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第8話 守られてればいいんだよ
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「さっき、勝手に帰ろうとしただろ?」
階段を降りると蓮が口を開く。
「うん」
「(こっちの方は来たことあるし、全然帰れるからな)」
階段を降りた通路には先程までいなかった下っ端が数名座り込んでいた。
彼らは蓮を見るなり立ち上がり深くお辞儀をする。
だが、その後ろを歩く葵を見て驚く。
通路を抜けると、カラフルなバイクが並ぶ。その中に一際目立つ5台の単車があった。
蓮は一台の単車の横に立つとエンジンをかけた。
「一人で帰ってみろ。そこでなんかあったら俺たちが守る意味ねぇだろ?
だからどっか出かける時は俺らと一緒に行動な」
「毎日送り迎えしなくていい。言ったでしょ? 自分の身くらい自分で守れるって」
「葵さ、俺の話聞いてた? 勝手に一人で行動して何かあったら俺らが困る。
だからお前は俺らに守られてればいいんだよ」
蓮はエンジンの音にかき消されないよう声を張り、ヘルメットを葵の頭に被せる。
「……守られるか……」
「ん? なんか言ったか?」
葵の呟きはエンジンによってかき消され、蓮の耳に届くことはなかった。
「何でもない。わかった、これからよろしく」
「おう! あ、乗れるか?」
「大丈夫」
葵は蓮が自分を持ち上げようとしたが、それを断り軽やかにバイクに跨った。
「すげぇな。乗ったことあんのか?」
「……まあ、知り合いのに数回」
「(後ろに乗るのは数回だから嘘は言ってない。自分では毎日走らせてたけど、乗るの久しぶりだな)」
葵が心の中で言っていた、後ろに乗るのが数回とは、まだ葵が総長になる前の出来事。
あれから3年は経つだろうか。
総長になってからは毎日のように単車を走らせていた。
「へえ。じゃあちゃんと掴まっとけよ。道案内よろしく」
蓮はヘルメットを被るとバイクに跨りエンジンをふかすと、大きな車体を走らせた。
「わかった。とりあえず高校まで戻って」
「ちゃんと掴まれ。手出せ」
走りながら蓮は後ろに手を差し出す。
「大丈夫。落ちないから」
「そういう問題じゃねぇ。絶対はないだろ? だからちゃんと俺に掴まれ」
「うん」
葵は渋々、車体を掴んでいた手を離すと蓮の腰あたりに手を回した。
「ちゃんと掴んでろよ」
蓮は腰あたりに回ってきた手をきっちりとお腹に当てた。
***
「着いたぞ」
「ありがとう」
単車はとあるタワーマンションの前に停まった。
「何階?」
「1番上」
「すっげぇ。あ、連絡先教えろ。
明日の朝も迎え来るから」
「あ、うん」
連絡先を交換した蓮と葵。
「じゃあ。ありがとう」
「また明日な」
蓮は葵が見えなくなるのを確認すると再び単車を走らせ元来た道を戻って行った。
***
「ただいま……」
部屋に入るなりそう口を開く葵。
だが、部屋は静まり返り葵の言葉は儚く消えた。
「まあ、誰も居ないけど。つい言っちゃうんだよな」
葵の家はここらでは珍しいタワーマンション。
その最上階のとある一角が葵の家だ。
そこは2LDKと一人で暮らすには十分すぎる部屋になっている。
リビングのソファーに座ると大きく伸びをした。
「疲れたー! 親御さんが心配か……別に心配する人もいないし何時に帰っても構わなかったんだけどな」
葵の両親は海外で仕事をしている。
この家は祖父が葵の為に買い与えてくれたもの。
「これから毎日あいつらに送り迎えされるのか……まさか、あたしが守られる立場になるなんてな。あいつらが知ったらきっと笑うだろうな」
仲間を守る側から、守られる立場に──
「もう喧嘩はしないって決めたからちょうどいいかな……」
その言葉は静かな部屋に悲しく響き渡った。
階段を降りると蓮が口を開く。
「うん」
「(こっちの方は来たことあるし、全然帰れるからな)」
階段を降りた通路には先程までいなかった下っ端が数名座り込んでいた。
彼らは蓮を見るなり立ち上がり深くお辞儀をする。
だが、その後ろを歩く葵を見て驚く。
通路を抜けると、カラフルなバイクが並ぶ。その中に一際目立つ5台の単車があった。
蓮は一台の単車の横に立つとエンジンをかけた。
「一人で帰ってみろ。そこでなんかあったら俺たちが守る意味ねぇだろ?
だからどっか出かける時は俺らと一緒に行動な」
「毎日送り迎えしなくていい。言ったでしょ? 自分の身くらい自分で守れるって」
「葵さ、俺の話聞いてた? 勝手に一人で行動して何かあったら俺らが困る。
だからお前は俺らに守られてればいいんだよ」
蓮はエンジンの音にかき消されないよう声を張り、ヘルメットを葵の頭に被せる。
「……守られるか……」
「ん? なんか言ったか?」
葵の呟きはエンジンによってかき消され、蓮の耳に届くことはなかった。
「何でもない。わかった、これからよろしく」
「おう! あ、乗れるか?」
「大丈夫」
葵は蓮が自分を持ち上げようとしたが、それを断り軽やかにバイクに跨った。
「すげぇな。乗ったことあんのか?」
「……まあ、知り合いのに数回」
「(後ろに乗るのは数回だから嘘は言ってない。自分では毎日走らせてたけど、乗るの久しぶりだな)」
葵が心の中で言っていた、後ろに乗るのが数回とは、まだ葵が総長になる前の出来事。
あれから3年は経つだろうか。
総長になってからは毎日のように単車を走らせていた。
「へえ。じゃあちゃんと掴まっとけよ。道案内よろしく」
蓮はヘルメットを被るとバイクに跨りエンジンをふかすと、大きな車体を走らせた。
「わかった。とりあえず高校まで戻って」
「ちゃんと掴まれ。手出せ」
走りながら蓮は後ろに手を差し出す。
「大丈夫。落ちないから」
「そういう問題じゃねぇ。絶対はないだろ? だからちゃんと俺に掴まれ」
「うん」
葵は渋々、車体を掴んでいた手を離すと蓮の腰あたりに手を回した。
「ちゃんと掴んでろよ」
蓮は腰あたりに回ってきた手をきっちりとお腹に当てた。
***
「着いたぞ」
「ありがとう」
単車はとあるタワーマンションの前に停まった。
「何階?」
「1番上」
「すっげぇ。あ、連絡先教えろ。
明日の朝も迎え来るから」
「あ、うん」
連絡先を交換した蓮と葵。
「じゃあ。ありがとう」
「また明日な」
蓮は葵が見えなくなるのを確認すると再び単車を走らせ元来た道を戻って行った。
***
「ただいま……」
部屋に入るなりそう口を開く葵。
だが、部屋は静まり返り葵の言葉は儚く消えた。
「まあ、誰も居ないけど。つい言っちゃうんだよな」
葵の家はここらでは珍しいタワーマンション。
その最上階のとある一角が葵の家だ。
そこは2LDKと一人で暮らすには十分すぎる部屋になっている。
リビングのソファーに座ると大きく伸びをした。
「疲れたー! 親御さんが心配か……別に心配する人もいないし何時に帰っても構わなかったんだけどな」
葵の両親は海外で仕事をしている。
この家は祖父が葵の為に買い与えてくれたもの。
「これから毎日あいつらに送り迎えされるのか……まさか、あたしが守られる立場になるなんてな。あいつらが知ったらきっと笑うだろうな」
仲間を守る側から、守られる立場に──
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