【お休み中】長年の片思いを成就させたけど、僕は受だと言われました。〜召喚した聖女のスマホで勉強します〜

mana.

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開けた場所から広がる湖は、さっきまで薄暗かった場所とは思えない程明るく、水も透明度が高く澄んでいる。
周りを見渡すと少し霧はあるものの視界は明るい。
ここにユニコーンがいるのだろうか?

「じゃあ、ニールとダニーは木の影に隠れてね。」

ハナ様が言うには、ゲームでのユニコーンは僕とハナ様が2人でいる時に現れるという。
2人は少し離れた木の影に隠れ、僕らは湖の近くまで寄って敷布を敷いて座った。

「僕達は何をしたら良いんですか?」

「取り敢えず笑って。」

笑って?

「ユニコーンは、険悪なムードでは来ないのよ。楽しい雰囲気に誘われて来るの。」

「ゲームの僕とハナ様は何をしてユニコーンを誘い出したんですか?」

「あの時は確か恋バナで誘ったような…フィルフィルが頬を赤らめて…あ、念の為ブレスレット新しいのにしておいてね。」

言われてブレスレットを見ると確かに強い暴走に耐えられない状態だ。
僕はカバンから新しいブレスレットを取り出して腕に付け替えた。

「恋バナって、何ですか?」

「恋バナは恋の話よ。フィルフィルは片思いの人がいるって話してたわね。ゲームの私は純粋な乙女の設定だったし、言葉の選択肢も限られてたから食い込んで聞けなかったのが残念だったわ。」

「へぇ。」

その時の僕もユーリに恋をしていたんだろうか…

「だから…」

「え?」

___ガシッ___

「この現実の世界なら直接聞けるじゃない?しかも片思いじゃなく両思い、洗いざらい話してもらおうかしら?」

「嫌です。」

「酷いっ!」

「当たり前でしょ?何でハナ様に話さなきゃいけないんですか。」

「フィルフィルなら頬を赤らめながらも言ってくれたのにぃ!」


___パシャン___


「「⁉」」

小さなはずの水音が、鈴の音の様に軽やかなのにハッキリと僕らの耳に入ってきた。

「ユニコーンが来たわね…さぁ、その可愛い顔を拝ませ……あ゛ぁん?」

「どうしたんです…あ…」

険しい表情でナ様が見た方向を向けて納得した。
でも、そこには話に聞いていた愛らしいユニコーンではなく、どう見ても強靭な筋肉美あふれるユニコーンがいた。

「ハナ様…どこが愛らしい小柄なユニコーンですか?ハナ様の可愛いを疑うんですが。」

「違うわよ、ゲームじゃ可愛かったんだもんっ。」

笑顔を保ちつつコソコソと話していると頭の中で声がした。

『お前ら、何話してんの?』

「え…話…」

ニールとダニーの方を見ると、ユニコーンの登場に息を殺して見守っているようだ。

「なるほど。ゲームじゃモニターの文字だったけど、現実は頭の中に言葉が来るのね。」

ハナ様がブツブツと隣で話しているけど、ゲームは分かるけどモニタァ?
よく分からない言葉が出てきた。
ハナ様と知り合って随分経ったと思っていたけど、まだまだスマホや本では分からない言葉があるんだ。

「取り敢えず、チェンジで。」

『はぁ?』
「ハナ様っ。」

「だって、こんな筋肉モリモリなユニコーンなんて擬人化したらマシュー様みたいな筋肉モリモリなマッチョでしょ?可愛い子じゃないなら、せめて長髪美形な細マッチョなイケメンにしてよね!」

『………』

「ハナ様、ちょっと言い過ぎ…」

「だって、可愛ポジが今はいないのよ。あ、フィルが可愛くないとは言ってないのよ?こう…BLバランスって言うの?カッコ良い、ヤンキー系、マッチョ、美人系…色々いるけど可愛いはいないからさぁ。」

「ハナ様、俺の事もカッコ良い認定なんだ♪」

思わずコソッと喜ぶニールの声が木の影から聞こえた。

「あ、ニールはおっちょこキャラね。」

「酷っ、その言葉俺知りませんけど何気にディスってますよね⁉あっ、ヤベッ!」

『お前ら最初からいるの分かってるぞ、出てこい。んでもって、女。お前さっき言った事取り消せよ。』

「何がよ…っ…あ。」

___シュゥゥゥ…___

ユニコーンの周りを霧が囲んだかと思った途端、僕達の周りにも霧が掛かった。

___ザッ!___

「「ハナ様!」」

瞬時にダニーとニールが飛び出してハナ様の守りに入る。

「俺だ俺、ユニコーン。それに、お前らバレバレなんだよ。フローディアに追い出されたくなかったら大人しくしておけよ。」

「「………」」

「取り敢えず、その剣をしまえ。」

ヒラヒラと面倒臭そうにユニコーンらしき男が言うと、ハナ様がため息をついて2人に言った。

「…確かにこの人はユニコーンよ。ニールもダニーも剣をしまってちょうだい。」

「…ハナ様が言うなら…」
「かしこまりました。」

訝しげな表情はそのままに2人はハナ様の命令に従った。
目の前の長髪の男は魔族じゃないかと思うほど見た目も声も綺麗な顔立ちだ。
ユニコーンの証に額の角はそのまま残っていた。

「…で、人の姿になったぞ。どうだ、まだ認めな「チェンジで。」」

つかさずハナ様がキッパリと言った。

「「………」」

「ブハッ!」

「何よ。」

「お前、面白い女だな。うん、決めた。」

ユニコーンが優雅に跪き、ハナ様の手を取る。

「あっ…違っ……離しなさいよっ。」

「離さねぇ。」

花びらが舞い散り始め、辺りが光輝いていく。
ユニコーンの手を振りほどこうとするハナ様に、ユニコーンは楽しそうに掴んで離さず古の言葉を紡いだ。

「我、この地に守られし者……」

「離しなさいよっ…このバカユニッ…」

「フッ…良いな。」

「もぅっ…!」

「聖なる乙女に名をと、頂いた。我はこの乙女と共に歩む事をここに誓う。」

「うっそぉっっ!」

「ほら…誓うって言えよ。」

___グイッ!___

「んなもん、誓…ぅんっ⁉」

ユニコーンが強くハナ様を引き寄せてキスをした。
多分、誓わないって言いたかったんだろうけどキスで最後は『う』になっちゃった。

___パァァァア!___

花びらと光が祝福の変わりに更にきらびやかに輝き、2人の周りに軽やかな風が舞い上がる。
まるで1枚の絵画の様なんだけど……

「うっそぉぉおおっ!私は壁で良いのよぉぉおっっ!」

ハナ様の最後の一言が全てを台無しにしていた。
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