舞桜~龍華10代目総長~

織山青沙

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第23話 綿あめと蓮

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一行は再びメイン通りに戻り、夕飯を買いに屋台を周り始めた。

「お、綿あめだ」

歩いていると、蓮はふと、足を止めた。

それは綿あめの屋台だった。

「うまそう……おっちゃん1つちょうだい」
「あいよ! 300円ね」
「はい、300円」

蓮は300円を財布から取り出すとおじさんに手渡す。

綿あめ機の中でおじさんが割り箸を回すと雲がまとわりついていく。

それは、あっという間にまん丸い綿あめとなった。

「はいよ」
「ありがとう」

おじさんから綿あめを受け取った蓮は顔を近づけ思いっきり鼻から息を吸い匂いを堪能していた。

「いい匂い……うめぇ」

蓮は1人綿あめを美味しそうに食べていた。

「蓮って甘いもの苦手じゃなかった?」
「綿あめは別だ。食うか?」
「いいの? ありがとう」

葵はそう言うと、割り箸を持つ蓮の手に自分の手を重ね、引き寄せる。

そして、そのまま綿あめにかぶりついた。

「美味し」
「……っ! 近いんだよ! そのまま食うやつがあるか!」

蓮は耳まで真っ赤にしながら1人ドシドシと足音を立てながら先を急いだ。

「あ、行っちゃった」
「葵ちゃん、今の無自覚?」

後ろから今の様子を見ていた柚佑は葵に問いかける。

「無自覚って? 普通じゃないの?」
「普通か……蓮もかわいそうに」
柚佑は先を歩く蓮に哀れみの眼差しを向けた。


買い出しを済ませた一行は石段の上に蓮、日向、葵、柚佑、楓、竜の順に並んで座り食べ始める。

「うんめぇー!」

蓮はお好み焼きを美味しそうにかぶりついていた。

そして、酎ハイで流し込む。

「屋台の料理ってなんでこんなに美味しんだろうね」

日向はオム焼きそばを1口食べると屋台を見渡していた。

「おいし」

葵はオム焼きそばを夢中で食べていた。

楓と竜はというと、缶ビール片手に無言でたこ焼きを口に頬張っていた。

「そういえば、葵ちゃん祭り乗り気じゃなかったよね? 楽しい?」

葵の隣に座る日向が小首を傾げる。

「楽しいよ。祭りなんて久々に来たから……今日はありがとう」
「それならよかった」
「なんで乗り気じゃなかったんだよ。祭り楽しいのに」

蓮は拗ねたような声をだす。

「それは……」
「(龍華の連中があたしを探してるからあんまり外に出ないようにしようと思ってた。なんて言えないしな……)」
「あ、そろそろ花火の時間だ」

柚佑は腕時計を見ながら呟いた。

「ほんとだ! 花火は毎年とっておきの場所で見てるから行こう!」

食べたゴミを捨て終えると、日向を先頭に歩きだす。

それは人の流れとは逆方向に。

「(いたっ……)」

葵は誰かと肩がぶつかりよろけた。


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