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第70話 光と絶望③
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その直後、菖人達の後方から人が倒れる音がした。
「え……あ、あおっ! あおっ!」
「葵しっかりしろ!」
菖人と桃李が振り向くと、そこには血だらけの葵の姿があった。
菖人達の後ろには白狼が心配そうな顔を浮かべながら、葵の名前を呼び続けた。
救急車が到着した頃には黒蛇の姿はなかった。
***
「……ん……」
「(どこだ? ここ……痛っ!)」
葵が目を覚ましたのは、撃たれてからまるふつか経ってからだった。
「あお……?」
「あ、菖人」
物音に気づいた菖人は薄ら目を開ける。
ベットのドア側に置かれた椅子には菖人が座っていた。
「あおっ! よ、よかった……」
葵が目を覚ましたことを理解した菖人は彼女を優しく抱きしめた。
「菖人さん、おはようございま──え、葵ちゃん! え、みんな葵ちゃんが目覚ましてる!!」
病室のドアを開け、入って来たのは日向だ。
いつの間にか仲良くなったのか、下の名前で呼んでいる。
「ほんとか!? え、なんで2人抱き合ってんだよ!」
日向に呼ばれた蓮も病室に顔を出す。
そこには抱きしめ合う2人の姿があった。
みんなが見ているとも知らずに。
いや、菖人の場合、気づいていてわざとやっている可能性もありそうだ。
「あ、菖人……みんな見てる」
菖人越しに日向達と目が合った葵は恥ずかしそうに胸を押し返す。
だが、怪我をして体力が落ちたのかそれは弱々しいものだった。
「もう少しこのまま……俺、あおまでいなくなっちゃうのかと思った」
「うん。ごめんね……」
葵はそう言うと菖人を優しく抱きしめ返す。
その瞬間、菖人の体が小さく反応した。
抱きしめ返されるとは思わなかったのだろう。
その耳は若干赤くなっていた。
「菖人さん! いつまでやってるんですか? 葵ちゃんは怪我人です! いい加減離れてください!」
「そうだぞ! 菖人さんぜってぇ俺たちがいるの分かっててやっただろう? 早く離れろよ!」
なかなか離れない菖人に日向と蓮が駆け寄る。
「……やっぱりバレるか……」
菖人の言葉に病室に笑い声が響き渡る。
いつの間にか、病室には日向と蓮の他に白狼と龍華が揃っていた。
菖人の隣には桃李、その後ろには桔平と下っ端の2人がいた。
1人は金髪ハーフアップの吉沢魁桃(ヨシザワ カイト) 、もう1人はピンク色の髪の毛の渡辺陽葵 (ワタナベ ハルキ) だ。
窓側には竜と日向と蓮。
ベットの足側には柚佑と楓がいた。
葵が撃たれた所は幸い急所を外していた為、1週間程で退院することができた。
***
2日前──
現在、葵は手術中だ。
手術室の前にはあの場にいた龍華と白狼の姿があった。
設置されたソファーには龍華と白狼が左右分かれて座っている。
「あの、菖人さんっすよね?」
俯いていた竜は顔を上げ、目の前に座る菖人を見つめる。
「ああ。俺のこと知ってるんだな」
「そりゃ……龍華っていたら俺たちの憧れっすから……」
「そうか。お前は竜だったよな」
「はい。あいつの居場所教えてくれてありがとうございます」
竜は深々と座ったまま頭を下げた。
「ああ。こんなことになっちまったけど、あいつは大丈夫だ」
「なんでそんなこと言えんだよ!! なんで……心配じゃねぇのかよ!!」
竜の隣に座っていた蓮がすかさず口を挟む。
「俺だって心配だ。けど、それ以上にあいつは強い。お前達と出会って大切な仲間を見つけたんだ。あいつは仲間を置いて先に行くやつじゃねえからな」
「……っ!」
菖人の言葉に日向と蓮の瞳から涙が流れる。
「なんで龍華の菖人さんがあいつと知り合いなんっすか?」
「あー共通の知り合い繋がりとだけ言っておくよ」
「(やっぱり聞かれるよな。けど、これかしか言えねぇんだ)」
菖人は竜の問いかけに言葉を濁す。
「それ以上は話してくれないんすね」
「悪いな。それ以上はあおに聞いてくれ。すぐには無理だと思うが絶対に話してくれるはずだ」
「……わかりました」
竜はそう言うと葵がいる手術室に視線を向けた。
「え……あ、あおっ! あおっ!」
「葵しっかりしろ!」
菖人と桃李が振り向くと、そこには血だらけの葵の姿があった。
菖人達の後ろには白狼が心配そうな顔を浮かべながら、葵の名前を呼び続けた。
救急車が到着した頃には黒蛇の姿はなかった。
***
「……ん……」
「(どこだ? ここ……痛っ!)」
葵が目を覚ましたのは、撃たれてからまるふつか経ってからだった。
「あお……?」
「あ、菖人」
物音に気づいた菖人は薄ら目を開ける。
ベットのドア側に置かれた椅子には菖人が座っていた。
「あおっ! よ、よかった……」
葵が目を覚ましたことを理解した菖人は彼女を優しく抱きしめた。
「菖人さん、おはようございま──え、葵ちゃん! え、みんな葵ちゃんが目覚ましてる!!」
病室のドアを開け、入って来たのは日向だ。
いつの間にか仲良くなったのか、下の名前で呼んでいる。
「ほんとか!? え、なんで2人抱き合ってんだよ!」
日向に呼ばれた蓮も病室に顔を出す。
そこには抱きしめ合う2人の姿があった。
みんなが見ているとも知らずに。
いや、菖人の場合、気づいていてわざとやっている可能性もありそうだ。
「あ、菖人……みんな見てる」
菖人越しに日向達と目が合った葵は恥ずかしそうに胸を押し返す。
だが、怪我をして体力が落ちたのかそれは弱々しいものだった。
「もう少しこのまま……俺、あおまでいなくなっちゃうのかと思った」
「うん。ごめんね……」
葵はそう言うと菖人を優しく抱きしめ返す。
その瞬間、菖人の体が小さく反応した。
抱きしめ返されるとは思わなかったのだろう。
その耳は若干赤くなっていた。
「菖人さん! いつまでやってるんですか? 葵ちゃんは怪我人です! いい加減離れてください!」
「そうだぞ! 菖人さんぜってぇ俺たちがいるの分かっててやっただろう? 早く離れろよ!」
なかなか離れない菖人に日向と蓮が駆け寄る。
「……やっぱりバレるか……」
菖人の言葉に病室に笑い声が響き渡る。
いつの間にか、病室には日向と蓮の他に白狼と龍華が揃っていた。
菖人の隣には桃李、その後ろには桔平と下っ端の2人がいた。
1人は金髪ハーフアップの吉沢魁桃(ヨシザワ カイト) 、もう1人はピンク色の髪の毛の渡辺陽葵 (ワタナベ ハルキ) だ。
窓側には竜と日向と蓮。
ベットの足側には柚佑と楓がいた。
葵が撃たれた所は幸い急所を外していた為、1週間程で退院することができた。
***
2日前──
現在、葵は手術中だ。
手術室の前にはあの場にいた龍華と白狼の姿があった。
設置されたソファーには龍華と白狼が左右分かれて座っている。
「あの、菖人さんっすよね?」
俯いていた竜は顔を上げ、目の前に座る菖人を見つめる。
「ああ。俺のこと知ってるんだな」
「そりゃ……龍華っていたら俺たちの憧れっすから……」
「そうか。お前は竜だったよな」
「はい。あいつの居場所教えてくれてありがとうございます」
竜は深々と座ったまま頭を下げた。
「ああ。こんなことになっちまったけど、あいつは大丈夫だ」
「なんでそんなこと言えんだよ!! なんで……心配じゃねぇのかよ!!」
竜の隣に座っていた蓮がすかさず口を挟む。
「俺だって心配だ。けど、それ以上にあいつは強い。お前達と出会って大切な仲間を見つけたんだ。あいつは仲間を置いて先に行くやつじゃねえからな」
「……っ!」
菖人の言葉に日向と蓮の瞳から涙が流れる。
「なんで龍華の菖人さんがあいつと知り合いなんっすか?」
「あー共通の知り合い繋がりとだけ言っておくよ」
「(やっぱり聞かれるよな。けど、これかしか言えねぇんだ)」
菖人は竜の問いかけに言葉を濁す。
「それ以上は話してくれないんすね」
「悪いな。それ以上はあおに聞いてくれ。すぐには無理だと思うが絶対に話してくれるはずだ」
「……わかりました」
竜はそう言うと葵がいる手術室に視線を向けた。
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