強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん

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3章。黒幕の王妃との対決

40話。おい、完成した俺専用の武器が強すぎるんだが……ッ!

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【ヴァイス視点】

 夜の帳が降りた頃──俺は後宮への隠し通路がある学園の地下倉庫にやって来ていた。

 この古びた倉庫の隅に、ただの壁としか思えない隠し扉がある。

 ゲームではキーアイテムが無いと、この扉は開かなかったのだけど……この世界はゲームじゃない。
 物理的に思い切りぶっ壊せば、中に入れるじゃないか? と俺は考えた。

 無論、そのためには規格外の破壊力が必要になる。
 なにしろ、有事の際に、王族が追手を防ぐための扉である訳だしな。その堅牢さは折り紙付きだ。

「……ギリギリ、開発が間に合った。ホントにフィアナには感謝しかないな」
 
 俺は【地竜王の宝珠】を素材にフィアナに造ってもらった装備、【地竜王の小盾】を構える。これこそが、俺のための専用武器だ。
 
 俺のステータスは、『防御』は捨て『速度』に極振りしている。

 攻撃力と回避率に特化した戦闘スタイルな訳だが、高レベル域の戦闘になると、一発でも攻撃を喰らえばアウトの紙装甲だ。
 
 この弱点を補うことができ、かつ【超重量】スキルを使用しても壊れない頑丈な武器が欲しかったんだ。

 その答えが、【地竜王の小盾】だ。
 コレの完成と到着を待っていたため、予定より遅くなってしまった。速攻で隠し通路を突破しなければならない。

 俺は倉庫の荷物を片付けて、助走できるスペースを作る。

「はぁああああッ!」

 隠し扉に向かって全力ダッシュし、【超重量】を使用した【地竜王の小盾】を叩きつけた。

 地震でも起きたように地下倉庫が激震し、分厚い隠し扉が木っ端微塵になる。

「思った通りだ! すげぇ破壊力!」

 ゲームでは盾は攻撃に使えなかったし、隠し扉を破壊することもできなかったが、現実となったこの世界では違う。

 物理法則が働いているのだから、こんなチートじみた裏技が可能になるんだ。

「……って、やっぱりゲームと同じように、ガーディアンがうろついているのか!」

 隠し通路に足を踏み入れた俺は、思わず呻いた。

 防衛のために配置されたガーディアンと呼ばれる人型ゴーレムが、俺を見咎めて襲い掛かってきたのだ。

 いちいち相手にしていたら、セリカの救出が間に合わない。

 本来、ここはゲーム後半になってから訪れるダンジョンであるためガーディアンのレベルは28と、かなり高い。

 その上、トラップの類も通路内にわんさか設置されており、ガーディアンはトラップに引っ掛からないため、ここでの戦闘は俺が圧倒的に不利だ。

「こういう時のための【マスターシーフ】だ」

 俺は新たに習得した【マスターシーフ】のコモンスキル【気配遮断】と【光学迷彩】を発動する。

 【気配遮断】は音や気配を完全に消すことができるスキルだ。

 【光学迷彩】は、カメレオンのように周囲の景色と自分の姿を同化させて、敵から発見されなくなるスキルだ。

 この2つのスキルを組み合わせれば、敵との戦闘を回避して進める。

「……敵、ロスト?」

 突進してきたガーディアンが、俺を見失って戸惑ったように動きを止めた。
 俺はその横を悠然と通り過ぎた。

 【気配遮断】と【光学迷彩】に【罠破り】を加えれば、どんなダンジョンでも簡単に踏破可能だった。

 もっとも便利だからといって、これらのスキルに頼り過ぎると、レベルが上げられず、ボス戦で詰むことになるんだけどな。

「……よし、ゲームと同じ道だな」

 隠し通路内は迷路になっていたが、ゲームをプレイしていたおかげで、迷わずに進めた。

 伊達に【グロリアスナイツ】を周回プレイしていない。

 俺は疾風のような勢いで、隠し通路を進んで行く。
 かなり良いペースだ。

「やばいっ。生で見ると大迫力だな、ロイヤルガーディアン」

 ゴール近くまでやってくると、狭い通路をひときわ巨大な人型ゴーレムがふさいでいた。その身は、分厚い装甲で覆われている。

 隠し通路への侵入者を迎撃するボスモンスター。天才と讃えられた錬金術師によって造られた自律型兵器だ。

 ロイヤルガーディアンのレベルは35と、今の俺より5つも上だ。

 しかもコイツには【気配遮断】と【光学迷彩】が通用しない。特殊な熱探知という方法で、敵の存在を感知して攻撃を仕掛けてくのだ。
 
 しかも……

「侵入者を確認、排除します」

 ロイヤルガーディアンが、突き出した腕より火炎を放射してきた。
 狭い通路内では回避できる場所が無く、後ろに下がるしかない。

「クソッ。やっぱり、コイツとこの場所の組み合わせは凶悪だな」

 俺は石礫を取り出して、風魔法で高速で撃ち出すも、超高熱の炎で焼き尽くされてしまう。
 間断なく火炎攻撃を放ってくるため、近づくこともままならない。突っ込んだ瞬間、消し炭だ。

 ロイヤルガーディアンを倒すには、炎対策を万全にするか。強力な魔法攻撃で、遠距離から押し切るしかない。

 今回、俺が取った対策は、そのどちらでも無かった。

「いっけぇえええ!」

 俺は【地竜王の小盾】をフリスビーの要領で投げ放つと同時にスキル【超重量】で、重量を1000倍にした。

 こんな使い方もできるように、【地竜王の小盾】は、円盤状のラウンドシールドにしてもらったのだ。

 ロイヤルガーディアンが火炎を発射するが、【地竜王の小盾】は燃えることなく、ヤツの身体に激突して、木っ端微塵に粉砕した。

『ロイヤルガーディアンを倒しました!
 レベルアップ!

 おめでとうございます!
 レベルが32に上がりました!』

 俺は【地竜王の小盾】を拾い上げて、確認する。

 この頼もしい新兵器は【超重量】をかけて、高速でブン投げるという乱暴な使い方をしても表面に傷一つ付いていなかった。
 竜鱗を使っているだけあって、すごい強度だな、コレ。

「フィアナには、今度、何かお礼をしなくちゃならないな」

 多少、手間取ってしまったので、俺は先を急ぐ。

 出口に近づくと、なんとセリカの悲鳴が聞こえてきた。

「エレナ、後ろぉおおおッ!」

 見上げれば、グリフォンが古井戸の出口を塞いでいる。
 俺は飛び上がって、【地竜王の小盾】でグリフォンをぶん殴った。

 【超重量】のかかった一撃をもろに喰らったグリフォンは、ただの肉塊と化す。

「ふたりとも無事か!? あとは俺に任せろ!」
「ヴァイス兄様!?」

 エレナが驚いて、俺を見つめる。
 彼女の背中を引き裂こうと、グリフォンが急降下してきていた。
 セリカが魔法障壁を展開するが、致命傷を受けかねない攻撃だ。

「【超重力】、発動!」

 俺は自分の身に、すべてを引き寄せる超重力フィールドを発生させた。
 グリフォンは攻撃の寸前で、俺に向かって吸い込まれてくる。

「きゃあ!?」
「ちょ!?」
 
 エレナとセリカも吸い込まれてきた。
 俺はエレナを抱き止めると同時に、グリフォンを【地竜王の小盾】でぶん殴って、一撃粉砕した。

「ふぅうううッ……! 危なかった。悪い、ふたりとも、隠し通路のクリアに手間取ってしまって」
「いえ、ヴァイス兄様、九死に一生を得ました。感謝いたします!」
「ほ、ホント! ヴァイス君が来てくれなかったら、危なかったわ! ありがとう!」

 俺たちは抱き合って、お互いの無事を喜んだ。

「エレナ、良くセリカを守ってくれた。偉かったぞ!」
「はい!」

 俺が褒めるとエレナは心底うれしそうに微笑んだ。

「聞いて、ヴァイス君。イザベラ王妃はやっぱり魔族と通じている異端者だったわ! 証拠もほら、バッチリよ!」
「貴様は……ヴァイス・シルフィード、どうやってここに!?」

 グリフォンに乗った王妃が、中庭に降り立った。その顔は驚愕に引き攣っていた。
 人間に懐かない魔獣に騎乗していたりしたら、もはや言い逃れは、できないな。

「俺だけじゃありません。すでに父上率いるシルフィード騎士団が後宮を包囲しているハズです。ブレイズ公爵家の部隊も突入してきます。あなたに逃げ場はありません。ここで終わりですよ、王妃様」
「お、おのれ、お前が、すべて仕組んでいたというのか!? たかが伯爵令息ごときが、王妃である私を討つというのかぁあああッ!?」

 王妃は髪を振り乱して喚いた。

「当然! あなたも言っていたじゃないイザベラ王妃、ヴァイス君こそ王国の英雄だって! 彼はね、魔族ガロンに地竜王、自分よりはるかに強大な敵に立ち向かって勝利してきたのよ。あなたなんかとは格が違うわ!」

 セリカが大声を叩きつけた。
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