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2章。学園のナンバー1を目指す

26話。兄妹そろって強くなる

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「エレナ、セリカの安全は確保してきた。もう大丈夫だぞ!」
「は、はい!」

 一人で心細かったであろうエレナは、喜びに打ち震えた。

 だが、まだ油断はできない。
 地竜という大物を仕留めたが、ここはプレイヤーに絶望を味合わせるべく設計された危険階層だ。敵はそれだけじゃなかった。

 エレナの周りに、剣と盾を装備した二足歩行の魔物、蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》が群がってきていた。奴らの推定レベルは24前後。
 武器を失い、満身創痍のエレナにこの包囲を突破するすべはない。まずは……

「受け取れ!」

 俺は手持ちの【回復薬《ポーション》】をすべて投げ放ち、風魔法による気流操作でエレナの手元に送った。

「えっ、まさか【回復薬《ポーション》】をすべて私に……!?」
「地底トカゲども、俺が相手だぁあああッ!」

 唖然とするエレナを無視して叫ぶ。
 派手に存在をアピールしたおかげで、蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》の何体かが、足を止めて俺を見上げた。 

 俺は浮遊魔法を自分にかけて落下スピードを殺す。

 さあ、やるぞ。
 ポケットに詰めておいた小石を取り出し、これらの重量を上げると同時に風魔法で次々に撃ち出した。

 ガガガガガッ!
 
 機銃掃射のごとき威力の石礫が、蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》どもに降り注ぐ。
 奴らは身体に穴を開けられて、次々に地面に倒れ伏す。

「ヴァイス兄様! そんな無茶なスキルの使い方をされては!?」

 【超重量】を駆使する俺のHP生命力は、エレナの警告通り、ものすごい勢いで目減りしていった。

 これで【回復薬《ポーション》】を手放すなど、自殺行為にしか見えないだろう。

「心配ない。計算ならギリギリいける! 19レベルに届きさえすれば……!」

 セリカの【超回復《オーバー・ヒール》】のおかげで、この作戦に踏み切ることができた。心の中で感謝を捧げる。

『蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》を倒しました!
 蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》を倒しました!
 
 レベルアップ!
 レベルアップ!
 レベルアップ!

 おめでとうございます、レベルが19に上がりました!』

 レベルアップを告げるシステムボイスが鳴り響く。

 蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》の群れを射撃威力が上昇する安全な高所から狙えるのは、ある意味、レベルアップの大チャンスと言えた。

 そしてレベル19になれば、スキルポイントが貯まり【マスターシーフ】の常時発動スキル【HPスナッチ】が習得可能になる。

 これは与えたダメージの5%のHPを相手から奪って、自身のHPを回復できるという超便利スキルだ。

「よし狙い通りだぁ!」

 【HPスナッチ】を習得した俺は、快哉を上げる。
 【超重量】のかかった石礫は、一撃で1000ポイント以上の即死級ダメージを敵に与えた。

 この5%は約50ポイントだ。これは【超重量】を使用することによって消費した俺のHPを回復して余りあった。

 【HPスナッチ】を発動させれば、【超重量】の弱点を完全ではないが、カバーできるんだ。

==================

ヴァイス・シルフィード
レベル19(UP!)
クラス:マスターシーフ

筋力:3→4(UP!)
速度:35→62(UP!)
防御:2
魔力:17
幸運:4

ユニークスキル
【超重量】レベル3

コモンスキル
【HPスナッチ】(NEW!)
【罠破り】(NEW!)
【ステータス隠蔽】

==================

「うぉおおおおおおッ!」

 俺は猛然と射撃を浴びせる。
 蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》は盾で必死にガードするが、俺の弾丸は、その防御ごと奴らの身体を貫通、粉砕した。

「そんな! セリカ様の回復を受けていないのに、なぜ大丈夫なのですか!?」

 俺の非常識な戦法に、エレナは愕然とする。

 俺はエレナの近くに着地すると、【不可視の剣】インビジブル・ソードを地面から引き抜いた。

 血で濡れた不可視の剣は、その刀身が顕になっている。さすがボス専用武器と言うべきか、鋼鉄よりもはるかに硬い地竜の鱗を貫いたのに、歪んでさえいなかった。

「エレナ、ギルベルトが創ってくれた【不可視の剣】インビジブル・ソードだ。コイツを使え!」

 エレナに【不可視の剣】《インビジブル・ソード》を手渡す。剣の重量は、エレナが使いやすいように元の重さに戻した。

「ギルベルト先輩が!?」
「あいつはジゼルに洗脳されてたんだけど、セリカのおかげで正気に戻ったんだ」
「ええっ!?」

 エレナは驚きっぱなしだったが、すぐに状況に対応してくれた。

 得意の風魔法で、エレナは【不可視の剣】インビジブル・ソードに付着した血を吹き飛した。

 それによって、は【不可視の剣】インビジブル・ソードは文字通りの見えない魔剣と化す。

「……不可視の剣。本来は暗殺用みたいですが、これは剣の勝負を圧倒的に有利にできる武器ですね」

 蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》が、俺たちに襲いかかってくるが、エレナは歯牙にもかけずに斬り捨てた。

 エレナを獲物だと思って舐めていた蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》たちが、目に見えてうろたえる。

「しかも、強度、斬れ味ともに最高級品です。ギルベルト先輩に感謝しなくては……!」

 蜥蜴人戦士《リザードマン・ウォリアー》は、本領を発揮したエレナに、次々に両断されていった。

 我が妹ながら、さすがだな。
 剣さえマトモなら、エレナは一人で地竜を倒していただろう。

「やっぱり。【不可視の剣】インビジブル・ソードは、俺じゃなくて、エレナが使った方が性能を発揮できると思ったんだ」

 5年も剣の修行をサボってきた俺にとって、これは宝の持ち腐れにしかならない。

 剣の勝負では、攻撃の届く距離──すなわち間合いの読み合いが重要になる。
 見えない魔剣は、攻撃範囲を秘匿できるため、圧倒的に優位に立てるんだ。

 ゲームでは、エレナに装備させてやれなかった最強武器を使わせてやれるなんて、ワクワクするな。
 これで、エレナの戦力も大幅にアップだな。

「ありがとうございます、ヴァイス兄様!」
「じゃあ、すぐに脱出するぞ」
「はい! で、ですが、私はさんざんこの階層を探し回ったのですが……上に登る階段が見つけられませんでした」

 エレナの瞳に絶望の色がよぎった。

「ああっ、それなら、大丈夫だ。この階層の構造なら知り尽くしているから」
「えっ? えっええええっ!?」 

 俺の言葉に、エレナは心底驚いた様子だった。

「石橋破壊にも驚きましたが、なぜ兄様はそんなスゴイ情報や知識を持っておられるのですか!?」
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