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第13話 パンケーキ
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「竜は料理どこで習ったの?」
「居候先」
「そうなんだ。じゃあそこの人は料理上手だったんだ」
「……何も聞かねぇの?」
竜は眉をピクっと動かすとボソッと呟く。
「だって出会ってまだ1週間だよ。そんなずけずけ聞けないし、誰でも言いたくないこともあるだろうしさ」
葵はそう言うと影を落とした。
「(あたしだって言えないことだらけだ)」
「居候してた所、白狼元総長の家」
「へえ。昔からの知り合い?」
「いや、俺が荒れてた時に救ってくれた人。今でも世話になってる」
「そっか。いい人に出会えてよかったね」
「ああ」
決して笑みを浮かべている訳ではないが、その表情は少し柔らかくなっていた。
「そういえば、日向と葵はどこ行ってたの?」
柚佑の言葉に固まる葵。
「(これ、言ったら楓へそ曲げちゃうんじゃないの?)」
「えっとね、パンケーキ食べてきたよ!」
そう笑顔で言ってのけたのは日向だった。
「は?」
日向の言葉に反応したのはやはり、楓だ。
「(ほら、やっぱり)」
葵は憐れむような目で楓を見つめた。
「見てくださいよ。すっごい美味しかったんですよ」
先程、カフェで葵に見せたのと同じいたずらっ子のような笑みを浮かべた日向は、携帯で撮影した写真を見せびらかした。
「俺が最初に見つけたのに……」
写真を見ただけでそこがどこかなのか分かった楓は悔しそうな表情を浮かべる。
「楓さんも行ったらいいじゃないですか?」
日向の言葉に顔を上げ辺りを見渡す楓。
だが、その部屋にいる誰一人とも目が合わない。
いや、皆目を伏せ、会わないように必死だった。
白狼幹部以上で甘いものが好きなのは日向と楓だけ。あとは皆苦手なのだ。
だから、道ずれにされないよう必死だ。
「(やばっ! 目合ったけど、女嫌いだし大丈夫だろうな)」
唯一、目が合ったのは楓が苦手な"女"、葵だ。
「甘いものは好きか?」
口を開いた楓の目はしっかりと葵の目をとらえていた。
「へ? あ……うん」
「しょうがね、今度行くぞ」
「えーと、あたしと楓がこのお店に行くってことでOK?」
「他に何がある?」
「いや、日向と行けばいいじゃん。女嫌いなんだから、あたしと行かなくてもいいんじゃない?」
「洒落た店に野郎2人で行けるわけねぇだろ」
楓は日向を一瞬だけ視界にいれると元に戻した。
「……それは、うん。あたしが悪かったです」
「行く、行かない?」
「別に行ってもいいけど」
「(パンケーキすごい美味しかったし、他のも食べてみたかったんだよね)」
お店のメニューを思い起こした葵は嬉しそうに微笑む。
「なんで上から目線なんだよ。じゃあ、また言う」
そんなこんなで、何故か葵は楓でとカフェに行く約束を交わしたのだった。
「居候先」
「そうなんだ。じゃあそこの人は料理上手だったんだ」
「……何も聞かねぇの?」
竜は眉をピクっと動かすとボソッと呟く。
「だって出会ってまだ1週間だよ。そんなずけずけ聞けないし、誰でも言いたくないこともあるだろうしさ」
葵はそう言うと影を落とした。
「(あたしだって言えないことだらけだ)」
「居候してた所、白狼元総長の家」
「へえ。昔からの知り合い?」
「いや、俺が荒れてた時に救ってくれた人。今でも世話になってる」
「そっか。いい人に出会えてよかったね」
「ああ」
決して笑みを浮かべている訳ではないが、その表情は少し柔らかくなっていた。
「そういえば、日向と葵はどこ行ってたの?」
柚佑の言葉に固まる葵。
「(これ、言ったら楓へそ曲げちゃうんじゃないの?)」
「えっとね、パンケーキ食べてきたよ!」
そう笑顔で言ってのけたのは日向だった。
「は?」
日向の言葉に反応したのはやはり、楓だ。
「(ほら、やっぱり)」
葵は憐れむような目で楓を見つめた。
「見てくださいよ。すっごい美味しかったんですよ」
先程、カフェで葵に見せたのと同じいたずらっ子のような笑みを浮かべた日向は、携帯で撮影した写真を見せびらかした。
「俺が最初に見つけたのに……」
写真を見ただけでそこがどこかなのか分かった楓は悔しそうな表情を浮かべる。
「楓さんも行ったらいいじゃないですか?」
日向の言葉に顔を上げ辺りを見渡す楓。
だが、その部屋にいる誰一人とも目が合わない。
いや、皆目を伏せ、会わないように必死だった。
白狼幹部以上で甘いものが好きなのは日向と楓だけ。あとは皆苦手なのだ。
だから、道ずれにされないよう必死だ。
「(やばっ! 目合ったけど、女嫌いだし大丈夫だろうな)」
唯一、目が合ったのは楓が苦手な"女"、葵だ。
「甘いものは好きか?」
口を開いた楓の目はしっかりと葵の目をとらえていた。
「へ? あ……うん」
「しょうがね、今度行くぞ」
「えーと、あたしと楓がこのお店に行くってことでOK?」
「他に何がある?」
「いや、日向と行けばいいじゃん。女嫌いなんだから、あたしと行かなくてもいいんじゃない?」
「洒落た店に野郎2人で行けるわけねぇだろ」
楓は日向を一瞬だけ視界にいれると元に戻した。
「……それは、うん。あたしが悪かったです」
「行く、行かない?」
「別に行ってもいいけど」
「(パンケーキすごい美味しかったし、他のも食べてみたかったんだよね)」
お店のメニューを思い起こした葵は嬉しそうに微笑む。
「なんで上から目線なんだよ。じゃあ、また言う」
そんなこんなで、何故か葵は楓でとカフェに行く約束を交わしたのだった。
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