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第12話 仲間
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倉庫に到着するなり、日向はどこかへ電話をかけた。
「もしもし、OKだよ」
「(電話? 誰に掛けてるんだろ?)」
日向は葵から離れ、小声で話していた為、電話の内容は葵の耳には届かなかった。
「それじゃあ、行こっか」
「うん」
いつものように階段を上がった先の部屋へと向かう。
「葵ちゃん、開けていいよ」
「なにかあるの?」
「いいから、いいから」
日向に言われるがまま、葵はドアを手前に引いた。
「わっ!」
ドアを開けると小さな破裂音と共にカラフルな紙切れのような物が飛んできた。
「な、なにこれ……」
部屋に入るとそこには──
デーブの上には美味しそうなお肉やサラダ。
壁には"ようこそ、葵"と画用紙に書かれたものが貼り付けられていた。
「歓迎会」
竜はボソッと呟く。
「それは書いてあるから分かるけど……何で歓迎会?」
「俺らに守られるんだ。仲間みたいなもんだろ? 毎日来るわけだし、だから歓迎会」
蓮はどこか恥ずかしそうに頭をかきながらそう説明した。
「仲間……あたしが仲間でもいいの? お荷物じゃない?」
「荷物じゃねぇ。気にすんな」
葵の問いにぶっきらぼうに答える竜。
「ありがとう」
そして、嬉しそうに笑みを浮かべる葵。
その笑顔に男共の顔が赤くなったことを葵は知る由もなかった。
「(仲間なんてもういらないって思ってたけど、実際言われると嬉しいな。みんなになんかあった時はあたしが絶対に助けるからね)」
と、葵は心に決めたのだった。
「よーし! 食うぞ!」
蓮は嬉しそうに取り皿に料理を乗せ、配り分けた。
「ありがとう」
「おう! 温かいうちに食えよ」
「うん……っ! 美味しい!」
渡された料理を口にした葵はあまりの美味しさに驚いた。
「これどうしたの?」
「竜さんが作った」
「え……?」
蓮の言葉に葵は数回瞬きをし、意外そうな顔を浮かべた。
「うるせぇ」
「まだ何も言ってない」
「視線がうぜぇ」
「ごめん。竜が作ったの? お店出せそうな味なんだけど。すごっ!」
「……」
葵の言葉に竜はそっぽを向く。
「竜、もしかして照れてる? 可愛い」
「……お前うざい」
しつこくし過ぎたのか、竜は葵を思いっきり睨みつけた。
「(そんなに睨まれても怖くないんだよなー。まあ、殺気はそんなに出てないし、そこまで怒ってはなさそうだな)」
そんな竜の睨みに葵は嬉しそうに口角を上げた。
「葵大丈夫か?」
「何が?」
「いや、竜さんに睨まれて笑ってる奴初めて見たんだけど」
「そう? 普通じゃない?」
葵の言葉にそこに居た、竜以外はこう思っただろう。
"普通じゃない"と──
男でも竜に睨まれれば怖くて動けなくなるほどだ。
それに対して笑えるこの女は一体何者なんだと思っているに違いない。
倉庫に到着するなり、日向はどこかへ電話をかけた。
「もしもし、OKだよ」
「(電話? 誰に掛けてるんだろ?)」
日向は葵から離れ、小声で話していた為、電話の内容は葵の耳には届かなかった。
「それじゃあ、行こっか」
「うん」
いつものように階段を上がった先の部屋へと向かう。
「葵ちゃん、開けていいよ」
「なにかあるの?」
「いいから、いいから」
日向に言われるがまま、葵はドアを手前に引いた。
「わっ!」
ドアを開けると小さな破裂音と共にカラフルな紙切れのような物が飛んできた。
「な、なにこれ……」
部屋に入るとそこには──
デーブの上には美味しそうなお肉やサラダ。
壁には"ようこそ、葵"と画用紙に書かれたものが貼り付けられていた。
「歓迎会」
竜はボソッと呟く。
「それは書いてあるから分かるけど……何で歓迎会?」
「俺らに守られるんだ。仲間みたいなもんだろ? 毎日来るわけだし、だから歓迎会」
蓮はどこか恥ずかしそうに頭をかきながらそう説明した。
「仲間……あたしが仲間でもいいの? お荷物じゃない?」
「荷物じゃねぇ。気にすんな」
葵の問いにぶっきらぼうに答える竜。
「ありがとう」
そして、嬉しそうに笑みを浮かべる葵。
その笑顔に男共の顔が赤くなったことを葵は知る由もなかった。
「(仲間なんてもういらないって思ってたけど、実際言われると嬉しいな。みんなになんかあった時はあたしが絶対に助けるからね)」
と、葵は心に決めたのだった。
「よーし! 食うぞ!」
蓮は嬉しそうに取り皿に料理を乗せ、配り分けた。
「ありがとう」
「おう! 温かいうちに食えよ」
「うん……っ! 美味しい!」
渡された料理を口にした葵はあまりの美味しさに驚いた。
「これどうしたの?」
「竜さんが作った」
「え……?」
蓮の言葉に葵は数回瞬きをし、意外そうな顔を浮かべた。
「うるせぇ」
「まだ何も言ってない」
「視線がうぜぇ」
「ごめん。竜が作ったの? お店出せそうな味なんだけど。すごっ!」
「……」
葵の言葉に竜はそっぽを向く。
「竜、もしかして照れてる? 可愛い」
「……お前うざい」
しつこくし過ぎたのか、竜は葵を思いっきり睨みつけた。
「(そんなに睨まれても怖くないんだよなー。まあ、殺気はそんなに出てないし、そこまで怒ってはなさそうだな)」
そんな竜の睨みに葵は嬉しそうに口角を上げた。
「葵大丈夫か?」
「何が?」
「いや、竜さんに睨まれて笑ってる奴初めて見たんだけど」
「そう? 普通じゃない?」
葵の言葉にそこに居た、竜以外はこう思っただろう。
"普通じゃない"と──
男でも竜に睨まれれば怖くて動けなくなるほどだ。
それに対して笑えるこの女は一体何者なんだと思っているに違いない。
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