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第4話 舞桜の正体
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「え、萩人さんはなんで葵が総長だったこと知ってたんすか?」
柊真は口に押し込まれた唐揚げをようやく飲み込むと口を開く。
「あー辞めた後もちょいちょい倉庫に顔出してたし、こいつ去年まで家にいたしな……」
萩人はそう言うと悲しそうに影を落とした。
葵はあることが理由で家出をした。
その時に出会ったのが萩人だ──
「そういえば、中学1年の時から柊真さんの所に居ましたね。
元々喧嘩強いなとは思ってたけど、まさか総長になってたとはな……え、じゃあ舞桜ってまさか──」
柊真は驚きからか目を大きく見開く。
「うん、あたしだよ。桜が舞うように戦うからって皆がそう呼んでた」
「すっげー。男って噂あったから、まさか葵だとは思わなかった」
「男?」
柊真の言葉に葵は首を傾げる。
「舞桜は強すぎるし、戦う姿がかっこいい男って噂になってたよ」
「へえ。まあ、喧嘩する時は顔を見られたくなくてフード被ってたから男って見られたのかもな……」
「それじゃあ男に思われるかもな」
柊真は葵の言葉に納得していた。
葵は15歳という最年少で龍華の総長となり、16歳の時、龍華は全国1の族となった──
薬やレイプなどやっている暴走族を手当り次第に潰していった。
そんな龍華に誰もが憧れを持っていた。
だが、舞桜の正体は龍華の仲間でさえ幹部以上しか知る者はいなかった。
龍華は葵にとって心地よくて、自分の居場所だった。
あんな事が起きるまでは──
***
「じゃあ、そろそろ行くね」
昼休みが終わり葵は理事長室を後にした。
「あー! 葵ちゃんいた! どこ行ってたの? 探したんだよ」
教室に入り、葵の姿が見えると日向が声を上げた。
「どこってお昼食べてた」
「そうだったんだ。あ、放課後空いてる?」
「何もないけど……」
「りょーかい」
「(なんだろ? どっか行くのか。家に帰りたいんだけどな)」
葵は誰にもバレないよう小さくため息をついた。
***
──そして、放課後。
「はい、葵ちゃん行くよー」
席を立ち教室を出ようとした葵を日向と柚佑に両腕を掴まれた。
「ちょっと、なにすんのよ!」
日向と柚佑は葵の言葉に聞く耳を持たなかった。
そのまま3階から1階まで降りた……いや、降ろされたというべきだろうか。
その3人の後ろを蓮は付いて歩いていた。
「はい、靴履き替えてね。逃げちゃだめだよ」
日向は下駄箱から葵のロファーを取り出し、履き替えるよう促した。
「逃げないから……離して」
「じゃあ、こっちは離してあげる」
柚佑そう言うと葵右腕を掴んでいた手を緩め笑っていた。
「おい、行くぞ」
後から着いてきた蓮は既に履き替えており、早くしろと言わんばかりに校門を指さした。
「あ、やばい」
何かに気づいた日向が声を上げ素早く自分の靴も履き替えると再び葵の両腕はがっちりガードされ、校門まで連れて行かれた。
校門の前に横付けされた黒のベンツ。
蓮がドアを開け日向と柚佑に押し込まれる形で車に乗せられた。
「(これってもう誘拐みたいじゃん。
そんな強引に連れてかなくても何か言ってくれればいいのに……あっやばい)」
ふと、前を向くとバックミラー越しに運転席に座るスキンヘッドの男が視界に入った。
柊真は口に押し込まれた唐揚げをようやく飲み込むと口を開く。
「あー辞めた後もちょいちょい倉庫に顔出してたし、こいつ去年まで家にいたしな……」
萩人はそう言うと悲しそうに影を落とした。
葵はあることが理由で家出をした。
その時に出会ったのが萩人だ──
「そういえば、中学1年の時から柊真さんの所に居ましたね。
元々喧嘩強いなとは思ってたけど、まさか総長になってたとはな……え、じゃあ舞桜ってまさか──」
柊真は驚きからか目を大きく見開く。
「うん、あたしだよ。桜が舞うように戦うからって皆がそう呼んでた」
「すっげー。男って噂あったから、まさか葵だとは思わなかった」
「男?」
柊真の言葉に葵は首を傾げる。
「舞桜は強すぎるし、戦う姿がかっこいい男って噂になってたよ」
「へえ。まあ、喧嘩する時は顔を見られたくなくてフード被ってたから男って見られたのかもな……」
「それじゃあ男に思われるかもな」
柊真は葵の言葉に納得していた。
葵は15歳という最年少で龍華の総長となり、16歳の時、龍華は全国1の族となった──
薬やレイプなどやっている暴走族を手当り次第に潰していった。
そんな龍華に誰もが憧れを持っていた。
だが、舞桜の正体は龍華の仲間でさえ幹部以上しか知る者はいなかった。
龍華は葵にとって心地よくて、自分の居場所だった。
あんな事が起きるまでは──
***
「じゃあ、そろそろ行くね」
昼休みが終わり葵は理事長室を後にした。
「あー! 葵ちゃんいた! どこ行ってたの? 探したんだよ」
教室に入り、葵の姿が見えると日向が声を上げた。
「どこってお昼食べてた」
「そうだったんだ。あ、放課後空いてる?」
「何もないけど……」
「りょーかい」
「(なんだろ? どっか行くのか。家に帰りたいんだけどな)」
葵は誰にもバレないよう小さくため息をついた。
***
──そして、放課後。
「はい、葵ちゃん行くよー」
席を立ち教室を出ようとした葵を日向と柚佑に両腕を掴まれた。
「ちょっと、なにすんのよ!」
日向と柚佑は葵の言葉に聞く耳を持たなかった。
そのまま3階から1階まで降りた……いや、降ろされたというべきだろうか。
その3人の後ろを蓮は付いて歩いていた。
「はい、靴履き替えてね。逃げちゃだめだよ」
日向は下駄箱から葵のロファーを取り出し、履き替えるよう促した。
「逃げないから……離して」
「じゃあ、こっちは離してあげる」
柚佑そう言うと葵右腕を掴んでいた手を緩め笑っていた。
「おい、行くぞ」
後から着いてきた蓮は既に履き替えており、早くしろと言わんばかりに校門を指さした。
「あ、やばい」
何かに気づいた日向が声を上げ素早く自分の靴も履き替えると再び葵の両腕はがっちりガードされ、校門まで連れて行かれた。
校門の前に横付けされた黒のベンツ。
蓮がドアを開け日向と柚佑に押し込まれる形で車に乗せられた。
「(これってもう誘拐みたいじゃん。
そんな強引に連れてかなくても何か言ってくれればいいのに……あっやばい)」
ふと、前を向くとバックミラー越しに運転席に座るスキンヘッドの男が視界に入った。
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