舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

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第44話 赤点

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「なあなあ! それより、今回の中間、柚佑と葵どっちが点数よかったんだ?」

蓮は思い出したかのように口を開いた。

今日は先日行われた中間試験のテスト返却日だった。

「えーと……全部満点」

葵は隣に座る柚佑を盗み見しながら答える。

「……やっぱ葵ちゃんは凄いや。俺は数学が98点。それ以外が満点」
「2人ともすげぇ……」

柚佑と葵の点数を聞いた蓮は目を輝かせる。

「そう言う蓮は赤点なかったんだよね?」

葵は斜め前に座る蓮を見つめる。

「あ、あったり前だろ!」
「よかったー。あたし達が教えて赤点取ってたら何か罰ゲームしてもらおうかと思ったよ」

そう、文化祭が終了した翌日から日向と蓮はテスト勉強の毎日だった。

そのおかげか蓮は赤点を回避したのだった。

「……」

葵の言葉に蓮の隣に座る日向は落ち着きがなくなる。

当たりをキョロキョロと見渡し、心ここに在らずといった状態だ。

「日向どうしたの?」
「あ、えっと……ごめんっ!」

日向は突然立ち上がると頭を下げる。

「何が?」
「それが……英語だけ赤点取った。ごめん……」
「そっか。じゃあ明日のお昼あたしと柚佑の奢って」
「へ?」

葵の言葉に日向は気の抜けた声を出す。

"赤点取ったら罰ゲーム" 日向はもっと酷いことを予想していたのだろうか。

「それだけでいいの?」
「うん。だって英語だけでしょ? 日向が頑張ってたの知ってるから大丈夫」
「葵ちゃん……ありがとう。明日ちゃんとお昼奢るから」

あれだけ落ち着きがなかった日向も安堵の表情を見せる。

「あ、竜さんおかえりなさい」
「ああ」

柚佑の声で葵はドアに視線を移すと、そこには──竜の姿があった。

「あれ? 竜風呂入ったの?」

遅れて到着した楓は竜の背後から声をかける。

「ああ。濡れたからな」
「もう少し後だったら濡れなかったのにな」
「え、雨止んだの?」

楓の言葉に反応したのは葵だ。

「……ああ。止んでる」
「そっか、もう止んでるのかー」

雨が止んでいることを知った葵は酷く落ち込んだ。

あの時、雨がすぐ止むことを知っていたら──濡れずに済むはずだった。

「葵ちゃん帰りは濡れなくてよさそうだね」

日向は落ち込む葵に声をかける。

「うん。そういえば、竜と楓はテストどうだったの?」

葵は興味津々な眼差しで問いかける。

「オール100」
「全部80以上」

竜と楓は単語だけを口にする。

竜は葵と同じく全て100点満点、楓は全て80点以上だったようだ。

「2人とも頭いいんだ……」
「(テスト簡単過ぎて頭いいのかよくわかんないけど……)」
「ああ」

竜はボソッと呟いた。

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