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3章。妹と合体する。風竜機神シルフィード

31話。風竜機神シルフィードで勝利する

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 機神ドラグーンと風竜機シルフィードが空に舞い上がる。
 風竜機がバラバラのパーツに分解され、それらが磁力で引き合うようにドラグーンにドッキングした。

「うぉおおおおっ! 見参(けんざん)! 風竜機神シルフィードォオオオ!」

 天空で巨大な翼を広げた機神ドラグーンは、風竜機神シルフィードへと変化していた。

「なにぃいいいい! 風竜機神だと!?」

 突撃してきたルドラを、風竜機神シルフィードが蹴り飛ばした。
 ルドラは山に叩きつけられて、大地に深くめり込んだ。

『あぅうううう! お兄ちゃんと一つに! お兄ちゃんを感じるよぉおお!』

 シルヴィアが嬌声を上げる。機体の合体による感覚フィードバックで、快感を覚えているようだった。
 風竜機神のパワーは絶大だから、きっとすごい全能感に酔いしれているのだろう。

「ヤツは【空間歪曲(ディストーション)コート】を備えている。遠距離攻撃は効果が薄い。接近戦で、決めてやるぞ!」
『う、うん……っ!』

 シルヴィアも悶えながら、頷いた。

「はぁあああああ──っ! 【風裂のドラゴン・バンカー】!」

 猛スピードでルドラに突っ込んで行って、追撃を叩き込む。
 ルドラの装甲をオリハルコン製の杭が、ぶち貫いた。

「がぁあああああ! 『資格無き者』の分際で、神に近い我に、深手をぉおおお!?」

 風竜機と合体したことで、【ドラゴン・バンカー】は風属性を得ており、攻撃に風裂の追加ダメージが発生する。
 ルドラの内部で風の刃が荒れ狂い、搭乗者のオデッセは悲鳴を上げた。

「うぉおおおおお! これで、終わりだぁああああ!」

 俺はさらに、密着状態から必殺のドラゴンブレスを発射しようとする。
 ルドラのスピードは脅威だ。このチャンスに勝負を決めたかった。

「侮るではない!」

 だが、ルドラから爆風が放射されて、ふっ飛ばされてしまう。

「ぐわぁああああ!?」
『ああっ!? 敵のダメージが再生していきます!』

 作戦司令部の少女オペレーターが絶叫した。
 見ればバラバラに引き裂かれたルドラの部品同士が引き寄せられて、再結合していく。

「機械のクセに再生だって……!?」

 これはまさか……俺が開発中の【聖竜機バハムート】に組み込もうとしていた【時間回帰】か。
 どんなダメージも、設定した正常な時点にまで巻き戻してしまう究極の機体修復システムだ。

「見たか、ヘルメスよ! 貴様なぞには考えもつかぬ魔導システム! これが盟主より、この我が与えられた力だ! 格の違いを思い知ったか!?」

 くっ。これを破るには、機体に魔力を供給している操縦者を攻撃して倒すしかない。
 だが、【風裂のドラゴン・バンカー】にも耐えたとなると、生半可な攻撃ではオデッセは倒せないぞ。
 そもそもヤツは機体のどの部分にいるんだ? 直接攻撃をぶち当てなくては……

 俺が考えを巡らせていると、ルドラが目にも止まらぬ動きで迫ってきた。
 もう機能回復したのか!

「そらそら! 音速をはるかに超えるこのルドラの動きについてこられるか!?」

 ルドラは風竜機神の周りを飛びながら、鋼鉄の拳を繰り出してくる。
 いくつかは捌くが、その手数に防御が間に合わず被弾し、機体が激しく揺れた。

「ぐぁあああああっ!?」
『きゃあああああっ!?』

『ダメです! 敵のトップスピードは風竜機神のソレを上回っています!』
『ティア様! 海竜機はまだ出撃できませんか!?』
『ぐぅううう! もうちょっと! もうちょっとよ! 私のヘルメス様への愛は、こんな程度じゃ、くじけないんだからぁあああ!』

 シルヴィアの悲鳴と、作戦司令部からの通信が入り乱れる。

「フハハハハッ! この程度かヘルメスよ! 神に逆らう不遜なるドラゴンよ。翼を折られて地に堕ちるが良い!」

 オデッセが勝利を確信して、勝ち誇った。

『まだだよ! お兄ちゃんの造った風竜機神シルフィードは無敵なんだからぁああああ!』

 シルヴィアが叫ぶと同時に、絶大な魔力が機体にみなぎった。

『シルフィード! 私の魔力を全部使っても良いから、アイツをぶっ飛ばす力をちょうだい!』
『承知ッ!』

 俺を想うシルヴィアの魂の叫びに、風竜機神シルフィードが応えた。

「なにぃいいいいッ!?」

 機体が超加速し、ルドラのトップスピードを上回る。

「うぉおおおおお! 潰れろルドラァアアア!」

 俺は無数の拳をルドラに叩き込む。敵の装甲が陥没し、機体がひしゃげたが、攻撃の手は決して緩めない。パイロットのオデッセを倒せなければ、無意味だからだ。

 この超加速はシルヴィアからの無茶な魔力供給によって成り立っていた。短期決戦で決めなければ、妹の命を削ることになる。

「がぁああああ! 許さんぞぉおお! 暴風神ルドラ、最大出力【テンペスト・ランサー】!」

 ルドラの手に、雷を纏った巨大な槍が握られた。空間転移で、武装を呼び寄せたようだ。
 その槍が風竜機神シルフィードの胸を貫いて、爆発を起こす。

「ぐぁああああッ!?」

『あうっ!? おにぃちゃん……!?』

 その痛みはシルヴィアにも共有されて、悲鳴が聞こえた。
 これ以上の戦闘は妹の身が危険だ。

「クハハハハッ。良く戦ったと褒めてやろう! だがルドラを空中戦で破る者など、存在せんのだ! それこそ、本物の神でもなければな!」

 ルドラがとどめを刺そうと、再度【テンペスト・ランサー】を大きく構えた。
 その時だった。

『やった! 呪いの解除、できたわよ!』
『空間転移カタパルト起動! 海竜機リヴァイアサン、出撃します!』

 レナ王女の操る海竜機が、空間転移でルドラの頭上に出現した。

「なんだと!?」

 海竜機はそのままルドラに不意打ちを敢行し、至近距離から【氷海のブレス】を浴びせた。

『これが、わたくしとヘルメス様の愛の力です!』

 ルドラは極低温のドラゴンブレスで氷漬けになり、動きを止める。

「今だぁ! この一撃にすべてを賭ける!」
「うん、行くよ。お兄ちゃん!」
『風竜機神シルフィード! 魔力出力が上昇しています!』

 少女オペレーターの息を飲む声が聞こえた。
 コクピット内の魔力メーターが200%を超えてカンストする。
 俺の開発した機体は、操縦者同士が心を通わすことで、お互いの魔力を増幅し合う。

『し、信じられない数値です! これが、【竜融合(ドラゴニック・フュージョン)】の真価!?』
「なんだ、この魔力の高まりは、あ、あり得ぬ!」

 オデッセが俺たちから噴き上がる魔力の高まりに狼狽した。

「おのれ、【資格無き者】風情が! 我が力の前にひれ伏すがよぃいいいい!」

 ルドラが雷の巨槍【テンペスト・ランサー】を突き出した。

「うぉおおおおおッ! 【雷吼(らいこう)のブレス】!」
「……なにぃいいいい、バカなぁ!?」
 
 俺は白く輝く雷のドラゴンブレスを発射した。
 それは【テンペスト・ランサー】に激突して粉砕。ルドラを飲み込んで大地に突き刺さり、大爆発を起こした。
 残るのは底の見えない大穴だ。ルドラは跡形も無かった。

『て、敵反応、完全にロスト……! ヘルメス様の勝利です!』
『うわぁあああああ!』
『やった、やりましたよ、レナ総司令!』
『はぃ! さすがはヘルメス様! わたくしの旦那様です!』

 ルドラの消滅を確認した作戦司令部から大歓声が上がった。
 少女たちはお互いに抱き合って、勝利を喜び合う。

『やったわヘルメス様! 私と結婚してくださいぃいいい!』

 感極まったティアから通信が入ったが、返答に困ったのでスルーする。

「シルヴィア、大丈夫か……?」
「うん、大丈夫だよ。すごく痛くて、クタクタだけど……お兄ちゃんと一緒に戦えて、世界で一番幸せだよ」

 妹の笑顔がスクリーンに映った。
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