上 下
46 / 53
3章。国王との決戦

46話。王座の間へ

しおりを挟む
 王城の小部屋に出ると、神話を描いた見事な壁画があった。
 女神ネーノイスがエルフ王に王笏を授けているシーンを描いたものだ。

「誰の許しを得てここに立ち入ったか、下等種族……!」

 部屋に置かれていた二体の戦士像が声を発して動き出した。その手には大剣が握られている。
 初めて見るが、魔法によって動くゴーレム兵というヤツだろう。
 
「このお方に剣を向けることは許さん!」

 エリザが突進して、あっという間に、ゴーレム兵を両断した。彼らは物言わぬ石像となって床に散らばる。

「どうやら、エルフの侵入者迎撃システムをそのまま使っているようですね。ルカ様に対して無礼せんばんです!」

 エリザが腹立たしそうに剣を納めた。

「下等種族って……エルフは女神に創造された種族、人間の仲間だと思っていたんだけど」

 ゴーレム兵にこんな選民思想に凝り固まったセリフをインプットしていたとは、軽くショックだ。

「エルフは純血に近いほど強力な魔力を持ちます。魔族に対抗するため、エルフの王族はその純血を維持する義務があったのですが……そのために純血のエルフほど他種族と交わるのを嫌い、人間やドワーフを見下すようになってしまったのです」

 エリザが苦虫を噛み潰したような口調で告げる。

「アナスタシア姫は、私のようなハーフエルフにも分け隔てなく接して下さいました。あのお方こそ、王の器。あのお方に私は恩を返したいのです」

 エリザがアナスタシア姫に向ける好意には、並ならぬ物があるように感じた。

「もちろん。アナスタシア姫は必ず助け出す!」

「はっ! 露払いはお任せください! いかなる罠や敵が襲って来ようとも、私がすべて切り伏せてご覧にいれます。ルカ様はどうか力を温存ください!」

 エリザが力強く胸を叩く。

「それはありがたいんだけど……」

 この先、どれだけの罠や敵が待ち構えているかわからない。エリザだけにそのすべての対処を任せるのは酷だろう。

「そうだっ!」

 ボクは聖剣の【スキル共有】で、ミリアのスキル【鑑定】を呼び出す。

『お呼びでしょうか、ルカお姉様! 私のスキルがお役に立つ時が来たんですね!』

 ミリアの歓喜の声が頭に響いた。
 【鑑定】は手に触れた物の価値を見抜き、情報を読み取るスキルだ。
 
「うん、ミリア。王城の罠やゴーレム兵の配置なんかがわかると助かるんだけど【鑑定】で、できるかな?」

『もちろんです! 半径30メートル圏内の罠や迎撃システムの情報なら、読み取れるハズですよ。ときどき壁や床に手を触れてお進みください!』

 思った通りミリアの【鑑定】は応用範囲がとてつもなく広いスキルだ。

「ありがたい! そっちの状況はどう?」

『天魔騎士団が、猛攻撃を仕掛けて来てますけど、イルティアお姉様が奮戦してくれています。聖騎士団と一丸となって戦っているので、しばらくは持つハズです』

 まずは一安心。
 だが、天魔騎士団は不死身の軍団だ。
 長期戦になれば、いかに彼女たちが協力し合おうとも勝ち目はないだろう。

 一刻も早く国王を倒さねばならない。

『私たちはみんなルカお姉様の勝利を信じています! どうかご無事で!』

 ミリアの声援を背に、ボクたちは再び駆け出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……

石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。 主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。 その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。 聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。 話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。 聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。 聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。 しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。 そのステータスに絶望したが……実は。 おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。 いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません…… からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。 カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。

無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです

青空あかな
ファンタジー
テイマーのアイトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。 その理由は、スライム一匹テイムできないから。 しかしリーダーたちはアイトをボコボコにした後、雇った本当の理由を告げた。 それは、単なるストレス解消のため。 置き去りにされたアイトは襲いくるモンスターを倒そうと、拾った石に渾身の魔力を込めた。 そのとき、アイトの真の力が明らかとなる。 アイトのテイム対象は、【無生物】だった。 さらに、アイトがテイムした物は女の子になることも判明する。 小石は石でできた美少女。 Sランクダンジョンはヤンデレ黒髪美少女。 伝説の聖剣はクーデレ銀髪長身美人。 アイトの周りには最強の美女たちが集まり、愛され幸せ生活が始まってしまう。 やがてアイトは、ギルドの危機を救ったり、捕らわれの冒険者たちを助けたりと、救世主や英雄と呼ばれるまでになる。 これは無能テイマーだったアイトが真の力に目覚め、最強の冒険者へと成り上がる物語である。 ※HOTランキング6位

処理中です...