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第49話 竜の過去 ④光
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おそらく仲間だろう。
倒れた男を守るかのように立ち塞がる男達。
今まで1対1でしかケンカをしたことが無い竜。
複数人を相手にするのは初めてだ。
「おめぇらやっちまえ!」
赤髪の男の声を合図に男達が竜に襲いかかる。
中学生が複数人の大人に勝てるはずもなく袋叩きにされる竜。
通り過ぎる人達は見て見ぬふりだ。
「(やっぱり……誰も助けてくれない。俺なんて……)」
唇を真一文字に結ぶ竜。
その拳はキツく握りしめられていた。
──そんな中1人の男が近づいてくる。
それはあっという間の出来事だった。
気づけば竜を袋叩きにした数名の男が地面に倒れている。
「おい、大丈夫か?」
街灯に照らされ、その人物の顔がはっきりと見えた。
金髪に黒のメッシュ、目鼻立ちが整った男だ。
「いってぇ……大丈夫」
「凄い怪我だな。手当してやる」
「いや、いい」
殴られたことにより竜の顔は血だらけ。
そして、服はボロボロだ。
「いいじゃないだろ? このまま帰すわけにいかないだろ? 行くぞ」
金髪黒メッシュの男は嫌がる竜を担ぐと歩きだす。
「おい! 降ろせ!」
「うるせぇ……静かにしろや!」
騒ぎ出す竜に金髪黒メッシュの男はが怒鳴る。
すると竜は大人しくなる。
「(恐いな……この兄ちゃん何者だ?)」
金髪黒メッシュの肩に担がれた竜はチラリとその男の顔を盗み見る。
目鼻立ちが整った綺麗な顔。
この綺麗な顔からは想像もつかない低音ボイス。
ケンカも強いし、おまけに面倒見もいい。
「(モテるだろうな……)」
どこに連れて行かれるかも分からない竜はただそんな事を考えていた。
「はい、乗って」
大通りに出ると真っ黒な車に乗せられる竜。
「な、なんで乗んなきゃいけないだよ! お、俺をどうする気だ!」
怒鳴られたことにより、金髪黒メッシュの男を恐れる竜は、オドオドとしながら口を開く。
「手当するだけだ。だから警戒するな」
「なんで助けたんだよ! 俺なんか……俺なんか生きてちゃいけないだよっ……!」
「何があったか知らないが、この世に生きてちゃいけない人間はいないんだよ」
「でも……悪いことしたら……」
「それは別だ。悪いことしたらそれなりの罰を受ける。でも、お前は何か悪いことしたのか?」
「し、してない」
竜は勢いよく首を左右に振る。
その瞳には薄らと涙が浮かんでいる。
「じゃあ別に生きてたっていいだろ?」
「でもっ! お母さんに言われた……産まなきゃよかったって……俺……誰にも愛されてないッ。グズッ……ひ、必要とされてない……だがらっ生きてたって……」
竜の瞳から涙が零れ落ちる。
それは頬をつたい膝に置かれた拳を濡らす。
大好きだった母から"産まなきゃよかった"と言われ、未だに居ないもの扱いをされる日々。
そして、杏は私立の中学校へ行った為、今竜が通っている学校では友達と呼べる人はいない。
今の竜を気にかける人は誰もいなかった。
竜が生きる理由を失うのも無理はない。
倒れた男を守るかのように立ち塞がる男達。
今まで1対1でしかケンカをしたことが無い竜。
複数人を相手にするのは初めてだ。
「おめぇらやっちまえ!」
赤髪の男の声を合図に男達が竜に襲いかかる。
中学生が複数人の大人に勝てるはずもなく袋叩きにされる竜。
通り過ぎる人達は見て見ぬふりだ。
「(やっぱり……誰も助けてくれない。俺なんて……)」
唇を真一文字に結ぶ竜。
その拳はキツく握りしめられていた。
──そんな中1人の男が近づいてくる。
それはあっという間の出来事だった。
気づけば竜を袋叩きにした数名の男が地面に倒れている。
「おい、大丈夫か?」
街灯に照らされ、その人物の顔がはっきりと見えた。
金髪に黒のメッシュ、目鼻立ちが整った男だ。
「いってぇ……大丈夫」
「凄い怪我だな。手当してやる」
「いや、いい」
殴られたことにより竜の顔は血だらけ。
そして、服はボロボロだ。
「いいじゃないだろ? このまま帰すわけにいかないだろ? 行くぞ」
金髪黒メッシュの男は嫌がる竜を担ぐと歩きだす。
「おい! 降ろせ!」
「うるせぇ……静かにしろや!」
騒ぎ出す竜に金髪黒メッシュの男はが怒鳴る。
すると竜は大人しくなる。
「(恐いな……この兄ちゃん何者だ?)」
金髪黒メッシュの肩に担がれた竜はチラリとその男の顔を盗み見る。
目鼻立ちが整った綺麗な顔。
この綺麗な顔からは想像もつかない低音ボイス。
ケンカも強いし、おまけに面倒見もいい。
「(モテるだろうな……)」
どこに連れて行かれるかも分からない竜はただそんな事を考えていた。
「はい、乗って」
大通りに出ると真っ黒な車に乗せられる竜。
「な、なんで乗んなきゃいけないだよ! お、俺をどうする気だ!」
怒鳴られたことにより、金髪黒メッシュの男を恐れる竜は、オドオドとしながら口を開く。
「手当するだけだ。だから警戒するな」
「なんで助けたんだよ! 俺なんか……俺なんか生きてちゃいけないだよっ……!」
「何があったか知らないが、この世に生きてちゃいけない人間はいないんだよ」
「でも……悪いことしたら……」
「それは別だ。悪いことしたらそれなりの罰を受ける。でも、お前は何か悪いことしたのか?」
「し、してない」
竜は勢いよく首を左右に振る。
その瞳には薄らと涙が浮かんでいる。
「じゃあ別に生きてたっていいだろ?」
「でもっ! お母さんに言われた……産まなきゃよかったって……俺……誰にも愛されてないッ。グズッ……ひ、必要とされてない……だがらっ生きてたって……」
竜の瞳から涙が零れ落ちる。
それは頬をつたい膝に置かれた拳を濡らす。
大好きだった母から"産まなきゃよかった"と言われ、未だに居ないもの扱いをされる日々。
そして、杏は私立の中学校へ行った為、今竜が通っている学校では友達と呼べる人はいない。
今の竜を気にかける人は誰もいなかった。
竜が生きる理由を失うのも無理はない。
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