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第26話 目撃者
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♢♢♢
「……ってことがあって、未だに親とは会ってないんだ」
そう言った柚佑はどこか遠くを見つめていた。
「そうだったんだ。今はどうしてるの?」
「日向の家にお世話になってる。俺と日向が幼なじみなんだ。親同士が仲良くてね。一応、 母親が仕送りしてくれてるみたい」
柚佑が家を出た日の深夜、繁華街で男と肩がぶつかり、揉め合いを起こした。
数人にボコボコにされてた所を助けてくれたのが日向だった。
それから柚佑は日向の家で生活している。
「そっか。何が正解なんて分からないけど、柚佑は間違ってないと思う。柚佑の人生なんだから……。それに、あたしも似たようなことしてる」
「ありがとう。葵ちゃんもやっぱりそうか……。前に西山高の話聞いた時、そんな感じしてた」
「バレてたか……。あの時、柚佑の様子が変だったのは志望校だったからか」
「うん、俺たち親の言う通りに生きてたら同じ学校だったんだね」
柚佑は悲しげに笑う。
「そうだね。柚佑は後悔してる? 西山高校行かなかったこと」
「高校自体は興味深かったからね。でもここに来てよかったって思ってる」
「なら良かった」
「聞いてくれてありがとう。じゃあ行こっか」
石段から立ち上がった柚佑の顔は自然な笑みを浮かべていた。
「うん」
花火が終わってから数分たった今、メイン通りに人はほとんどいない。
「あ、やっときた! 柚佑遅いよ!」
祭りの入口に佇む人影。
そのうちの1人が手を挙げていた。
「日向ごめん。葵ちゃんと花火見てた」
「いいなー。僕も葵ちゃんと花火見たかったのに……けど、見つかってよかった。おかえり」
日向は満面の笑みで葵を迎えた。
「た、ただいま」
葵もまた笑みを浮かべた。
***
祭りから数日後──
「菖人(アヤト)これどう思う?」
「隣町か……浴衣を着た女に男5人がやられたのか。気になるな」
とある倉庫の一室、ローテーブルの上でパソコンを操作する男とそれを覗き込む1人の男がいた。
パソコンを覗き込んでいたのは菖人と呼ばれた男。
菖人は顎に右手を添え、真剣な眼差しでパソコンを見つめる。
「菖人さん!」
「どうした? 桔平(キッペイ)」
突然ドアが開き、桔平と呼ばれた青髪の男が部屋に入ってきた。
「あのっ! あ……こ、これです」
部屋に入った瞬間視界に入ったであろうパソコンの画面を指さす桔平。
「これ?」
「はい。この掲示板に書かれてる事を俺の友達が見ていたそうです。その姿はまるで……桜が舞うように戦っていたそうです」
「……舞桜」
菖人が呟いた言葉は静まり返った部屋に悲しく響き渡った。
「……ってことがあって、未だに親とは会ってないんだ」
そう言った柚佑はどこか遠くを見つめていた。
「そうだったんだ。今はどうしてるの?」
「日向の家にお世話になってる。俺と日向が幼なじみなんだ。親同士が仲良くてね。一応、 母親が仕送りしてくれてるみたい」
柚佑が家を出た日の深夜、繁華街で男と肩がぶつかり、揉め合いを起こした。
数人にボコボコにされてた所を助けてくれたのが日向だった。
それから柚佑は日向の家で生活している。
「そっか。何が正解なんて分からないけど、柚佑は間違ってないと思う。柚佑の人生なんだから……。それに、あたしも似たようなことしてる」
「ありがとう。葵ちゃんもやっぱりそうか……。前に西山高の話聞いた時、そんな感じしてた」
「バレてたか……。あの時、柚佑の様子が変だったのは志望校だったからか」
「うん、俺たち親の言う通りに生きてたら同じ学校だったんだね」
柚佑は悲しげに笑う。
「そうだね。柚佑は後悔してる? 西山高校行かなかったこと」
「高校自体は興味深かったからね。でもここに来てよかったって思ってる」
「なら良かった」
「聞いてくれてありがとう。じゃあ行こっか」
石段から立ち上がった柚佑の顔は自然な笑みを浮かべていた。
「うん」
花火が終わってから数分たった今、メイン通りに人はほとんどいない。
「あ、やっときた! 柚佑遅いよ!」
祭りの入口に佇む人影。
そのうちの1人が手を挙げていた。
「日向ごめん。葵ちゃんと花火見てた」
「いいなー。僕も葵ちゃんと花火見たかったのに……けど、見つかってよかった。おかえり」
日向は満面の笑みで葵を迎えた。
「た、ただいま」
葵もまた笑みを浮かべた。
***
祭りから数日後──
「菖人(アヤト)これどう思う?」
「隣町か……浴衣を着た女に男5人がやられたのか。気になるな」
とある倉庫の一室、ローテーブルの上でパソコンを操作する男とそれを覗き込む1人の男がいた。
パソコンを覗き込んでいたのは菖人と呼ばれた男。
菖人は顎に右手を添え、真剣な眼差しでパソコンを見つめる。
「菖人さん!」
「どうした? 桔平(キッペイ)」
突然ドアが開き、桔平と呼ばれた青髪の男が部屋に入ってきた。
「あのっ! あ……こ、これです」
部屋に入った瞬間視界に入ったであろうパソコンの画面を指さす桔平。
「これ?」
「はい。この掲示板に書かれてる事を俺の友達が見ていたそうです。その姿はまるで……桜が舞うように戦っていたそうです」
「……舞桜」
菖人が呟いた言葉は静まり返った部屋に悲しく響き渡った。
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