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第34話 やっと会えた
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「……あお」
「え……」
名前を呼ばれ振り向くとそこには銀髪の男がいた。
耳にはたくさんのピアスが付いている。
「あお、やっと会えた」
銀髪の男はそう言うと嬉しそうに笑う。
「菖人……」
その男は──龍華の現総長、奥村菖人 (オクムラ アヤト)だ。
葵が総長をしていた時の副総長。
「菖人、急に居なくなるよ……って葵! 本当にいた……っ!」
メガネをかけた赤髪はまるで化け物を見たかのように驚いていた。
「……え、桃李……」
後から現れたのは龍華の現副総長、杉原橙季(スギハラ トウリ) だ。
「な、なんで……。どうし…て、ここが……わかった…の?」
葵は震える声で必死に問いかける。
震えていたのは声だけではなく、手も同じだった。
それを隠すかのように右手に反対の手を重ね、きつく握りしめる。
「掲示板……あれ、あおだよな? 浴衣着たまま男ボコボコにしたのは」
「……」
「何も言わねぇってことはそうなんだな。あおだと思ったから探しに来た。この学校には萩人さんがいるからな」
菖人は葵から視線を移す。
「正解だ。よく俺がこの学校にいるってわかったな」
その視線の先にいたのは萩人だった。
「しゅ……しゅうちゃ…ん」
萩人は弱々しく自分の名前を呼ぶ葵の肩を抱き寄せた。
「来てもらったとこ悪いが、こいつこんな状態だし今日は帰ってくれ」
「……分かりました。失礼します」
「失礼します」
菖人と桃李は名残惜しそうに葵を見つめながら帰って行った。
「大丈夫か?」
葵と共に理事長室に入ると、萩人が心配そうな顔を浮かべた。
「だ…いじょうぶ……」
「ここ座れ。聞き方が悪かったな。あいつらに会ってどうだった?」
萩人は葵をソファーに座らせ、その隣に腰掛けた。
葵の方を向き、真剣な眼差しで問いかける。
その目はしっかりと葵を捕らえていた。
「……なんで、あたしを探してるのか分からない。なんで普通に接してくれるのか分からない」
俯いていた葵は、顔を上げると続けて口を開く。
「ねえ、しゅうちゃん……。あたしはどんな顔をすればよかった?」
「……まあ、あんなことがあったんだ。お前が普通に接することが出来ないのはしょうがねぇ。あいつらはただお前が心配なんだよ。大切な仲間だから。……あんなことがあったとしてもだ」
萩人は弱々しく問いかける葵の頭にそっと手を乗せ、口を開く。
「嘘だ……っ! だって、今も桜玖……目覚ましてないじゃん……ッ! それに、柑太(カンタ)だって、あたしのせいで……もう……」
「あれはお前のせいじゃないだろ? あいつらはお前を守ろうとしただけだ!」
酷く取り乱した葵の手を引いた萩人はそのまま抱き締めた。
背中を子供をあやすかのように叩く萩人。
「え……」
名前を呼ばれ振り向くとそこには銀髪の男がいた。
耳にはたくさんのピアスが付いている。
「あお、やっと会えた」
銀髪の男はそう言うと嬉しそうに笑う。
「菖人……」
その男は──龍華の現総長、奥村菖人 (オクムラ アヤト)だ。
葵が総長をしていた時の副総長。
「菖人、急に居なくなるよ……って葵! 本当にいた……っ!」
メガネをかけた赤髪はまるで化け物を見たかのように驚いていた。
「……え、桃李……」
後から現れたのは龍華の現副総長、杉原橙季(スギハラ トウリ) だ。
「な、なんで……。どうし…て、ここが……わかった…の?」
葵は震える声で必死に問いかける。
震えていたのは声だけではなく、手も同じだった。
それを隠すかのように右手に反対の手を重ね、きつく握りしめる。
「掲示板……あれ、あおだよな? 浴衣着たまま男ボコボコにしたのは」
「……」
「何も言わねぇってことはそうなんだな。あおだと思ったから探しに来た。この学校には萩人さんがいるからな」
菖人は葵から視線を移す。
「正解だ。よく俺がこの学校にいるってわかったな」
その視線の先にいたのは萩人だった。
「しゅ……しゅうちゃ…ん」
萩人は弱々しく自分の名前を呼ぶ葵の肩を抱き寄せた。
「来てもらったとこ悪いが、こいつこんな状態だし今日は帰ってくれ」
「……分かりました。失礼します」
「失礼します」
菖人と桃李は名残惜しそうに葵を見つめながら帰って行った。
「大丈夫か?」
葵と共に理事長室に入ると、萩人が心配そうな顔を浮かべた。
「だ…いじょうぶ……」
「ここ座れ。聞き方が悪かったな。あいつらに会ってどうだった?」
萩人は葵をソファーに座らせ、その隣に腰掛けた。
葵の方を向き、真剣な眼差しで問いかける。
その目はしっかりと葵を捕らえていた。
「……なんで、あたしを探してるのか分からない。なんで普通に接してくれるのか分からない」
俯いていた葵は、顔を上げると続けて口を開く。
「ねえ、しゅうちゃん……。あたしはどんな顔をすればよかった?」
「……まあ、あんなことがあったんだ。お前が普通に接することが出来ないのはしょうがねぇ。あいつらはただお前が心配なんだよ。大切な仲間だから。……あんなことがあったとしてもだ」
萩人は弱々しく問いかける葵の頭にそっと手を乗せ、口を開く。
「嘘だ……っ! だって、今も桜玖……目覚ましてないじゃん……ッ! それに、柑太(カンタ)だって、あたしのせいで……もう……」
「あれはお前のせいじゃないだろ? あいつらはお前を守ろうとしただけだ!」
酷く取り乱した葵の手を引いた萩人はそのまま抱き締めた。
背中を子供をあやすかのように叩く萩人。
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