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2章。500人の美少女から溺愛される
38話。剣聖の奥義継承
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「は、破神流……!?」
その名を聞いたエリザは、全身をわなわなと震わせた。
「まさか。そんな……!? ルカ様! この流派を学んだことを、誰かに教えていませんか!?」
「えっ!? 流派も師匠の名前も知らなかったから、伝えようがないけど? あっ、師匠は母さんの兄さんだったみたいだから、ボクの両親は知っていたようだけど……?」
エリザの尋常でない態度の理由が分からず、ボクは首をひねる。
「こ、この辺境に、あのお方の一族が!?」
「あのお方?」
「ルカ様! このことは、破神流の名は絶対に口外しないでください! よろしいですね!?」
エリザに思いきり肩を掴まれる。
な、なにをそんなに必死になっているんだ?
もしかして、ボクの師匠は何かヤバい奴だったとか……
「わ、わかったけど……これから師匠が残していってくれた奥義書を見るんだ。もし興味があるならエリザも一緒に見る?」
たぶん、エリザほどの剣士が参考になるようなことは書かれていないと思うけど。
「破神流の奥義書を!? こ、こ、光栄です! ぜひ、ぜひお願いします!」
エリザは興奮のあまり噛んでいた。整った顔が真っ赤になっている。
彼女ほどの強者となると、他流の奥義も貪欲に学ぼうとするのかな?
それとも破神流とは、それなりに有名な流派なのかも知れない。ボクは田舎者だからか、聞いたことがないけど……
ボクが鞄から奥義書を取り出すと、エリザがごくりと喉を鳴らした。
最初のページをめくると、白紙で何も書かれていなかった。
「……うん?」
肩透かしを受けて、続けて次のページをめくろうとする。
すると、本よりまばゆい光があふれ出た。
光の中から、上背の高い男の姿が浮かび上がる。
「よう、ルカ。久しぶりだな」
「師匠!?」
その声、その姿。間違えようがなかった。
ボクが毎日の修行の中で思い描いてきた師匠その人だった。
「ルカ様、いかがされましたか? 早く次のページを……?」
エリザが背後から、いぶかしげな声をかけてくる。
「この奥義書は知り合いの魔導士に作ってもらった魔法の書物だ。中身は白紙で、俺が認めた奴にしか、この声も映像も見えねえ。あんまり俺の技を広めたくはないんでな」
「エリザ、どうもこれはボクにしか内容が伝わらない魔法がかかっているようだよ」
「なんとっ!?」
背後から奥義書をのぞき込んでいたエリザは、心底がっかりした顔をする。
「まず、最初に言っておくが、俺はヤバい奴に喧嘩を売っちまって、ヤバい奴らから追われる身になっている。俺の弟子や血縁者だと知られたら、そいつらが、お前のことも狙って来るかも知れねえ。
破神流は俺が独自に編み出した剣術。これを学んだこと。俺の血縁者であることは決して知られるな。奥義も極力、他人に見せるな。もし安全に暮らしたいなら、ここで奥義書を閉じて燃やすこった」
そう言えば師匠は酒に酔った勢いで、「俺は剣聖だ!」とか言っていたっけ……
剣聖とは剣を極めた者に贈られる称号で、おいそれと名乗って良いものではない。
それをハッタリで軽々しく口にしていた結果、何かとんでもない問題を起こして逃げ回っているじゃないかな?
あ、有り得る……
「そうか。俺の奥義を受け継ぐことを選ぶか。この奥義書は、妹にルカが剣の道を極めるつもりなら渡すように言ってあった。
危険な辺境で冒険者として生きるための力を授けられればと思っていたんだが。それ以上を求めるとは……血は争えんな。
さすがは、俺の息子」
「……息子?」
「お前はバルリング夫妻の子供ではなく、この俺ヴァラドの息子だ。俺は血なまぐさい世界を生きる身。愛した女も不幸にしちまって、とてもお前を育てるどころじゃなかった。だから、妹夫妻に預けた」
師匠がボクの本当の父さん?
だから、父さんと母さんはこの奥義書を渡す時に、なにか思い詰めた顔をしていたのか。
おそらく父さんたちは、師匠が奥義を伝えるのと同時に、ボクの本当の親だと伝えることも知っていたんだ。
でも、それで父さんと母さんとの関係が何か変わるわけでもない。コレットも養子だし、血の繋がりだけが家族の証明ではないことは、ふたりとも分かっている筈だ。
それでも、多分、不安だったんだな。
「お前には剣術とは『先の読み合いに終始する』と教えてあったが。来ることがわかっていても決して防げない攻撃というのがある。それがこれから伝える奥義だ」
師匠は剣を鞘に収めたまま腰を落とした。
師匠は、倭刀という東方の国の刀身が反った剣を愛用していた。
「居合い。鞘を使って、力を一方向に収斂して放つ超神速の一撃だ。まあ、鞘の代わりに地面なんかを利用したやり方もある。い
かなる状況でも使えるようになって、一人前だな」
師匠の身体から、底冷えするような鬼気が立ち上る。これ程わかりやすい殺気を放っては、斬撃の軌道は丸わかりだ。
防御不能技とはいかなるモノなのだろうか。
「我が奥義、しかと胸に刻め。……【天破雷神閃】!」
天を割く雷光のような剣閃が走った。
その名を聞いたエリザは、全身をわなわなと震わせた。
「まさか。そんな……!? ルカ様! この流派を学んだことを、誰かに教えていませんか!?」
「えっ!? 流派も師匠の名前も知らなかったから、伝えようがないけど? あっ、師匠は母さんの兄さんだったみたいだから、ボクの両親は知っていたようだけど……?」
エリザの尋常でない態度の理由が分からず、ボクは首をひねる。
「こ、この辺境に、あのお方の一族が!?」
「あのお方?」
「ルカ様! このことは、破神流の名は絶対に口外しないでください! よろしいですね!?」
エリザに思いきり肩を掴まれる。
な、なにをそんなに必死になっているんだ?
もしかして、ボクの師匠は何かヤバい奴だったとか……
「わ、わかったけど……これから師匠が残していってくれた奥義書を見るんだ。もし興味があるならエリザも一緒に見る?」
たぶん、エリザほどの剣士が参考になるようなことは書かれていないと思うけど。
「破神流の奥義書を!? こ、こ、光栄です! ぜひ、ぜひお願いします!」
エリザは興奮のあまり噛んでいた。整った顔が真っ赤になっている。
彼女ほどの強者となると、他流の奥義も貪欲に学ぼうとするのかな?
それとも破神流とは、それなりに有名な流派なのかも知れない。ボクは田舎者だからか、聞いたことがないけど……
ボクが鞄から奥義書を取り出すと、エリザがごくりと喉を鳴らした。
最初のページをめくると、白紙で何も書かれていなかった。
「……うん?」
肩透かしを受けて、続けて次のページをめくろうとする。
すると、本よりまばゆい光があふれ出た。
光の中から、上背の高い男の姿が浮かび上がる。
「よう、ルカ。久しぶりだな」
「師匠!?」
その声、その姿。間違えようがなかった。
ボクが毎日の修行の中で思い描いてきた師匠その人だった。
「ルカ様、いかがされましたか? 早く次のページを……?」
エリザが背後から、いぶかしげな声をかけてくる。
「この奥義書は知り合いの魔導士に作ってもらった魔法の書物だ。中身は白紙で、俺が認めた奴にしか、この声も映像も見えねえ。あんまり俺の技を広めたくはないんでな」
「エリザ、どうもこれはボクにしか内容が伝わらない魔法がかかっているようだよ」
「なんとっ!?」
背後から奥義書をのぞき込んでいたエリザは、心底がっかりした顔をする。
「まず、最初に言っておくが、俺はヤバい奴に喧嘩を売っちまって、ヤバい奴らから追われる身になっている。俺の弟子や血縁者だと知られたら、そいつらが、お前のことも狙って来るかも知れねえ。
破神流は俺が独自に編み出した剣術。これを学んだこと。俺の血縁者であることは決して知られるな。奥義も極力、他人に見せるな。もし安全に暮らしたいなら、ここで奥義書を閉じて燃やすこった」
そう言えば師匠は酒に酔った勢いで、「俺は剣聖だ!」とか言っていたっけ……
剣聖とは剣を極めた者に贈られる称号で、おいそれと名乗って良いものではない。
それをハッタリで軽々しく口にしていた結果、何かとんでもない問題を起こして逃げ回っているじゃないかな?
あ、有り得る……
「そうか。俺の奥義を受け継ぐことを選ぶか。この奥義書は、妹にルカが剣の道を極めるつもりなら渡すように言ってあった。
危険な辺境で冒険者として生きるための力を授けられればと思っていたんだが。それ以上を求めるとは……血は争えんな。
さすがは、俺の息子」
「……息子?」
「お前はバルリング夫妻の子供ではなく、この俺ヴァラドの息子だ。俺は血なまぐさい世界を生きる身。愛した女も不幸にしちまって、とてもお前を育てるどころじゃなかった。だから、妹夫妻に預けた」
師匠がボクの本当の父さん?
だから、父さんと母さんはこの奥義書を渡す時に、なにか思い詰めた顔をしていたのか。
おそらく父さんたちは、師匠が奥義を伝えるのと同時に、ボクの本当の親だと伝えることも知っていたんだ。
でも、それで父さんと母さんとの関係が何か変わるわけでもない。コレットも養子だし、血の繋がりだけが家族の証明ではないことは、ふたりとも分かっている筈だ。
それでも、多分、不安だったんだな。
「お前には剣術とは『先の読み合いに終始する』と教えてあったが。来ることがわかっていても決して防げない攻撃というのがある。それがこれから伝える奥義だ」
師匠は剣を鞘に収めたまま腰を落とした。
師匠は、倭刀という東方の国の刀身が反った剣を愛用していた。
「居合い。鞘を使って、力を一方向に収斂して放つ超神速の一撃だ。まあ、鞘の代わりに地面なんかを利用したやり方もある。い
かなる状況でも使えるようになって、一人前だな」
師匠の身体から、底冷えするような鬼気が立ち上る。これ程わかりやすい殺気を放っては、斬撃の軌道は丸わかりだ。
防御不能技とはいかなるモノなのだろうか。
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