス君に告白してもらえるんなんて、光栄だわ!」
セリカは両手を頬に当てて、モジモジしていた。
これから、俺は人生で最大の勝負をすることになる。
もしかすると、後悔することになるかも知れないが、この試練を乗り越えなくては、真の幸せは得られないと確信していた。
「実は驚かないで聞いて欲しいんだけど……俺はこの世界で起こることを予め知っていたんだ。俺は本来、ジゼルによって魔族化されて殺される雑魚悪役だった」
「へっ……?」
セリカは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になった。
「な、なに? どうしちゃったの?」
「……そんな俺が生き残るために必要だったのが、ジゼルの天敵のセリカと仲良くなって、ずっと一緒にいられる立場になることだったんだ。俺はそのために、危険を冒して魔族ガロンに立ち向かった」
「……はっ、な、なによソレ?」
セリカは笑顔を凍りつかせた。彼女は俺の言っていることの意味がわからず、動揺していた。
「つまり、俺はセリカが好きだから、セリカのために命を賭けたんじゃなくて、最初は全部、自分のためだったんだ」
「わ、訳がわからないわ! それじゃ、私が好きじゃなかったってこと!?」
セリカは理解を拒否するかのように、俺を睨みつけた。
「ま、まさか、別れて欲しいなんて、言わないわよね!? 嫌よ、そんなの!」
「もちろん、そんなことはない。言ったろ、これは愛の告白だって……」
俺は片膝をついて、指輪を差し出した。
【栄光なる騎士】の給料3ヶ月分を前借りして買ったものだ。
「えっ、こ、これって……!?」
「最初は、自分のためだけにセリカに近づいた俺だけど。セリカと一緒にいる中で、どんどんセリカに惹かれていった。今ではセリカのことが、心の底から好きだと言える」
とたんに、セリカの顔が薔薇色に染まる。
「真実を……俺の本当の気持ちを伝えないまま、なし崩し的に、セリカと恋人のままでいるのは良くないと思ったんだ。だから、セリカを傷つけてしまうことを覚悟して、本当のことを話すことに決めた。どうか許して欲しい。そして、もし俺の気持ちを受け入れてくれるなら、これを受け取ってもらいたいんだ」
「この宝石はダイヤモンド……!」
俺が手に持つのはダイヤモンドが象嵌された指輪だ。セリカが好むであろうデザインの指輪を妹のエレナと、アチコチの宝石店をはしごして探した。
ダイヤモンドは『永遠に変わらぬ愛』を象徴する宝石と言われている。
「こんな俺で良ければ、卒業後は俺と結婚して欲しい。俺はそれまで、誰にも負けない。どんな強敵からも、セリカを守ってみせる」
「ヴァイス君……は、はい、喜んで!」
セリカは感激に肩を震わせて、指輪を受け取った。
前世では、天涯孤独で家族も友達も恋人もいなかった俺は、この瞬間、人生を共に歩むパートナーを得たのだ。
大魔族を相手にするより、はるかに恐ろしい俺の最大の戦いは、大勝利に終わった。
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