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1章。偽勇者、本物に成り代わる
7話。20万対500の戦いで無双
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城門がきしんだ音とともに開けられる。
破城槌を掴んだ巨人たちが呆気に取られたように、ボクたちを見下ろしていた。
「【聖炎槍(フレアズ・グングニル)】!」
幻獣フェリオの腹を蹴ると同時に、ボクは現在使える最大最強の魔法を発動する。
掲げた左手に、黄金に輝く炎で形成された巨大な槍が出現した。
思い切り、馬上から投げつける。
唸りを上げて飛ぶ炎の巨槍に貫かれて、巨人たちが吹き飛んだ。
「このルカに続け!」
「「「御意にございます。我が主!」」」
ボクの檄に聖騎士たちが剣を掲げて応える。
炎の巨槍は、城門前に群がった魔物たちを、ことごとく消し炭に変えて飛翔。敵軍の中心に着弾して大爆発を起こした。
おそらく、魔竜王ヴァルヴァドスに通用する魔法は、これくらいだと思うので、試し撃ちも兼ねて放ってみたが……
想像以上の威力に、自分でもびっくりする。
だが、かなりの魔力を消耗したようで、身体が重くなったような錯覚を覚えた。
魔力は生命の根源でもあるので、使いすぎると命に関わることもある。
ボクは不老不死なので大丈夫だろうけれど……限界は確実に存在する。
「おおっ! さすがはルカ姫様! 身震いするような魔法ですね!」
エリザが歓喜し、城壁の上からも大歓声が上がった。
「姫様が出陣されたぞ!」
「なんと神々しいお姿か!? 女神の化身よ。我らに勝利を……!」
開かれた道の中を、ボクは500人の少女たちの先頭となって駆ける。
目の前に広がるのは、地平線の彼方まで黒く塗りつぶした魔王軍の大軍勢。
その威容を目の当たりにして、思わず魔法を連発したくなる衝動に駆られるが、懸命にこらえる。
あまり調子に乗って強力な魔法を使いすぎると、自滅することが、今の一撃でハッキリわかった。
『いまさら、勇者がふたりになったところで、勝てるわけないでしょうが!?』
イルティアの言葉が思い出される。
いくら強い戦士がいたとしても、20万の大軍を相手にすれば、やがて体力、魔力が尽きて、なぶり殺しにされる。それを今、痛感した。
短期決戦で、ヴァルヴァドスの首級を上げるしかない。
「ゆ、勇者イルティアだ! 討ち取って手柄にせよ!」
「お前らにひとつ言っておく。ボクはイルティアじゃなくてルカだ! イルティアなんて呼ぶ奴は、真っ先に地獄に送ってやるぞ!」
音声拡大魔法で、戦場に轟くように宣言する。
衝撃から立ち直った魔王軍が、ボクたちに矢の雨を降らせてきた。
オークやゴブリンの矢には毒が塗っており、かすっただけでも致命傷だ。
「全軍、魔法障壁を展開!」
エルザが号令を発する。
空を埋め尽くし、視界を悪くさせるほどの矢が浴びせられるが、聖騎士団にはひとつも届かない。
すべて、空中に発生した見えない防壁に弾かれ、砕け散っていく。
「……小娘どもが! このオーク重装歩兵団を抜けると思うなよ!」
見れば全身鎧を着込んだオークの軍団が、タワーシールドを隙間なく並べて、待ち構えていた。
『大丈夫。【次元障壁(ディメンジョナル・ウォール)】!』
ボクを乗せたフェリオが、ボクを勇気づけるように告げる。
ユニコーンの黄金の角を中心に、空間が歪んだように波打ち、強力な魔法障壁を形成していく。
「我らも続け! ルカ様にありったけの強化魔法、防御魔法をかけよ! 豚どもめ蹴散らしてくれるわ!」
さらにエルザの命令で聖騎士たちが、ボクにバフ(魔法強化)を重ねがけした。
身体が、カッと熱くなるような感覚と同時に、力が湧き出してくる。
激突。
フェリオの魔法障壁に触れたオークたちの巨体が、空高く弾き飛ばされる。
さながら無人の野を行くがごとしだ。
立ちはだかる者を蹴散らし、吹き飛ばし、血煙に変えながら、ボクたちは爆進する。
「このまま一直線にヴァルヴァドスを目指す! みんな遅れるな!」
「はっ!」
みなを鼓舞するボクを横合いから叩き潰そうと、オークの巨大棍棒が振るわれる。
だが、遅い。
剣の一閃で、棍棒ごとオークの胸板を斬り飛ばす。
7年間、毎日1000回続けてきた素振りは、馬上であっても正確な剣筋を見せた。
「な、なんと見事な太刀筋!? 姫様、いつの間にそのような技を……?」
「ま、毎日、密かに練習していたんだよ……!」
苦労して身につけた技をエリザに褒められて、誇らしげな気持ちになる。
『気をつけて!』
フェリオの警告とほぼ同時だった。
頭上に襲来した飛竜の群れが、ボクに向かって一斉に火炎のブレスを吐きつける。
それらは、聖騎士たちが張った耐火障壁に弾かれるが、肝が冷えた。
「ヴァルヴァドスの犬どもめ! 姫様の頭上を狙うとは不届き千万! 全軍【魔法の矢(マジック・アロー)】発射用意……撃ってぇええ!」
聖騎士団から放たれた何百本もの光の矢が、飛竜の群れを串刺しにする。
翼に大穴を開けられた飛竜たちは、きりもみしながら落下して、地面に激突した。
「ルカ様の配下である限り我らは無敵! 侮るなよ魔族ども!」
吠えるエルザの言葉は正しい。
勇者イルティアのスキルのひとつ【軍神の加護】は、集団を率いた場合、その配下の全能力値を20%もアップさせる反則技だった。
魔物の軍勢がボクたちを包囲殲滅しようと迫ってくるが、未だ誰ひとり欠けることなく、それを押し返していた。
破城槌を掴んだ巨人たちが呆気に取られたように、ボクたちを見下ろしていた。
「【聖炎槍(フレアズ・グングニル)】!」
幻獣フェリオの腹を蹴ると同時に、ボクは現在使える最大最強の魔法を発動する。
掲げた左手に、黄金に輝く炎で形成された巨大な槍が出現した。
思い切り、馬上から投げつける。
唸りを上げて飛ぶ炎の巨槍に貫かれて、巨人たちが吹き飛んだ。
「このルカに続け!」
「「「御意にございます。我が主!」」」
ボクの檄に聖騎士たちが剣を掲げて応える。
炎の巨槍は、城門前に群がった魔物たちを、ことごとく消し炭に変えて飛翔。敵軍の中心に着弾して大爆発を起こした。
おそらく、魔竜王ヴァルヴァドスに通用する魔法は、これくらいだと思うので、試し撃ちも兼ねて放ってみたが……
想像以上の威力に、自分でもびっくりする。
だが、かなりの魔力を消耗したようで、身体が重くなったような錯覚を覚えた。
魔力は生命の根源でもあるので、使いすぎると命に関わることもある。
ボクは不老不死なので大丈夫だろうけれど……限界は確実に存在する。
「おおっ! さすがはルカ姫様! 身震いするような魔法ですね!」
エリザが歓喜し、城壁の上からも大歓声が上がった。
「姫様が出陣されたぞ!」
「なんと神々しいお姿か!? 女神の化身よ。我らに勝利を……!」
開かれた道の中を、ボクは500人の少女たちの先頭となって駆ける。
目の前に広がるのは、地平線の彼方まで黒く塗りつぶした魔王軍の大軍勢。
その威容を目の当たりにして、思わず魔法を連発したくなる衝動に駆られるが、懸命にこらえる。
あまり調子に乗って強力な魔法を使いすぎると、自滅することが、今の一撃でハッキリわかった。
『いまさら、勇者がふたりになったところで、勝てるわけないでしょうが!?』
イルティアの言葉が思い出される。
いくら強い戦士がいたとしても、20万の大軍を相手にすれば、やがて体力、魔力が尽きて、なぶり殺しにされる。それを今、痛感した。
短期決戦で、ヴァルヴァドスの首級を上げるしかない。
「ゆ、勇者イルティアだ! 討ち取って手柄にせよ!」
「お前らにひとつ言っておく。ボクはイルティアじゃなくてルカだ! イルティアなんて呼ぶ奴は、真っ先に地獄に送ってやるぞ!」
音声拡大魔法で、戦場に轟くように宣言する。
衝撃から立ち直った魔王軍が、ボクたちに矢の雨を降らせてきた。
オークやゴブリンの矢には毒が塗っており、かすっただけでも致命傷だ。
「全軍、魔法障壁を展開!」
エルザが号令を発する。
空を埋め尽くし、視界を悪くさせるほどの矢が浴びせられるが、聖騎士団にはひとつも届かない。
すべて、空中に発生した見えない防壁に弾かれ、砕け散っていく。
「……小娘どもが! このオーク重装歩兵団を抜けると思うなよ!」
見れば全身鎧を着込んだオークの軍団が、タワーシールドを隙間なく並べて、待ち構えていた。
『大丈夫。【次元障壁(ディメンジョナル・ウォール)】!』
ボクを乗せたフェリオが、ボクを勇気づけるように告げる。
ユニコーンの黄金の角を中心に、空間が歪んだように波打ち、強力な魔法障壁を形成していく。
「我らも続け! ルカ様にありったけの強化魔法、防御魔法をかけよ! 豚どもめ蹴散らしてくれるわ!」
さらにエルザの命令で聖騎士たちが、ボクにバフ(魔法強化)を重ねがけした。
身体が、カッと熱くなるような感覚と同時に、力が湧き出してくる。
激突。
フェリオの魔法障壁に触れたオークたちの巨体が、空高く弾き飛ばされる。
さながら無人の野を行くがごとしだ。
立ちはだかる者を蹴散らし、吹き飛ばし、血煙に変えながら、ボクたちは爆進する。
「このまま一直線にヴァルヴァドスを目指す! みんな遅れるな!」
「はっ!」
みなを鼓舞するボクを横合いから叩き潰そうと、オークの巨大棍棒が振るわれる。
だが、遅い。
剣の一閃で、棍棒ごとオークの胸板を斬り飛ばす。
7年間、毎日1000回続けてきた素振りは、馬上であっても正確な剣筋を見せた。
「な、なんと見事な太刀筋!? 姫様、いつの間にそのような技を……?」
「ま、毎日、密かに練習していたんだよ……!」
苦労して身につけた技をエリザに褒められて、誇らしげな気持ちになる。
『気をつけて!』
フェリオの警告とほぼ同時だった。
頭上に襲来した飛竜の群れが、ボクに向かって一斉に火炎のブレスを吐きつける。
それらは、聖騎士たちが張った耐火障壁に弾かれるが、肝が冷えた。
「ヴァルヴァドスの犬どもめ! 姫様の頭上を狙うとは不届き千万! 全軍【魔法の矢(マジック・アロー)】発射用意……撃ってぇええ!」
聖騎士団から放たれた何百本もの光の矢が、飛竜の群れを串刺しにする。
翼に大穴を開けられた飛竜たちは、きりもみしながら落下して、地面に激突した。
「ルカ様の配下である限り我らは無敵! 侮るなよ魔族ども!」
吠えるエルザの言葉は正しい。
勇者イルティアのスキルのひとつ【軍神の加護】は、集団を率いた場合、その配下の全能力値を20%もアップさせる反則技だった。
魔物の軍勢がボクたちを包囲殲滅しようと迫ってくるが、未だ誰ひとり欠けることなく、それを押し返していた。
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