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第63話 葵と単車
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***
「お待たせしました」
店員がパンケーキを持ちやってきた。
「ありがとうございます」
葵の目の前には宇治抹茶パンケーキ。
ほんのり抹茶色に染まったパンケーキの上には粒あんと生クリーム。
その上に黒蜜がかけられていた。
「美味しそう……」
パンケーキが続々と届く。
テーブルの上には3人分のパンケーキが置かれた。
楓の目の前には焙じ茶パンケーキ。
パンケーキの上には生クリームとバニラアイス。
その上には焙じ茶パウダーがかけられていた。
「美味そう」
そして、日向の目の前には以前、楓が頼んだのと同じキャラメルパンケーキ。
「うわぁ……美味しそう」
日向は頬を緩ませると、携帯を取り出し写真を撮り始めた。
「ん、美味しい」
葵はパンケーキを口に入れると頬を緩ませた。
「うまっ……」
やはり楓はパンケーキを食べると少しだけ表情が柔らかくなるようだ。
「んー! 美味しい! これにしてよかった!」
日向は満面の笑みを浮かべ、パンケーキを食べ続けた。
「(本当美味しいな……。美味しいの食べると嫌な事も忘れられ……あ、菖人達に連絡するの忘れてた……)」
葵は食べてる途中で、萩人に教えられた菖人達の連絡を思い出す。
「葵ちゃんどうかした?」
「え、あ……ううん、なんでもない」
葵のパンケーキを食べる手が止まり、不思議に思った日向が問いかけた。
「(帰ったら連絡しないとな……)」
葵はそんなことを思いながらパンケーキを再び口の中に入れた。
「そういえば、楓さんって葵ちゃんとは喋れるんですね。この前もパンケーキ行ったり、迎え行ったり……」
日向はふと思い出したかのように口を開いた。
「ああ。こいつは声変えないからな」
楓は一瞬、葵に視線を移した。
「そうなんですね。え、じゃあ、迎え行った時って楓さんに掴まってたんですか?」
「いや、掴まっていいって言った時も、掴まらなかったな」
「え! 葵ちゃんよく落ちなかったね」
日向は驚きの表情を見せた。
「別に楓じゃなくても掴まる所はあるからね」
葵は龍華にいた時から、後ろに乗る時は車体を掴んでいた。
「黒蛇撒いた時、結構スピード出したけどな」
「そうなんですね。葵ちゃん、本当よく落ちなかったね」
「全然怖くないし、落ちないから大丈夫だよ」
「凄いね。あれ? 僕達と会う前つて単車乗ったことあったんだっけ?」
「……ん、あるよ」
葵は口に入れたパンケーキを飲み込むと平然と答えた。
「お前が運転?」
「え、あ……えっと、後ろだよ」
だが、楓の問いかけには動揺を見せた。
しどろもどろになりながら必死に言葉を探した。
(あっぶな! 普通に乗ったことあるって答えてた……)
日向の問いかけに何も考えず答えていた事を思い出す。
葵は龍華にいた頃、単車の後ろはもちろん、自分で運転もしていた。
その運転技術は龍華の中でも1.2を争う程だった。
「だよな、びっくりした」
「僕もびっくりしたー!」
楓と日向の驚きに葵はただ笑うことしかできなかった。
***
「あ、迎えくるって。そろそろ行こっか。僕ちょっとトイレ行ってくるね」
数分後──
みんながパンケーキを食べ終えた頃、日向は携帯を見ながらそう言うと、席を立った。
「ああ。金は俺が払っとく」
「ありがとう、ご馳走様。じゃあ私は外出てるね」
日向の後に続き席を立つ2人。
葵は外に出ると辺りを見渡す。
「(凌どこだろ?)」
そこは来る時に降りた場所。
だが、乗ってきたはずのベンツは見当たらない。
すると、葵の目の前に車が横付けされた。
その車は黒のベンツではなく、ワンボックスカーだ。
「(なんだろ?この車)」
葵が車の存在に気づくと後部座席のドアが自動で開いた。
「お待たせしました」
店員がパンケーキを持ちやってきた。
「ありがとうございます」
葵の目の前には宇治抹茶パンケーキ。
ほんのり抹茶色に染まったパンケーキの上には粒あんと生クリーム。
その上に黒蜜がかけられていた。
「美味しそう……」
パンケーキが続々と届く。
テーブルの上には3人分のパンケーキが置かれた。
楓の目の前には焙じ茶パンケーキ。
パンケーキの上には生クリームとバニラアイス。
その上には焙じ茶パウダーがかけられていた。
「美味そう」
そして、日向の目の前には以前、楓が頼んだのと同じキャラメルパンケーキ。
「うわぁ……美味しそう」
日向は頬を緩ませると、携帯を取り出し写真を撮り始めた。
「ん、美味しい」
葵はパンケーキを口に入れると頬を緩ませた。
「うまっ……」
やはり楓はパンケーキを食べると少しだけ表情が柔らかくなるようだ。
「んー! 美味しい! これにしてよかった!」
日向は満面の笑みを浮かべ、パンケーキを食べ続けた。
「(本当美味しいな……。美味しいの食べると嫌な事も忘れられ……あ、菖人達に連絡するの忘れてた……)」
葵は食べてる途中で、萩人に教えられた菖人達の連絡を思い出す。
「葵ちゃんどうかした?」
「え、あ……ううん、なんでもない」
葵のパンケーキを食べる手が止まり、不思議に思った日向が問いかけた。
「(帰ったら連絡しないとな……)」
葵はそんなことを思いながらパンケーキを再び口の中に入れた。
「そういえば、楓さんって葵ちゃんとは喋れるんですね。この前もパンケーキ行ったり、迎え行ったり……」
日向はふと思い出したかのように口を開いた。
「ああ。こいつは声変えないからな」
楓は一瞬、葵に視線を移した。
「そうなんですね。え、じゃあ、迎え行った時って楓さんに掴まってたんですか?」
「いや、掴まっていいって言った時も、掴まらなかったな」
「え! 葵ちゃんよく落ちなかったね」
日向は驚きの表情を見せた。
「別に楓じゃなくても掴まる所はあるからね」
葵は龍華にいた時から、後ろに乗る時は車体を掴んでいた。
「黒蛇撒いた時、結構スピード出したけどな」
「そうなんですね。葵ちゃん、本当よく落ちなかったね」
「全然怖くないし、落ちないから大丈夫だよ」
「凄いね。あれ? 僕達と会う前つて単車乗ったことあったんだっけ?」
「……ん、あるよ」
葵は口に入れたパンケーキを飲み込むと平然と答えた。
「お前が運転?」
「え、あ……えっと、後ろだよ」
だが、楓の問いかけには動揺を見せた。
しどろもどろになりながら必死に言葉を探した。
(あっぶな! 普通に乗ったことあるって答えてた……)
日向の問いかけに何も考えず答えていた事を思い出す。
葵は龍華にいた頃、単車の後ろはもちろん、自分で運転もしていた。
その運転技術は龍華の中でも1.2を争う程だった。
「だよな、びっくりした」
「僕もびっくりしたー!」
楓と日向の驚きに葵はただ笑うことしかできなかった。
***
「あ、迎えくるって。そろそろ行こっか。僕ちょっとトイレ行ってくるね」
数分後──
みんながパンケーキを食べ終えた頃、日向は携帯を見ながらそう言うと、席を立った。
「ああ。金は俺が払っとく」
「ありがとう、ご馳走様。じゃあ私は外出てるね」
日向の後に続き席を立つ2人。
葵は外に出ると辺りを見渡す。
「(凌どこだろ?)」
そこは来る時に降りた場所。
だが、乗ってきたはずのベンツは見当たらない。
すると、葵の目の前に車が横付けされた。
その車は黒のベンツではなく、ワンボックスカーだ。
「(なんだろ?この車)」
葵が車の存在に気づくと後部座席のドアが自動で開いた。
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