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第48話 竜の過去 ③絶望
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──楽しかった時間はあっという間に終わる。
家に着き、竜はひとり部屋の中に佇む。
「(杏の家楽しかったな……僕の家とは全く違う。僕はゲームもおやつも、もらったことない。けど、お母さんは僕の事大好きって言って……あれ? 最近言ってもらってない?)」
動揺からか竜の視点は定まっていない。
「(前までお母さんが叩いても必ず"大好き"って言ってくれた。え、いつから? お母さんが叩くだけになったのは……それに最近お母さんと喋ってない。え……じゃあお母さんは本当に僕のこと嫌いになった……僕がお父さんに似ているから……?)」
竜は現実を突きつけられ、膝から崩れ落ちた。
「……っ! うっ……僕は……大好きなのに……ッ。なんで……っ……うわぁぁん……」
静かな部屋には竜の泣き叫ぶ声だけが響いていた。
「(あ! お母さん……帰ってきた!)」
どれくらい経っただろうか。
玄関から物音が聞こえた竜は立ち上がり、母を出迎える。
その顔には薄らと涙の跡が残っていた。
「お、お母さんおかえり!」
「いたのね。本当あんた父親にそっくりね。……あんたなんか産まなきゃよかったわ」
母の言葉に竜の瞳には再び涙が浮かぶ。
「え……な、なんでっ! なんでお母さんそんなこと言うの? ぼ、僕のこと好きじゃないの?」
「あなた見る度に父親のこと思い出すのよ? 嫌いに決まってるじゃない。邪魔だからそこどいてくれる?」
母はそう言うと何事もなかったかのように部屋に入って行く。
「(な、なんで……なんでよ……っ! 僕はお母さんのこと好きなのに……)」
声を殺して泣く竜の手は力強く握りしめられている。
「(なんでそんなこと言うんだよっ! もうお母さんなんて……お母さんなんて……ッ)」
竜の表情は悲しみから怒りへと変わっていく。
その手のひらには爪の後がくっきりと残っている。
竜が立っていた場所にはいくつもの涙の跡が残っていた。
──竜が変わったのはそれからだ。
竜が中学生になった頃、反抗期も相まって外では暴れる毎日。
学校に行かない日も度々あった。
売られた喧嘩は全て買っていた。
そんなある日、街で1人の男の肩とぶつかる。
スキンヘッドのイカつい男だった。
「いってぇな……どこ見て歩いてんだよ?」
突然、男が竜の胸ぐらを掴む。
「あぁ? そっちがぶつかってきたんだろ?」
竜も負けじと相手のそれを掴んだ。
「ガキがナメてんじゃねぇぞ」
「いっ……ふざけんじゃねぇよ!」
男に右頬を殴られた竜は何とか体勢を整え、相手の左頬に拳をめり込ませる。
男はよろけ地面に腰を付ける。
「おい! てめぇふざけんじゃねぇよ!やれ」
それが合図かのように路地裏からは数名の男が出てきた。
家に着き、竜はひとり部屋の中に佇む。
「(杏の家楽しかったな……僕の家とは全く違う。僕はゲームもおやつも、もらったことない。けど、お母さんは僕の事大好きって言って……あれ? 最近言ってもらってない?)」
動揺からか竜の視点は定まっていない。
「(前までお母さんが叩いても必ず"大好き"って言ってくれた。え、いつから? お母さんが叩くだけになったのは……それに最近お母さんと喋ってない。え……じゃあお母さんは本当に僕のこと嫌いになった……僕がお父さんに似ているから……?)」
竜は現実を突きつけられ、膝から崩れ落ちた。
「……っ! うっ……僕は……大好きなのに……ッ。なんで……っ……うわぁぁん……」
静かな部屋には竜の泣き叫ぶ声だけが響いていた。
「(あ! お母さん……帰ってきた!)」
どれくらい経っただろうか。
玄関から物音が聞こえた竜は立ち上がり、母を出迎える。
その顔には薄らと涙の跡が残っていた。
「お、お母さんおかえり!」
「いたのね。本当あんた父親にそっくりね。……あんたなんか産まなきゃよかったわ」
母の言葉に竜の瞳には再び涙が浮かぶ。
「え……な、なんでっ! なんでお母さんそんなこと言うの? ぼ、僕のこと好きじゃないの?」
「あなた見る度に父親のこと思い出すのよ? 嫌いに決まってるじゃない。邪魔だからそこどいてくれる?」
母はそう言うと何事もなかったかのように部屋に入って行く。
「(な、なんで……なんでよ……っ! 僕はお母さんのこと好きなのに……)」
声を殺して泣く竜の手は力強く握りしめられている。
「(なんでそんなこと言うんだよっ! もうお母さんなんて……お母さんなんて……ッ)」
竜の表情は悲しみから怒りへと変わっていく。
その手のひらには爪の後がくっきりと残っている。
竜が立っていた場所にはいくつもの涙の跡が残っていた。
──竜が変わったのはそれからだ。
竜が中学生になった頃、反抗期も相まって外では暴れる毎日。
学校に行かない日も度々あった。
売られた喧嘩は全て買っていた。
そんなある日、街で1人の男の肩とぶつかる。
スキンヘッドのイカつい男だった。
「いってぇな……どこ見て歩いてんだよ?」
突然、男が竜の胸ぐらを掴む。
「あぁ? そっちがぶつかってきたんだろ?」
竜も負けじと相手のそれを掴んだ。
「ガキがナメてんじゃねぇぞ」
「いっ……ふざけんじゃねぇよ!」
男に右頬を殴られた竜は何とか体勢を整え、相手の左頬に拳をめり込ませる。
男はよろけ地面に腰を付ける。
「おい! てめぇふざけんじゃねぇよ!やれ」
それが合図かのように路地裏からは数名の男が出てきた。
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