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「お待ちしておりました。」

ドアを開けると知らない侍女達がズラリと並んでいた。

「本日はハナ様からフィリップ様のご支度のお手伝いを賜りました。」

代表の人からの挨拶が終わると周りにいた女の人達がテキパキと準備を始める。

「まずはお風呂へ…」

スルリと服を脱がされそうになって慌てて僕は開けた服を正した。

「……っ…僕、自分で脱ぎますから。」

「あ…申し訳ごさいません、男性の方が良いですか?」

「いや…そういう問題じゃあ………はい…お願いします…」

……断る雰囲気じゃなかった。

___チャプ…___

「……お痒い所はありませんか?」

「ない…です…」

「クスクス、こういう事は初めてですよね?」

「…はい。」

優しく髪を洗い、頭皮のマッサージが気持ち良くてついウトウトしてしまう。
侍女達の様な雰囲気とは全く違って、仄かな香りと優しい雰囲気が只者じゃない雰囲気を醸し出す。
この人はハーフエルフで名前をロジェと言った。

「私も基本は女性の方が多いのですが、たまに男性のお世話もあって……」

___ピクンッ…___

「…んっ…」

お相手も…たまには致しますよ。」

___パシャンッ!___

「…っ…僕は望んでない‼」

リンパマッサージをしてくれていた少し強めに押していた指が、急に柔らかくなり僕は慌てて身を引いた。

「クスクス、申し訳ございません。もちろん、今日はそちらのお相手で来たのではありません。」

「じゃあ何…」

「……相手を堕とすアドバイスです…お耳を……」

話を聞けば聞くほどハナ様から借りる本では味わえない…そして、僕にも出来るはずだからとたくさんの事を短い時間に教わった。

「………」

「ちょっと、刺激が強過ぎましたか?」

「…いえ…参考に…なりました…」

「それは良かった。実は私がこちらに来たのはハナ様のご指示ではございません。ダニーの指示です。ダニーとは昔の縁で付き合いがあったので。」

「それって…」

もしかして、恋人⁉
ニールがいるのに?

「クスクス、フィリップ様はお顔に出やすいんですね。あの子が幼い頃に街で迷子になっていた所を助けてからの付き合いなので、色っぽい話はないですよ。」

「そうなんですね。」

ロジェさんって、一体何者なんだろう。

「私なら安心して任せられるからとお願いされましてね…さぁ、上がりましょう。」

___ザァッ___

湯船から上がり、さっとガウンに着替えさせてもらいマッサージ台へと連れて行かれて花の香りの香油を垂らされる。

___ピクンッ…___

「…っ…」

「冷たいですか?」

「いえ…大丈夫です…」

むしろ心地良かった。
こんな事は生まれて初めてだけど『そのつもりはない』と言われ教授してもらったせいか、かなり心を許してしまったかも。
身体を触られてもユーリほどではないけど嫌な感じはしない。
きっと王宮での閨の指導とかもしているのかもしれない。

全身をマッサージしてもらい、潤滑油にも使えるからと小瓶を渡されて部屋に戻ると侍女達の姿は無かった。
寝室は綺麗に整えられ、ベットの上には薔薇の花びらが敷かれ、薄い布が置かれていた。

「あの…僕の服は……」

「あぁ、です。」


そこには薄い布しか……じゃなかった。

「ロジェさん。」

「ロジェと、お呼び下さい。」

「ロジェ…この服、透けてるんですけど?」

しかもボタンは無くて、紐で結んでも動いたら前がはだけてお腹見えちゃうよ。

「誘惑するんでしょ?」

「ゆっ…!」

___ビシッ!___

「あっ!」

全身熱くなるのを感じた時に暴走対策に付けていたブレスレットが割れてしまった。
でも、前よりは魔力の暴走を感じない。
これもロジェのマッサージの効果だろうか?

「ブレスレットが割れてしまいましたね。新しいブレスレットはこちらに…」

暴走するのを見越していたのか、新しいブレスレットを付けてもらった途端に身体の熱が少し落ち着いた。

「フィリップ様のこの格好を見ても断る相手がいるなら私は殴ってやりますよ。」

「下着も…これっ…横は紐じゃないですか!」

「そういう行為をするんですから、無くても良いくらいですよ。あ、何なら無くしますか?」

「いえっ、履きますっ。」

「クスクス、フィリップ様は本当にお可愛い。ダニーの話ていた通りですね。受け身をご自覚されたんでしょう?なら、それなりの求婚をなさいませ。」

「…っ…」

「フィリップ様はハナ様の世界の言葉を借りるなら『攻』を意識していたとか。私は『攻』や『受』の定義は分かりかねますが、結局は身体は受け身であっても、相手を誘導し求め方によって心は『攻』となるのではないでしょうか。」

ロジェが僕をベットへと座らせたかと思うと、脚の間に身を入れて首の後ろに手を回す。

「こうやって…首に手を回し…」

「……ん…っ…」

「髪を梳き…」

___ゾクン…___

「唇に優しく指を這わす…」

「んん…」

「ほら…貴方にも出来る。」

「強く喘ぐから『受』、挿れるから『攻』では無いと、私は思いますよ。」

「………」

ゆっくりとロジェが身体から離れて透けた服を手にした。

「さぁ、最後の仕上げに取り掛かりましょう。」

ロジェの言葉は少し難しさを感じたけど、要は僕はこだわり過ぎだという事、身体で感じる事が全てだと教えてくれた。
誘い方を教えてもらいながら、ロジェに触られる度にジワジワと身体に熱を帯びていった。

「…ん…っ…」

「クスクス、ここ…ユーリ様に触ってもらったらもっと気持ち良いと思いますよ。」

ロジェは何で、この仕事をしてるんだろう。

「私のお仕事はこれだけではないですからね……フフッ、知らなくて良い事もあるんですよ。」

___グッ___

「ひゃんっ!」

「そうそう、この脚の付け根。感じやすいでしょ?もしかしたら、ユーリ様も弱いかもしれませんよ。」

ロジェはそう言うと再び身体から離れ、部屋の明かりを最低限にして出ていった。
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