40 / 43
39
しおりを挟む
開けた場所から広がる湖は、さっきまで薄暗かった場所とは思えない程明るく、水も透明度が高く澄んでいる。
周りを見渡すと少し霧はあるものの視界は明るい。
ここにユニコーンがいるのだろうか?
「じゃあ、ニールとダニーは木の影に隠れてね。」
ハナ様が言うには、ゲームでのユニコーンは僕とハナ様が2人でいる時に現れるという。
2人は少し離れた木の影に隠れ、僕らは湖の近くまで寄って敷布を敷いて座った。
「僕達は何をしたら良いんですか?」
「取り敢えず笑って。」
笑って?
「ユニコーンは、険悪なムードでは来ないのよ。楽しい雰囲気に誘われて来るの。」
「ゲームの僕とハナ様は何をしてユニコーンを誘い出したんですか?」
「あの時は確か恋バナで誘ったような…フィルフィルが頬を赤らめて…あ、念の為ブレスレット新しいのにしておいてね。」
言われてブレスレットを見ると確かに強い暴走に耐えられない状態だ。
僕はカバンから新しいブレスレットを取り出して腕に付け替えた。
「恋バナって、何ですか?」
「恋バナは恋の話よ。フィルフィルは片思いの人がいるって話してたわね。ゲームの私は純粋な乙女の設定だったし、言葉の選択肢も限られてたから食い込んで聞けなかったのが残念だったわ。」
「へぇ。」
その時の僕もユーリに恋をしていたんだろうか…
「だから…」
「え?」
___ガシッ___
「この現実の世界なら直接聞けるじゃない?しかも片思いじゃなく両思い、洗いざらい話してもらおうかしら?」
「嫌です。」
「酷いっ!」
「当たり前でしょ?何でハナ様に話さなきゃいけないんですか。」
「フィルフィルなら頬を赤らめながらも言ってくれたのにぃ!」
___パシャン___
「「⁉」」
小さなはずの水音が、鈴の音の様に軽やかなのにハッキリと僕らの耳に入ってきた。
「ユニコーンが来たわね…さぁ、その可愛い顔を拝ませ……あ゛ぁん?」
「どうしたんです…あ…」
険しい表情でナ様が見た方向を向けて納得した。
でも、そこには話に聞いていた愛らしいユニコーンではなく、どう見ても強靭な筋肉美あふれるユニコーンがいた。
「ハナ様…どこが愛らしい小柄なユニコーンですか?ハナ様の可愛いを疑うんですが。」
「違うわよ、ゲームじゃ可愛かったんだもんっ。」
笑顔を保ちつつコソコソと話していると頭の中で声がした。
『お前ら、何話してんの?』
「え…話…」
ニールとダニーの方を見ると、ユニコーンの登場に息を殺して見守っているようだ。
「なるほど。ゲームじゃモニターの文字だったけど、現実は頭の中に言葉が来るのね。」
ハナ様がブツブツと隣で話しているけど、ゲームは分かるけどモニタァ?
よく分からない言葉が出てきた。
ハナ様と知り合って随分経ったと思っていたけど、まだまだスマホや本では分からない言葉があるんだ。
「取り敢えず、チェンジで。」
『はぁ?』
「ハナ様っ。」
「だって、こんな筋肉モリモリなユニコーンなんて擬人化したらマシュー様みたいな筋肉モリモリなマッチョでしょ?可愛い子じゃないなら、せめて長髪美形な細マッチョなイケメンにしてよね!」
『………』
「ハナ様、ちょっと言い過ぎ…」
「だって、可愛ポジが今はいないのよ。あ、フィルが可愛くないとは言ってないのよ?こう…BLバランスって言うの?カッコ良い、ヤンキー系、マッチョ、美人系…色々いるけど可愛いはいないからさぁ。」
「ハナ様、俺の事もカッコ良い認定なんだ♪」
思わずコソッと喜ぶニールの声が木の影から聞こえた。
「あ、ニールはおっちょこキャラね。」
「酷っ、その言葉俺知りませんけど何気にディスってますよね⁉あっ、ヤベッ!」
『お前ら最初からいるの分かってるぞ、出てこい。んでもって、女。お前さっき言った事取り消せよ。』
「何がよ…っ…あ。」
___シュゥゥゥ…___
ユニコーンの周りを霧が囲んだかと思った途端、僕達の周りにも霧が掛かった。
___ザッ!___
「「ハナ様!」」
瞬時にダニーとニールが飛び出してハナ様の守りに入る。
「俺だ俺、ユニコーン。それに、お前らバレバレなんだよ。フローディアに追い出されたくなかったら大人しくしておけよ。」
「「………」」
「取り敢えず、その剣をしまえ。」
ヒラヒラと面倒臭そうにユニコーンらしき男が言うと、ハナ様がため息をついて2人に言った。
「…確かにこの人はユニコーンよ。ニールもダニーも剣をしまってちょうだい。」
「…ハナ様が言うなら…」
「かしこまりました。」
訝しげな表情はそのままに2人はハナ様の命令に従った。
目の前の長髪の男は魔族じゃないかと思うほど見た目も声も綺麗な顔立ちだ。
ユニコーンの証に額の角はそのまま残っていた。
「…で、人の姿になったぞ。どうだ、まだ認めな「チェンジで。」」
つかさずハナ様がキッパリと言った。
「「………」」
「ブハッ!」
「何よ。」
「お前、面白い女だな。うん、決めた。」
ユニコーンが優雅に跪き、ハナ様の手を取る。
「あっ…違っ……離しなさいよっ。」
「離さねぇ。」
花びらが舞い散り始め、辺りが光輝いていく。
ユニコーンの手を振りほどこうとするハナ様に、ユニコーンは楽しそうに掴んで離さず古の言葉を紡いだ。
「我、この地に守られし者……」
「離しなさいよっ…このバカユニッ…」
「フッ…良いな。」
「もぅっ…!」
「聖なる乙女に名をユニと、頂いた。我はこの乙女と共に歩む事をここに誓う。」
「うっそぉっっ!」
「ほら…誓うって言えよ。」
___グイッ!___
「んなもん、誓…ぅんっ⁉」
ユニコーンが強くハナ様を引き寄せてキスをした。
多分、誓わないって言いたかったんだろうけどキスで最後は『う』になっちゃった。
___パァァァア!___
花びらと光が祝福の変わりに更にきらびやかに輝き、2人の周りに軽やかな風が舞い上がる。
まるで1枚の絵画の様なんだけど……
「うっそぉぉおおっ!私は壁で良いのよぉぉおっっ!」
ハナ様の最後の一言が全てを台無しにしていた。
周りを見渡すと少し霧はあるものの視界は明るい。
ここにユニコーンがいるのだろうか?
「じゃあ、ニールとダニーは木の影に隠れてね。」
ハナ様が言うには、ゲームでのユニコーンは僕とハナ様が2人でいる時に現れるという。
2人は少し離れた木の影に隠れ、僕らは湖の近くまで寄って敷布を敷いて座った。
「僕達は何をしたら良いんですか?」
「取り敢えず笑って。」
笑って?
「ユニコーンは、険悪なムードでは来ないのよ。楽しい雰囲気に誘われて来るの。」
「ゲームの僕とハナ様は何をしてユニコーンを誘い出したんですか?」
「あの時は確か恋バナで誘ったような…フィルフィルが頬を赤らめて…あ、念の為ブレスレット新しいのにしておいてね。」
言われてブレスレットを見ると確かに強い暴走に耐えられない状態だ。
僕はカバンから新しいブレスレットを取り出して腕に付け替えた。
「恋バナって、何ですか?」
「恋バナは恋の話よ。フィルフィルは片思いの人がいるって話してたわね。ゲームの私は純粋な乙女の設定だったし、言葉の選択肢も限られてたから食い込んで聞けなかったのが残念だったわ。」
「へぇ。」
その時の僕もユーリに恋をしていたんだろうか…
「だから…」
「え?」
___ガシッ___
「この現実の世界なら直接聞けるじゃない?しかも片思いじゃなく両思い、洗いざらい話してもらおうかしら?」
「嫌です。」
「酷いっ!」
「当たり前でしょ?何でハナ様に話さなきゃいけないんですか。」
「フィルフィルなら頬を赤らめながらも言ってくれたのにぃ!」
___パシャン___
「「⁉」」
小さなはずの水音が、鈴の音の様に軽やかなのにハッキリと僕らの耳に入ってきた。
「ユニコーンが来たわね…さぁ、その可愛い顔を拝ませ……あ゛ぁん?」
「どうしたんです…あ…」
険しい表情でナ様が見た方向を向けて納得した。
でも、そこには話に聞いていた愛らしいユニコーンではなく、どう見ても強靭な筋肉美あふれるユニコーンがいた。
「ハナ様…どこが愛らしい小柄なユニコーンですか?ハナ様の可愛いを疑うんですが。」
「違うわよ、ゲームじゃ可愛かったんだもんっ。」
笑顔を保ちつつコソコソと話していると頭の中で声がした。
『お前ら、何話してんの?』
「え…話…」
ニールとダニーの方を見ると、ユニコーンの登場に息を殺して見守っているようだ。
「なるほど。ゲームじゃモニターの文字だったけど、現実は頭の中に言葉が来るのね。」
ハナ様がブツブツと隣で話しているけど、ゲームは分かるけどモニタァ?
よく分からない言葉が出てきた。
ハナ様と知り合って随分経ったと思っていたけど、まだまだスマホや本では分からない言葉があるんだ。
「取り敢えず、チェンジで。」
『はぁ?』
「ハナ様っ。」
「だって、こんな筋肉モリモリなユニコーンなんて擬人化したらマシュー様みたいな筋肉モリモリなマッチョでしょ?可愛い子じゃないなら、せめて長髪美形な細マッチョなイケメンにしてよね!」
『………』
「ハナ様、ちょっと言い過ぎ…」
「だって、可愛ポジが今はいないのよ。あ、フィルが可愛くないとは言ってないのよ?こう…BLバランスって言うの?カッコ良い、ヤンキー系、マッチョ、美人系…色々いるけど可愛いはいないからさぁ。」
「ハナ様、俺の事もカッコ良い認定なんだ♪」
思わずコソッと喜ぶニールの声が木の影から聞こえた。
「あ、ニールはおっちょこキャラね。」
「酷っ、その言葉俺知りませんけど何気にディスってますよね⁉あっ、ヤベッ!」
『お前ら最初からいるの分かってるぞ、出てこい。んでもって、女。お前さっき言った事取り消せよ。』
「何がよ…っ…あ。」
___シュゥゥゥ…___
ユニコーンの周りを霧が囲んだかと思った途端、僕達の周りにも霧が掛かった。
___ザッ!___
「「ハナ様!」」
瞬時にダニーとニールが飛び出してハナ様の守りに入る。
「俺だ俺、ユニコーン。それに、お前らバレバレなんだよ。フローディアに追い出されたくなかったら大人しくしておけよ。」
「「………」」
「取り敢えず、その剣をしまえ。」
ヒラヒラと面倒臭そうにユニコーンらしき男が言うと、ハナ様がため息をついて2人に言った。
「…確かにこの人はユニコーンよ。ニールもダニーも剣をしまってちょうだい。」
「…ハナ様が言うなら…」
「かしこまりました。」
訝しげな表情はそのままに2人はハナ様の命令に従った。
目の前の長髪の男は魔族じゃないかと思うほど見た目も声も綺麗な顔立ちだ。
ユニコーンの証に額の角はそのまま残っていた。
「…で、人の姿になったぞ。どうだ、まだ認めな「チェンジで。」」
つかさずハナ様がキッパリと言った。
「「………」」
「ブハッ!」
「何よ。」
「お前、面白い女だな。うん、決めた。」
ユニコーンが優雅に跪き、ハナ様の手を取る。
「あっ…違っ……離しなさいよっ。」
「離さねぇ。」
花びらが舞い散り始め、辺りが光輝いていく。
ユニコーンの手を振りほどこうとするハナ様に、ユニコーンは楽しそうに掴んで離さず古の言葉を紡いだ。
「我、この地に守られし者……」
「離しなさいよっ…このバカユニッ…」
「フッ…良いな。」
「もぅっ…!」
「聖なる乙女に名をユニと、頂いた。我はこの乙女と共に歩む事をここに誓う。」
「うっそぉっっ!」
「ほら…誓うって言えよ。」
___グイッ!___
「んなもん、誓…ぅんっ⁉」
ユニコーンが強くハナ様を引き寄せてキスをした。
多分、誓わないって言いたかったんだろうけどキスで最後は『う』になっちゃった。
___パァァァア!___
花びらと光が祝福の変わりに更にきらびやかに輝き、2人の周りに軽やかな風が舞い上がる。
まるで1枚の絵画の様なんだけど……
「うっそぉぉおおっ!私は壁で良いのよぉぉおっっ!」
ハナ様の最後の一言が全てを台無しにしていた。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる