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2章。学園のナンバー1を目指す
10話。王女からキスをせがまれる
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「ど、どういうことでしょうか、王女殿下!? ヴァイスと恋人ですと!?」
父上が驚愕して、詰め寄ってきた。
俺はセリカに抱き着かれて、頭が真っ白になってしまっている。
……な、なに、これ? どういう状況?
なぜ、俺がセリカの恋人になっているんだ?
「セリカ様、私も訳がわかりません! 一体どういうことですか!?」
さらに、妹のエレナが部屋に飛び込んできて、セリカに問い質す。
「……って、何をそんなに怒っているのエレナ!?」
「な、何をって……私のヴァイス兄様は、今はまだ学年、最下位です。その兄様と突然、恋人なんて。い、いくらなんでも横紙破りが過ぎます!」
エレナはものすごい剣幕だった。
「そもそもセリカ様に『学園1位の生徒と婚約せよ』とおっしゃっていた国王陛下が、ろくに審議もせずにお許しになるなど……!」
「お父様には、ヴァイス君は真の英雄となれる人だって、頼んで許してもらったの!『セリカの護衛を強化する必要もあるし良いだろう』が、お父様の答えよ」
「真の英雄!? な、なぜ、ヴァイス兄様への評価がそんな180°変わっているんですかぁああッ!?」
「ええ!? そ、そんなの当然でしょ? ヴァイス君は私の命の恩人なんだし!」
うぉ。面と向かって、セリカからベタ褒めされると、かなり照れくさいな。
しかし、従者にして欲しいとお願いしたのに、恋人というのは飛躍し過ぎて、正直訳がわからない。
すると、セリカは俺の耳元で小さく囁く。
「王妃様のことは、エレナにも誰にも話していないわ。ちょっと恥ずかしいけど、私たちがラブラブの恋人同士というのを周囲に見せて、広めていきましょ」
「あっ、なるほど。そういうことか」
ビックリしたが、恋人を演じていきたいということだな。
それなら、いつも一緒にいても不自然じゃない。
従者という立場に加えて、国王陛下公認の恋人となれば、セリカを王妃やジゼルの手下から守りやすくなる。
夜会などのエスコートが必要な場所で、パートナーとして、常に近くにいられるのは大きい。
一瞬、セリカが俺のことを本気で好きなのかと思ってしまったけど、そんな夢みたいな話がある訳がない。
……セリカの言う通り、今まだエレナには王妃のことは話さない方が良いだろう。
下手に父上の耳に入って、俺たちが証拠も無く王妃を魔族の手先だと疑っているなどという話が公になれば、俺は王家への不敬罪で処刑されかねない。
秘密を共有するのは、俺とセリカの2人だけにしておいた方が安全だ。
「いや、命の恩人って……俺が、自分のためにやったことだし」
「きゃぁあああッ! そんなにも私が好きってことね。もう大好きよ!」
「はぅ!?」
さらにキツくセリカから抱き締められて、俺の頭は茹でダコ状態になってしまう。
周囲への熱愛アピールにしても、これはやり過ぎなような気が。
案の定、エレナと父上は目を丸くしていた。
「ぐぅっ!? セ、セリカ様のお気持ちは、わかりましたが、いきなり恋人というのは、いろいろ段階を飛ばし過ぎだと思います!」
エレナはますますヒートアップした。
「そもそもヴァイス兄様のお気持ちは確認されたのですか!?」
「もちろん!」
セリカは自慢そうに胸を張る。
えっ……?
「だって、私はヴァイス君から、熱烈プロポーズされたんだもの!」
「「「はぁあああああッ!?」」」
俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
父上たちも唖然としている。
そんなこと言ったか? と問い質したかったが。ラブラブの恋人同士という設定を周囲に広めていくのだと、思い留まった。
「そ、そうなんだ。俺はセリカを愛していて、プロポーズをした!」
嘘をつくにのは、いささか抵抗があったが、俺は思い切って宣言した。
これもセリカを守るため、俺の破滅を回避するためだ。
「そうよ! セリカ王女のことは、何があっても俺が守り抜くと誓う! って、言ってくれたんだものね! それに私と婚約するために【栄光なる席次】ナンバー1にも、なってみせるって!」
あ、あれ。確かにその台詞を抜き出すと、プロポーズに聞こえるな。
ナンバー1を目指すのは、騎士学園の生徒なら当たり前だと思って、深く考えなかった。
って、もしかして、セリカは俺から本気でプロポーズされたと勘違いしているのか?
それで、俺との仲を国王陛下に許してもらって、ラブラブぶりを周囲に広めたいって?
あまりの急展開に、俺は激しく混乱した。
「い、いつの間に、そんなことに……!? それが兄様のご本心!?」
エレナはかなりの衝撃を受けた様子だった。それから不安そうに告げる。
「しかし、【栄光なる決闘】での勝利も経ずに、セリカ様の恋人になったりしたら……学園中の男子生徒が、おそらくヴァイス兄様の敵に回りますよ。特に学園のナンバー2、レオナルド・リーベルト先輩が黙っていないかと」
それは確かにそうだな。
もしかすると、国王陛下はこれを狙って、俺とセリカの交際を許可したのかも知れない。王女争奪戦の激化は、陛下の望むところだ。
だが、家族の前でセリカを愛していると宣言してしまった上に、セリカがここまで乗り気なら、恋人をやめますとは言えない。
そんなことをしたら、この場の全員から総スカンだ。俺の破滅は不可避になる。
「と、ところでヴァイス君。私としてみたいことってあるかな?」
「えっ、してみたいこと? ……ダンジョンでレベルアップかな」
俺は反射的に応えた。それがまずは何よりも最優先だ。
できれば俺だけじゃなくて、セリカとエレナも鍛えて戦力をアップさせなくては。
「もう、そういうことじゃないわ!」
セリカは突然、むくれだした。
「わ、私とキスしてみない? キスくらいなら全然OKというか……」
「はぁあああッ!?」
セリカが熱っぽい視線を向けてきて、俺は激しく狼狽した。
セリカのことは好きだけど、それは愛と呼べるような感情ではない。ラブでなくライクであり、憧れのようなものだ。
そんな気持ちのままキスするなんて、セリカに悪いというか、童貞にはハードルが高過ぎるというか……とにかく、有り得ないぞ。
「な、なん……だと?」
「に、兄様……!」
父上とエレナは完全に硬直してしまった。
父上が驚愕して、詰め寄ってきた。
俺はセリカに抱き着かれて、頭が真っ白になってしまっている。
……な、なに、これ? どういう状況?
なぜ、俺がセリカの恋人になっているんだ?
「セリカ様、私も訳がわかりません! 一体どういうことですか!?」
さらに、妹のエレナが部屋に飛び込んできて、セリカに問い質す。
「……って、何をそんなに怒っているのエレナ!?」
「な、何をって……私のヴァイス兄様は、今はまだ学年、最下位です。その兄様と突然、恋人なんて。い、いくらなんでも横紙破りが過ぎます!」
エレナはものすごい剣幕だった。
「そもそもセリカ様に『学園1位の生徒と婚約せよ』とおっしゃっていた国王陛下が、ろくに審議もせずにお許しになるなど……!」
「お父様には、ヴァイス君は真の英雄となれる人だって、頼んで許してもらったの!『セリカの護衛を強化する必要もあるし良いだろう』が、お父様の答えよ」
「真の英雄!? な、なぜ、ヴァイス兄様への評価がそんな180°変わっているんですかぁああッ!?」
「ええ!? そ、そんなの当然でしょ? ヴァイス君は私の命の恩人なんだし!」
うぉ。面と向かって、セリカからベタ褒めされると、かなり照れくさいな。
しかし、従者にして欲しいとお願いしたのに、恋人というのは飛躍し過ぎて、正直訳がわからない。
すると、セリカは俺の耳元で小さく囁く。
「王妃様のことは、エレナにも誰にも話していないわ。ちょっと恥ずかしいけど、私たちがラブラブの恋人同士というのを周囲に見せて、広めていきましょ」
「あっ、なるほど。そういうことか」
ビックリしたが、恋人を演じていきたいということだな。
それなら、いつも一緒にいても不自然じゃない。
従者という立場に加えて、国王陛下公認の恋人となれば、セリカを王妃やジゼルの手下から守りやすくなる。
夜会などのエスコートが必要な場所で、パートナーとして、常に近くにいられるのは大きい。
一瞬、セリカが俺のことを本気で好きなのかと思ってしまったけど、そんな夢みたいな話がある訳がない。
……セリカの言う通り、今まだエレナには王妃のことは話さない方が良いだろう。
下手に父上の耳に入って、俺たちが証拠も無く王妃を魔族の手先だと疑っているなどという話が公になれば、俺は王家への不敬罪で処刑されかねない。
秘密を共有するのは、俺とセリカの2人だけにしておいた方が安全だ。
「いや、命の恩人って……俺が、自分のためにやったことだし」
「きゃぁあああッ! そんなにも私が好きってことね。もう大好きよ!」
「はぅ!?」
さらにキツくセリカから抱き締められて、俺の頭は茹でダコ状態になってしまう。
周囲への熱愛アピールにしても、これはやり過ぎなような気が。
案の定、エレナと父上は目を丸くしていた。
「ぐぅっ!? セ、セリカ様のお気持ちは、わかりましたが、いきなり恋人というのは、いろいろ段階を飛ばし過ぎだと思います!」
エレナはますますヒートアップした。
「そもそもヴァイス兄様のお気持ちは確認されたのですか!?」
「もちろん!」
セリカは自慢そうに胸を張る。
えっ……?
「だって、私はヴァイス君から、熱烈プロポーズされたんだもの!」
「「「はぁあああああッ!?」」」
俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。
父上たちも唖然としている。
そんなこと言ったか? と問い質したかったが。ラブラブの恋人同士という設定を周囲に広めていくのだと、思い留まった。
「そ、そうなんだ。俺はセリカを愛していて、プロポーズをした!」
嘘をつくにのは、いささか抵抗があったが、俺は思い切って宣言した。
これもセリカを守るため、俺の破滅を回避するためだ。
「そうよ! セリカ王女のことは、何があっても俺が守り抜くと誓う! って、言ってくれたんだものね! それに私と婚約するために【栄光なる席次】ナンバー1にも、なってみせるって!」
あ、あれ。確かにその台詞を抜き出すと、プロポーズに聞こえるな。
ナンバー1を目指すのは、騎士学園の生徒なら当たり前だと思って、深く考えなかった。
って、もしかして、セリカは俺から本気でプロポーズされたと勘違いしているのか?
それで、俺との仲を国王陛下に許してもらって、ラブラブぶりを周囲に広めたいって?
あまりの急展開に、俺は激しく混乱した。
「い、いつの間に、そんなことに……!? それが兄様のご本心!?」
エレナはかなりの衝撃を受けた様子だった。それから不安そうに告げる。
「しかし、【栄光なる決闘】での勝利も経ずに、セリカ様の恋人になったりしたら……学園中の男子生徒が、おそらくヴァイス兄様の敵に回りますよ。特に学園のナンバー2、レオナルド・リーベルト先輩が黙っていないかと」
それは確かにそうだな。
もしかすると、国王陛下はこれを狙って、俺とセリカの交際を許可したのかも知れない。王女争奪戦の激化は、陛下の望むところだ。
だが、家族の前でセリカを愛していると宣言してしまった上に、セリカがここまで乗り気なら、恋人をやめますとは言えない。
そんなことをしたら、この場の全員から総スカンだ。俺の破滅は不可避になる。
「と、ところでヴァイス君。私としてみたいことってあるかな?」
「えっ、してみたいこと? ……ダンジョンでレベルアップかな」
俺は反射的に応えた。それがまずは何よりも最優先だ。
できれば俺だけじゃなくて、セリカとエレナも鍛えて戦力をアップさせなくては。
「もう、そういうことじゃないわ!」
セリカは突然、むくれだした。
「わ、私とキスしてみない? キスくらいなら全然OKというか……」
「はぁあああッ!?」
セリカが熱っぽい視線を向けてきて、俺は激しく狼狽した。
セリカのことは好きだけど、それは愛と呼べるような感情ではない。ラブでなくライクであり、憧れのようなものだ。
そんな気持ちのままキスするなんて、セリカに悪いというか、童貞にはハードルが高過ぎるというか……とにかく、有り得ないぞ。
「な、なん……だと?」
「に、兄様……!」
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