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第31話 真黒い蛇
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***
葵が辺りを見渡し誰も居ないことを確認した次の瞬間──
「見つけた」
葵達の背後から声が聞こえ振り返ると、そこには路地に顔を出す男がいた。
赤色のバイクに跨る男は先程追ってきた内の1人だ。
「見つけたぞ。場所は──」
男はもう1人の男に連絡を取ると、ヘルメットを外す。
そこには真っ赤な髪の毛に鋭い目の男がいた。
「(黒蛇……ブラックスネークか?)」
葵は男の首筋を見つめる。
ヘルメットを外したことにより、首筋に彫られた真黒い蛇が露わとなった。
「行くぞ」
楓は振り返り男の首筋を見るなり、再びエンジンを吹かす。
「待て。別に取って食おうなんて思ってねぇ。ただ、教えてほしい」
「……」
無言で後ろを振り返る楓。
「お前の後ろにいるのは白狼のお姫様か?」
鋭い目が葵を捉える。
「お前に教えることは何もない」
楓はそう言うと単車を走らせた。
数分走らせるも追ってくる様子はなかった。
楓達が去った後、男がニヤリと怪しい笑みを浮かべていたとは思いも寄らないだろう。
***
「おはよう」
倉庫に到着し、いつもの部屋へ入る葵。
「葵ちゃん大丈夫だった?」
日向は葵を心配そうな顔で見つめた。
「大丈夫って? あれ? いつの間に連絡したの?」
葵は思わず、後ろにいる楓に問いかける。
必死で逃げてきた為、連絡する暇はなかったはずだ。
「してねえ」
「え? じゃあ、日向の大丈夫ってなに?」
「え? 何かあったの?」
葵と日向の頭には疑問符が浮かび上がっているに違いない。
「ブラックスネークの総長と会った。首筋の黒蛇、真っ赤な髪に鋭い目。あいつは間違いなく蛇塚(ヘビヅカ)だ」
楓の言葉に空気が変わったのがわかる。
「大丈夫だった?」
先程とは違い、更に深刻そうな顔を浮かべる日向。
「ああ。ただ、こいつのことお姫様なのかって……」
「葵ちゃんを認識されたってことか」
柚佑は顎に手を当て真剣な顔を見せた。
「葵絶対に誰かと行動しろよ」
いつになく真剣な顔を見せる蓮。
「うん。わかった」
「(みんなの荷物にはなりたくない。だから、いざとなったらあたしが守る……)」
葵はそう心に決めたのだった。
「2人は何やってるの?」
葵はローテーブルに置かれたプリントやノートに視線を移した。
「日向と蓮が夏休みの宿題終わらないって泣きついてきたから見てる」
「泣きついてねぇよ」
「そうだよ! 僕たちは終わらないって相談しただけだよ」
柚佑の言葉を蓮と日向が必死に否定する。
「終わってないのは事実なんだから、頑張って」
葵はそう言うと柚佑の隣に腰掛けた。
柚佑と葵に監視されながら宿題をする日向と蓮。
静かな部屋には日向と蓮が書くシャーペンの音。
そして、楓がパソコンのキーボードを指で弾く音が聞こえていた。
「え……これ、こないだの祭りだ」
楓はそう呟くとパソコンの画面を見つめた。
「祭り?」
柚佑は立ち上がると楓の横からパソコンの画面を覗き込む。
「えーと……浴衣を着た女が男5人を倒した……これって」
柚佑は一瞬考えると葵をチラッと盗み見た。
「(浴衣を着た女が男5人を……ってあたしか。誰かに見られて掲示板とかに書かれたってとこか)」
柚佑の言葉に自分のことが書かれていると知った葵。
慣れているのか、至って冷静だった。
「柚佑知ってんのか?」
「いや……なんでもないです」
楓の問に柚佑は目も合わせず答える。
「(柚佑ありがとう……って白狼が見てるってことはあいつらも見る可能性が……やばい! あいつらなら来てもおかしくない)」
葵は先程までの冷静さを無くし、次第に顔色が悪くなる。
「え、葵ちゃん大丈夫?」
「大丈夫」
心配そうな顔を浮かべる日向に葵は表情を一切変えずに答えた。
葵が辺りを見渡し誰も居ないことを確認した次の瞬間──
「見つけた」
葵達の背後から声が聞こえ振り返ると、そこには路地に顔を出す男がいた。
赤色のバイクに跨る男は先程追ってきた内の1人だ。
「見つけたぞ。場所は──」
男はもう1人の男に連絡を取ると、ヘルメットを外す。
そこには真っ赤な髪の毛に鋭い目の男がいた。
「(黒蛇……ブラックスネークか?)」
葵は男の首筋を見つめる。
ヘルメットを外したことにより、首筋に彫られた真黒い蛇が露わとなった。
「行くぞ」
楓は振り返り男の首筋を見るなり、再びエンジンを吹かす。
「待て。別に取って食おうなんて思ってねぇ。ただ、教えてほしい」
「……」
無言で後ろを振り返る楓。
「お前の後ろにいるのは白狼のお姫様か?」
鋭い目が葵を捉える。
「お前に教えることは何もない」
楓はそう言うと単車を走らせた。
数分走らせるも追ってくる様子はなかった。
楓達が去った後、男がニヤリと怪しい笑みを浮かべていたとは思いも寄らないだろう。
***
「おはよう」
倉庫に到着し、いつもの部屋へ入る葵。
「葵ちゃん大丈夫だった?」
日向は葵を心配そうな顔で見つめた。
「大丈夫って? あれ? いつの間に連絡したの?」
葵は思わず、後ろにいる楓に問いかける。
必死で逃げてきた為、連絡する暇はなかったはずだ。
「してねえ」
「え? じゃあ、日向の大丈夫ってなに?」
「え? 何かあったの?」
葵と日向の頭には疑問符が浮かび上がっているに違いない。
「ブラックスネークの総長と会った。首筋の黒蛇、真っ赤な髪に鋭い目。あいつは間違いなく蛇塚(ヘビヅカ)だ」
楓の言葉に空気が変わったのがわかる。
「大丈夫だった?」
先程とは違い、更に深刻そうな顔を浮かべる日向。
「ああ。ただ、こいつのことお姫様なのかって……」
「葵ちゃんを認識されたってことか」
柚佑は顎に手を当て真剣な顔を見せた。
「葵絶対に誰かと行動しろよ」
いつになく真剣な顔を見せる蓮。
「うん。わかった」
「(みんなの荷物にはなりたくない。だから、いざとなったらあたしが守る……)」
葵はそう心に決めたのだった。
「2人は何やってるの?」
葵はローテーブルに置かれたプリントやノートに視線を移した。
「日向と蓮が夏休みの宿題終わらないって泣きついてきたから見てる」
「泣きついてねぇよ」
「そうだよ! 僕たちは終わらないって相談しただけだよ」
柚佑の言葉を蓮と日向が必死に否定する。
「終わってないのは事実なんだから、頑張って」
葵はそう言うと柚佑の隣に腰掛けた。
柚佑と葵に監視されながら宿題をする日向と蓮。
静かな部屋には日向と蓮が書くシャーペンの音。
そして、楓がパソコンのキーボードを指で弾く音が聞こえていた。
「え……これ、こないだの祭りだ」
楓はそう呟くとパソコンの画面を見つめた。
「祭り?」
柚佑は立ち上がると楓の横からパソコンの画面を覗き込む。
「えーと……浴衣を着た女が男5人を倒した……これって」
柚佑は一瞬考えると葵をチラッと盗み見た。
「(浴衣を着た女が男5人を……ってあたしか。誰かに見られて掲示板とかに書かれたってとこか)」
柚佑の言葉に自分のことが書かれていると知った葵。
慣れているのか、至って冷静だった。
「柚佑知ってんのか?」
「いや……なんでもないです」
楓の問に柚佑は目も合わせず答える。
「(柚佑ありがとう……って白狼が見てるってことはあいつらも見る可能性が……やばい! あいつらなら来てもおかしくない)」
葵は先程までの冷静さを無くし、次第に顔色が悪くなる。
「え、葵ちゃん大丈夫?」
「大丈夫」
心配そうな顔を浮かべる日向に葵は表情を一切変えずに答えた。
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