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第18話 お祭り
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ドアの前に立ち尽くす葵。
杏佳に着付けられた浴衣は紺色の生地に大きな白い薔薇がいたる所に散りばめられていた。
真っ赤な帯がよく似合う。
「葵ちゃん可愛い!」
「ま、孫にも衣装ってやつだな」
「似合ってるね」
「いいんじゃね」
「……女だ」
日向、蓮、柚佑、竜、楓が葵を見るなり口を開いた。
楓の言う"女だ"はきっと女らしいという意味だと思うが、それは本人にしか分からない。
「で、どこ行くの」
葵は恥ずかしさからか、ぶっきらぼうに問いかける。
「喜べ、祭りだ!」
「やったー!」
蓮の言葉に喜んだのは日向、ただ1人だけだった。
「さ、行くぞ」
蓮の言葉で皆、立ち上がり部屋を出る。
祭り会場までは、凌の運転する車で向かった。
会場の手前辺りで停車した車、黒のベンツとなればやはり目立つようで、祭りにきた人達の視線が刺さる。
「よし、着いたか!」
蓮は嬉しそうに車を降りていく。
「ありがとう」
葵はミラー越しで凌に視線を合わせると礼を告げた。
他、4人が降りたのを確認すると凌は車を走らせる。
杏佳は葵の着付けだけをしに来たようで、それが済むなり、そそくさと帰って行ったようだ。
「ねえ、なんであたしだけ浴衣? みんな私服なら着替えなくてもよかったじゃん」
葵は隣に立つ蓮に声をかけた。
恥ずかしさからか、その声はどこか照れくささを感じる。
祭りにはたくさんの人が行き交いガヤガヤと五月蝿ささえ感じさせた。
「なんだって?」
葵の声は周りにかき消され蓮の耳に届いていなかったようだ。
蓮は腰を曲げ葵に耳を近づける。
「だからっ! なんであたしだけ浴衣なの!」
「そりゃー祭りには華がないとな! 行くぞ!」
蓮はそれだけ言うと1人、先に歩き始めた。
「(華ってなんだよ……あたしが着飾った所で華にはならないだろ。それにしても下駄は歩きにくいな……)」
「大丈夫?」
「大丈夫。歩きにくいだけ。柚佑達は歩きやすそうだね」
心配そうな顔を浮かべる柚佑に葵は嫌味っぽく言い放つ。
「靴だからね。よかったら掴まる?」
「自分で歩けるから大丈夫」
柚佑が差し出した腕を無視し、葵はペースを上げ歩き出す。
人混みをかき分け、蓮の後へ続いていく。
「うわっ!」
「大丈夫?」
「ありがと……」
人と接触し、バランスを崩した葵を支えたのは柚佑だった。
「(あの野郎、ぶつかっといて謝りもしねぇのかよ……)」
葵はぶつかってきた男を睨みつけた。
「だから言ったじゃん。歩きにくいんだから掴まってなって」
柚佑は葵の顔を見るなり、噴き出し少し声を立てて笑った。
「……ありがと」
葵は差し出された柚佑の腕に遠慮がちに自分の手を乗せた。
「ねえ、さっきの笑い方の方があたしは好きだよ。人間味があって」
「なんか一言余計な気はするけど、ありがとう」
そう言って笑った柚佑。
それはいつもの貼り付けた笑顔に戻っていた。
杏佳に着付けられた浴衣は紺色の生地に大きな白い薔薇がいたる所に散りばめられていた。
真っ赤な帯がよく似合う。
「葵ちゃん可愛い!」
「ま、孫にも衣装ってやつだな」
「似合ってるね」
「いいんじゃね」
「……女だ」
日向、蓮、柚佑、竜、楓が葵を見るなり口を開いた。
楓の言う"女だ"はきっと女らしいという意味だと思うが、それは本人にしか分からない。
「で、どこ行くの」
葵は恥ずかしさからか、ぶっきらぼうに問いかける。
「喜べ、祭りだ!」
「やったー!」
蓮の言葉に喜んだのは日向、ただ1人だけだった。
「さ、行くぞ」
蓮の言葉で皆、立ち上がり部屋を出る。
祭り会場までは、凌の運転する車で向かった。
会場の手前辺りで停車した車、黒のベンツとなればやはり目立つようで、祭りにきた人達の視線が刺さる。
「よし、着いたか!」
蓮は嬉しそうに車を降りていく。
「ありがとう」
葵はミラー越しで凌に視線を合わせると礼を告げた。
他、4人が降りたのを確認すると凌は車を走らせる。
杏佳は葵の着付けだけをしに来たようで、それが済むなり、そそくさと帰って行ったようだ。
「ねえ、なんであたしだけ浴衣? みんな私服なら着替えなくてもよかったじゃん」
葵は隣に立つ蓮に声をかけた。
恥ずかしさからか、その声はどこか照れくささを感じる。
祭りにはたくさんの人が行き交いガヤガヤと五月蝿ささえ感じさせた。
「なんだって?」
葵の声は周りにかき消され蓮の耳に届いていなかったようだ。
蓮は腰を曲げ葵に耳を近づける。
「だからっ! なんであたしだけ浴衣なの!」
「そりゃー祭りには華がないとな! 行くぞ!」
蓮はそれだけ言うと1人、先に歩き始めた。
「(華ってなんだよ……あたしが着飾った所で華にはならないだろ。それにしても下駄は歩きにくいな……)」
「大丈夫?」
「大丈夫。歩きにくいだけ。柚佑達は歩きやすそうだね」
心配そうな顔を浮かべる柚佑に葵は嫌味っぽく言い放つ。
「靴だからね。よかったら掴まる?」
「自分で歩けるから大丈夫」
柚佑が差し出した腕を無視し、葵はペースを上げ歩き出す。
人混みをかき分け、蓮の後へ続いていく。
「うわっ!」
「大丈夫?」
「ありがと……」
人と接触し、バランスを崩した葵を支えたのは柚佑だった。
「(あの野郎、ぶつかっといて謝りもしねぇのかよ……)」
葵はぶつかってきた男を睨みつけた。
「だから言ったじゃん。歩きにくいんだから掴まってなって」
柚佑は葵の顔を見るなり、噴き出し少し声を立てて笑った。
「……ありがと」
葵は差し出された柚佑の腕に遠慮がちに自分の手を乗せた。
「ねえ、さっきの笑い方の方があたしは好きだよ。人間味があって」
「なんか一言余計な気はするけど、ありがとう」
そう言って笑った柚佑。
それはいつもの貼り付けた笑顔に戻っていた。
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