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4章。傾国の大魔族ジゼルとの決戦
42話。王女との結婚を断ったら、なぜか逆に国王から気に入られ、王女からますます好かれる
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「まさか、我が妻イザベラが獅子身中の虫であったとは……ヴァイス・シルフィードよ。おぬしの働きはまさに値千金であったぞ!」
2日後──夕日が差し込む謁見の間に現れた国王ヴィルヘルム陛下が、よく通る声で告げた。
彼は国境を接する魔族の国と、常に先頭に立って戦争を繰り返す歴戦の猛者で、獅子王の異名を持つ。
もしヴィルヘルム陛下が倒れたら、ローランド王国は魔族の攻勢に飲まれて、地上から消えることになるだろう。
ゲームで良く知っていたが、リアルで会うと圧倒されるような覇者の貫禄があるな。
「お褒めに預かり、光栄でございます陛下」
俺は跪いたまま頭を垂れる。
この謁見の間は、ゲームの重大イベントで良く使われていたので、自分がこの場にやってこれるとは、感動ものだった。
だが、喜んでばかりはいられない。俺はこれから大きな賭けをするつもりなのだ。
「うむ、おぬしには褒美を取らせようと思う。我が娘、セリカとの結婚はもはや当然として。他に何か望みがあれば、なんなりと申してみよ。余が叶えられるモノであれば、なんなりと叶えてやろうぞ!」
ヴィルヘルムの陛下は豪快に笑った。
その破格の申し出に、居並ぶ重臣や大貴族たちから感嘆の呟きが漏れる。
「王女殿下との結婚は、もはや決定事項か……!」
「今後は、シルフィード伯爵家が大きな権勢を振るうことに」
国王陛下の背後に護衛として控えた父上が、自慢そうに胸を張った。
「それでは恐れながら……セリカ王女と結婚せよと命じられました件につきましては、謹んでお断りさせていただきたいと存じます」
俺は思い切って告げた。
「なに……?」
国王陛下は意外そうに目を瞬く。
「えっ、ヴァイス君、どうして!?」
俺の隣で、セリカが絶句していた。
それは居並ぶ貴族たちも同じだった。
「ヴァイスよ、何を申すのだ。控えよ!」
「良い、許す」
父上から叱責が飛ぶが、国王陛下はそれを手で制した。
「お、愚かな。これほどの名誉を……」
父上はさらに何か言いたそうだったが、引き下がった。
名誉を重んじる父上にとっては信じがたいことだろうが、俺もこればかりは譲れない。
魔族イザベラの事件が明るみに出た後、セリカは後宮ではなく、再び国王と同じ棟で暮らすことになったのだが……
国王陛下が、俺のことをいたく気に入って、トンデモナイことを言ってきたのだ。
『強き英雄の血を王家に取り込むことこそ、我が王国の繁栄に必要不可欠! セリカよ、ヴァイスを王配とし、今夜から世継ぎ作りに励むが良い。一刻も早く孫の顔を余に見せるのだぞ』
よ、世継ぎ作りって、それってつまり、早々に結婚して子供を持てということかぁ!? 俺たちはまだ学生だぞ。
しかも、セリカは完全に乗り気だった。
『やったぁああ! これで毎日、同じベッドで寝られるねヴァイス君!』
『それは結婚してからって、話だっただろ!?』
『大丈夫よ! お父様が今すぐ結婚しなさいって!』
『はぁあああっ!?』
王命を持ち出されては、王国貴族である俺は従わざるを得ない。
誰かに助けを乞おうにも、魔族イザベラの討伐によって、一夜にして俺とセリカの熱愛ぶりは王宮で有名になってしまい、反対意見を言う者はいなかった。
セリカ王女を救うために何度も命を賭けたヴァイスは見事だ。
さすがは【栄光なる騎士】アルバンの息子だと、王宮で評価がうなぎ登りになってしまっている。
あまりのことに俺は血の気が引くのを感じた。
……俺はセリカのことが好きだと思う。
だけど、いきなり結婚して、子作りしろというのは、あまりに性急過ぎだ。
なにより、そんな大切なことは他人から強要されて行うことじゃないと思う。
「まさか余の命令に逆らうとは、なんとも、剛毅な男よ! おぬしはセリカと添い遂げたいのではなかったのか? 娘より、そう聞いていたが?」
ヴィルヘルム陛下は愉快そうに笑った。
しかし、目は笑っていない。俺を値踏みするような鋭い眼光を向けてくる。
だが、ここで怯む訳にはいかない。
「はっ! 恐れながら、陛下のご命令によって、性急に結婚を強いられたとあっては、王女殿下があまりにも哀れではないでしょうか?」
「それが王家に生まれた娘の宿命よ。余が子宝に恵まれなかった以上、セリカに王族としての務めを果たしてもらわねばなるまい? 王族の少なさが、ローランド王国の弱点であるが故にな」
どうやら国王陛下は今回、大魔族ジゼルが唯一の王位継承者のセリカを狙ってきたことで、早急に王族を増やさねばならないと考えたらしい。
その考えは、無論、理解できるが……
「王女殿下が、フィアナ公爵令嬢に勝つ場面を見たくはありませんか?」
「なに?」
「陛下は、王女殿下に自らの運命を切り開く力があるかお試しになるために、グロリアス騎士学園への入学をご命令になったハズです。俺にお任せいただければ、セリカ王女を【栄光なる席次】2位にしてご覧に入れます。無論、1位は俺です」
「……なんと!?」
謁見の間のざわめきが大きくなった。
「ヴァイスさん、あなたは……!」
俺の後ろに控えていたフィアナが息を飲む。
「わたくしに勝つだけでなく、セリカさんをわたくしを超える戦士に育てるとおっしゃるの? いくら、あなたと言えど」
「その通りだ。俺ならできる」
時間をかけてセリカを育てれば、やってやれないことはない。
無理、できない。とか言われると、逆に燃えるのが、ゲーマー魂だ。負けイベントのボスを撃破したり、最弱キャラで最強キャラを打ち負かす快感は格別なのだ。
「不動のナンバー1と言われたフィアナ殿にそこまで言い切るとは……!」
貴族たちは、呆気に取られていた。
「陛下、セリカ王女はこれから、まだまだ成長する可能性を秘めています。俺にお任せいただければ、セリカ王女を貴族たちの誰もが尊敬せざるを得ない、ヴィルヘルム陛下のような強い女王に育て上げてご覧に入れます」
「なに……!?」
「その上で、もしお互いに結婚したいという気持ちがあれば、俺は卒業後に王女殿下に結婚を申し込みたいと思います。しかし、そこに陛下からの強要はあってはならないと存じます」
3年もあれば、俺の気持ちも固まるだろう。
結婚どころか、いきなり父親になれと言われても、困る。
「故に王女殿下との結婚は、固辞させていただきたく存じます! これが俺が陛下に望む褒美です!」
よし、言い切った。
セリカと国王陛下は気を悪くするだろうが、仕方がない。
だが、意外にも国王陛下は陽気に笑った。
「これはなんとも愉快な男よ! 確かに余は、セリカが強き女王となることを望んでおる。だが、もしこれからの3年間、おぬし意外の男が【栄光なる席次】1位の座に輝いたら、余はその者をセリカの婚約者と定めるが、それでも良いのか?」
「王女殿下は1位の生徒と、無理やり婚約させられることを厭っておられます。そのようなことが無いよう、俺は【栄光なる席次】1位となって、3年間その座を死守し続けるつもりです」
望まない婚約をさせられるのは、セリカがかわいそうだからな。
「クハハハハッ! そうか、そうか、あい、わかった! どうやら、おぬしは余の想像を超えた傑物であったようだな!」
国王陛下が、膝を叩いて王座から立ち上がった。
「それができるのであれば、余に異論は無い! 真の強者であるおぬしに率いられた王国の未来は、まさに安泰となろう。セリカよ、ヴァイスはこう申しておるがどうだ?」
俺の隣に控えていたセリカが、ここぞとばかりに声を張り上げた。
「はい、お父様! 私は自分の運命をこの手で切り拓ける力を手に入れたいと思っています。だから、今はヴァイス君からもっと教えをこうて、成長して。卒業後に胸を張って彼と結婚式を挙げたいと思います!」
「うむ。考えてみれば、同年代の貴族たちと競い合う10代の3年間は貴重なもの。セリカが良き女王となるには、必要不可欠であったな。余は、ちと性急に事を進め過ぎたようだ。ヴァイスには礼を述べねばならん!」
謁見の間に居並ぶ貴族たちから、おおっと、どよめきが広がった。
「3年後のヴァイスとセリカの結婚式、余が盛大に祝ってやろうぞ!」
その瞬間、貴族たちから割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。
「へ、陛下にここまで、気に入られるとは!」
「おおっ、やはりヴァイス殿こそ、次代の英雄! 王国を未来を担う人物だ!」
「ヴァイス殿、万歳!」
「ハハハハハッ! ヴァイスを王家に迎い入れ、余の息子と呼ぶことのできる日が楽しみだ!」
あ、あれ? 不興を買うことを覚悟していたのに、逆に国王陛下にえらく気に入られてしまったぞ?
「そうでありましょう! これがワシの自慢の息子、ヴァイスです!」
父上はすっかり得意満面になっていた。
2日後──夕日が差し込む謁見の間に現れた国王ヴィルヘルム陛下が、よく通る声で告げた。
彼は国境を接する魔族の国と、常に先頭に立って戦争を繰り返す歴戦の猛者で、獅子王の異名を持つ。
もしヴィルヘルム陛下が倒れたら、ローランド王国は魔族の攻勢に飲まれて、地上から消えることになるだろう。
ゲームで良く知っていたが、リアルで会うと圧倒されるような覇者の貫禄があるな。
「お褒めに預かり、光栄でございます陛下」
俺は跪いたまま頭を垂れる。
この謁見の間は、ゲームの重大イベントで良く使われていたので、自分がこの場にやってこれるとは、感動ものだった。
だが、喜んでばかりはいられない。俺はこれから大きな賭けをするつもりなのだ。
「うむ、おぬしには褒美を取らせようと思う。我が娘、セリカとの結婚はもはや当然として。他に何か望みがあれば、なんなりと申してみよ。余が叶えられるモノであれば、なんなりと叶えてやろうぞ!」
ヴィルヘルムの陛下は豪快に笑った。
その破格の申し出に、居並ぶ重臣や大貴族たちから感嘆の呟きが漏れる。
「王女殿下との結婚は、もはや決定事項か……!」
「今後は、シルフィード伯爵家が大きな権勢を振るうことに」
国王陛下の背後に護衛として控えた父上が、自慢そうに胸を張った。
「それでは恐れながら……セリカ王女と結婚せよと命じられました件につきましては、謹んでお断りさせていただきたいと存じます」
俺は思い切って告げた。
「なに……?」
国王陛下は意外そうに目を瞬く。
「えっ、ヴァイス君、どうして!?」
俺の隣で、セリカが絶句していた。
それは居並ぶ貴族たちも同じだった。
「ヴァイスよ、何を申すのだ。控えよ!」
「良い、許す」
父上から叱責が飛ぶが、国王陛下はそれを手で制した。
「お、愚かな。これほどの名誉を……」
父上はさらに何か言いたそうだったが、引き下がった。
名誉を重んじる父上にとっては信じがたいことだろうが、俺もこればかりは譲れない。
魔族イザベラの事件が明るみに出た後、セリカは後宮ではなく、再び国王と同じ棟で暮らすことになったのだが……
国王陛下が、俺のことをいたく気に入って、トンデモナイことを言ってきたのだ。
『強き英雄の血を王家に取り込むことこそ、我が王国の繁栄に必要不可欠! セリカよ、ヴァイスを王配とし、今夜から世継ぎ作りに励むが良い。一刻も早く孫の顔を余に見せるのだぞ』
よ、世継ぎ作りって、それってつまり、早々に結婚して子供を持てということかぁ!? 俺たちはまだ学生だぞ。
しかも、セリカは完全に乗り気だった。
『やったぁああ! これで毎日、同じベッドで寝られるねヴァイス君!』
『それは結婚してからって、話だっただろ!?』
『大丈夫よ! お父様が今すぐ結婚しなさいって!』
『はぁあああっ!?』
王命を持ち出されては、王国貴族である俺は従わざるを得ない。
誰かに助けを乞おうにも、魔族イザベラの討伐によって、一夜にして俺とセリカの熱愛ぶりは王宮で有名になってしまい、反対意見を言う者はいなかった。
セリカ王女を救うために何度も命を賭けたヴァイスは見事だ。
さすがは【栄光なる騎士】アルバンの息子だと、王宮で評価がうなぎ登りになってしまっている。
あまりのことに俺は血の気が引くのを感じた。
……俺はセリカのことが好きだと思う。
だけど、いきなり結婚して、子作りしろというのは、あまりに性急過ぎだ。
なにより、そんな大切なことは他人から強要されて行うことじゃないと思う。
「まさか余の命令に逆らうとは、なんとも、剛毅な男よ! おぬしはセリカと添い遂げたいのではなかったのか? 娘より、そう聞いていたが?」
ヴィルヘルム陛下は愉快そうに笑った。
しかし、目は笑っていない。俺を値踏みするような鋭い眼光を向けてくる。
だが、ここで怯む訳にはいかない。
「はっ! 恐れながら、陛下のご命令によって、性急に結婚を強いられたとあっては、王女殿下があまりにも哀れではないでしょうか?」
「それが王家に生まれた娘の宿命よ。余が子宝に恵まれなかった以上、セリカに王族としての務めを果たしてもらわねばなるまい? 王族の少なさが、ローランド王国の弱点であるが故にな」
どうやら国王陛下は今回、大魔族ジゼルが唯一の王位継承者のセリカを狙ってきたことで、早急に王族を増やさねばならないと考えたらしい。
その考えは、無論、理解できるが……
「王女殿下が、フィアナ公爵令嬢に勝つ場面を見たくはありませんか?」
「なに?」
「陛下は、王女殿下に自らの運命を切り開く力があるかお試しになるために、グロリアス騎士学園への入学をご命令になったハズです。俺にお任せいただければ、セリカ王女を【栄光なる席次】2位にしてご覧に入れます。無論、1位は俺です」
「……なんと!?」
謁見の間のざわめきが大きくなった。
「ヴァイスさん、あなたは……!」
俺の後ろに控えていたフィアナが息を飲む。
「わたくしに勝つだけでなく、セリカさんをわたくしを超える戦士に育てるとおっしゃるの? いくら、あなたと言えど」
「その通りだ。俺ならできる」
時間をかけてセリカを育てれば、やってやれないことはない。
無理、できない。とか言われると、逆に燃えるのが、ゲーマー魂だ。負けイベントのボスを撃破したり、最弱キャラで最強キャラを打ち負かす快感は格別なのだ。
「不動のナンバー1と言われたフィアナ殿にそこまで言い切るとは……!」
貴族たちは、呆気に取られていた。
「陛下、セリカ王女はこれから、まだまだ成長する可能性を秘めています。俺にお任せいただければ、セリカ王女を貴族たちの誰もが尊敬せざるを得ない、ヴィルヘルム陛下のような強い女王に育て上げてご覧に入れます」
「なに……!?」
「その上で、もしお互いに結婚したいという気持ちがあれば、俺は卒業後に王女殿下に結婚を申し込みたいと思います。しかし、そこに陛下からの強要はあってはならないと存じます」
3年もあれば、俺の気持ちも固まるだろう。
結婚どころか、いきなり父親になれと言われても、困る。
「故に王女殿下との結婚は、固辞させていただきたく存じます! これが俺が陛下に望む褒美です!」
よし、言い切った。
セリカと国王陛下は気を悪くするだろうが、仕方がない。
だが、意外にも国王陛下は陽気に笑った。
「これはなんとも愉快な男よ! 確かに余は、セリカが強き女王となることを望んでおる。だが、もしこれからの3年間、おぬし意外の男が【栄光なる席次】1位の座に輝いたら、余はその者をセリカの婚約者と定めるが、それでも良いのか?」
「王女殿下は1位の生徒と、無理やり婚約させられることを厭っておられます。そのようなことが無いよう、俺は【栄光なる席次】1位となって、3年間その座を死守し続けるつもりです」
望まない婚約をさせられるのは、セリカがかわいそうだからな。
「クハハハハッ! そうか、そうか、あい、わかった! どうやら、おぬしは余の想像を超えた傑物であったようだな!」
国王陛下が、膝を叩いて王座から立ち上がった。
「それができるのであれば、余に異論は無い! 真の強者であるおぬしに率いられた王国の未来は、まさに安泰となろう。セリカよ、ヴァイスはこう申しておるがどうだ?」
俺の隣に控えていたセリカが、ここぞとばかりに声を張り上げた。
「はい、お父様! 私は自分の運命をこの手で切り拓ける力を手に入れたいと思っています。だから、今はヴァイス君からもっと教えをこうて、成長して。卒業後に胸を張って彼と結婚式を挙げたいと思います!」
「うむ。考えてみれば、同年代の貴族たちと競い合う10代の3年間は貴重なもの。セリカが良き女王となるには、必要不可欠であったな。余は、ちと性急に事を進め過ぎたようだ。ヴァイスには礼を述べねばならん!」
謁見の間に居並ぶ貴族たちから、おおっと、どよめきが広がった。
「3年後のヴァイスとセリカの結婚式、余が盛大に祝ってやろうぞ!」
その瞬間、貴族たちから割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。
「へ、陛下にここまで、気に入られるとは!」
「おおっ、やはりヴァイス殿こそ、次代の英雄! 王国を未来を担う人物だ!」
「ヴァイス殿、万歳!」
「ハハハハハッ! ヴァイスを王家に迎い入れ、余の息子と呼ぶことのできる日が楽しみだ!」
あ、あれ? 不興を買うことを覚悟していたのに、逆に国王陛下にえらく気に入られてしまったぞ?
「そうでありましょう! これがワシの自慢の息子、ヴァイスです!」
父上はすっかり得意満面になっていた。
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