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第43話 竜の背中
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「は?」
「うわっ! 竜か……びっくりした。竜も雨に濡れたの?」
そこには、これから風呂に入るであろう、竜の姿があった。
「ああ」
「雨すごかったもんね。ごめん、タオルもらっていい」
「ああ。お前は悲鳴上げないんだな」
「え? なんで?」
「普通、風呂場で遭遇したら叫ぶんじゃねぇの? 俺上着てねぇし」
タオルを渡しながら竜はそう問いかける。
竜の言うように下はズボンを履いているが、上半身は裸だ。
「どうなんだろ? まあ、下履いてるし、あたしは別に何も思わないけど」
「(それに上着てないのはあいつらで見慣れてるしな。でもこれは言えないな。ん? 竜の背中傷だらけだ……喧嘩でかな?)」
竜に言われ葵は上半身に視線を移した。
背中には無数の古傷が残っている。
「背中の傷痛そうだね。これは喧嘩?」
「もう痛くねぇ。違う」
「(喧嘩じゃない古傷。居候……まさかっ!)」
葵の脳裏にあることが浮かぶ。
「……もしかして、親?」
そうでなければいいと思いながら問いかける。
「ああ」
だが、返ってきたのは肯定する言葉だった。
「そっか」
「(よく見ると、いくつか根性焼きもある)」
背中や肩など洋服を着て見えない所には複数の根性焼きが葵の目に映る。
「何も聞かねぇの?」
「聞いてもいいの? 竜が言いたくないことならあたしは聞かないよ」
「……じゃあ、聞いてくれねぇか?」
その声はいつになく弱々しく、若干震えていた。
「わかった」
「で、いつまでいんの? 俺風呂入る」
先程と打って変わって、強気な口調の竜。
「え、話は?」
葵は今からその話を聞くのかと思い、その場に立ち止まっていた。
だが、竜はこれから風呂に入る為、必然的に話は今ではない。
「それは夜。帰り送った時、お前の家行っていいか?」
「いいけど……」
話は夜──そして、今日は竜が送ってくれるようだ。
それでもなお、その場から動かない葵。
「下脱ぐけど見てぇの?」
そんな葵に竜はズボンに手をかけながら、問いかける。
「そ、そんなわけない。お邪魔しました!」
葵はタオルを握りしめたまま、慌ただしく脱衣所を飛び出した。
「(な、なんだ……あれ。色気がやばい……)」
葵はいつもの部屋へ向かうと、ドアの前で立ち尽くす。
元々雨に濡れ、髪の毛からは水が滴り落ちていた。
その上、ズボンに手をかけた竜の姿は色気が凄かったようだ。
「(はぁ……)」
落ち着いた葵はドアを開ける。
「葵おかえり」
「ただいま」
再び笑顔で出迎えてくれたのは日向。
「あ、タオル……お風呂場使ってなかった?」
柚佑に言われ、葵は手に持つタオルに視線を移す。
「え? あー竜が使ってたよ」
「大丈夫だった?」
「大丈夫って……何が?」
柚佑に心配される理由が分からず小首を傾げる。
「風呂でばったりとかハプニング起きそうじゃん」
葵の問いかけに答えのは蓮だった。
「何もないよ」
「(うん、あれは何かあったうちには入らないな)」
葵は脱衣所であったことを思い起こす。
ただ、竜の色気が凄かっただけで、"何かを"見てしまったことは何もない。
「つまんねぇの」
「なんで何か起きる前提なのよ……」
葵はそう呟きながら、柚佑の隣に腰掛ける。
「うわっ! 竜か……びっくりした。竜も雨に濡れたの?」
そこには、これから風呂に入るであろう、竜の姿があった。
「ああ」
「雨すごかったもんね。ごめん、タオルもらっていい」
「ああ。お前は悲鳴上げないんだな」
「え? なんで?」
「普通、風呂場で遭遇したら叫ぶんじゃねぇの? 俺上着てねぇし」
タオルを渡しながら竜はそう問いかける。
竜の言うように下はズボンを履いているが、上半身は裸だ。
「どうなんだろ? まあ、下履いてるし、あたしは別に何も思わないけど」
「(それに上着てないのはあいつらで見慣れてるしな。でもこれは言えないな。ん? 竜の背中傷だらけだ……喧嘩でかな?)」
竜に言われ葵は上半身に視線を移した。
背中には無数の古傷が残っている。
「背中の傷痛そうだね。これは喧嘩?」
「もう痛くねぇ。違う」
「(喧嘩じゃない古傷。居候……まさかっ!)」
葵の脳裏にあることが浮かぶ。
「……もしかして、親?」
そうでなければいいと思いながら問いかける。
「ああ」
だが、返ってきたのは肯定する言葉だった。
「そっか」
「(よく見ると、いくつか根性焼きもある)」
背中や肩など洋服を着て見えない所には複数の根性焼きが葵の目に映る。
「何も聞かねぇの?」
「聞いてもいいの? 竜が言いたくないことならあたしは聞かないよ」
「……じゃあ、聞いてくれねぇか?」
その声はいつになく弱々しく、若干震えていた。
「わかった」
「で、いつまでいんの? 俺風呂入る」
先程と打って変わって、強気な口調の竜。
「え、話は?」
葵は今からその話を聞くのかと思い、その場に立ち止まっていた。
だが、竜はこれから風呂に入る為、必然的に話は今ではない。
「それは夜。帰り送った時、お前の家行っていいか?」
「いいけど……」
話は夜──そして、今日は竜が送ってくれるようだ。
それでもなお、その場から動かない葵。
「下脱ぐけど見てぇの?」
そんな葵に竜はズボンに手をかけながら、問いかける。
「そ、そんなわけない。お邪魔しました!」
葵はタオルを握りしめたまま、慌ただしく脱衣所を飛び出した。
「(な、なんだ……あれ。色気がやばい……)」
葵はいつもの部屋へ向かうと、ドアの前で立ち尽くす。
元々雨に濡れ、髪の毛からは水が滴り落ちていた。
その上、ズボンに手をかけた竜の姿は色気が凄かったようだ。
「(はぁ……)」
落ち着いた葵はドアを開ける。
「葵おかえり」
「ただいま」
再び笑顔で出迎えてくれたのは日向。
「あ、タオル……お風呂場使ってなかった?」
柚佑に言われ、葵は手に持つタオルに視線を移す。
「え? あー竜が使ってたよ」
「大丈夫だった?」
「大丈夫って……何が?」
柚佑に心配される理由が分からず小首を傾げる。
「風呂でばったりとかハプニング起きそうじゃん」
葵の問いかけに答えのは蓮だった。
「何もないよ」
「(うん、あれは何かあったうちには入らないな)」
葵は脱衣所であったことを思い起こす。
ただ、竜の色気が凄かっただけで、"何かを"見てしまったことは何もない。
「つまんねぇの」
「なんで何か起きる前提なのよ……」
葵はそう呟きながら、柚佑の隣に腰掛ける。
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