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「ねぇ、やっぱりフィルの方が良かったんじゃないの?」

「僕は処女じゃないから来ないと言ってましたよね?ケンカ売ってるなら買いますよ。」

「まぁまぁ…」

「そうだよ、ここで争って悪い雰囲気作ったらユニコーンだって来ないかもしれないよ?」

馬車の中で険悪ムードになる中、ニールとダニーはご機嫌だ。

「2人は良いよね、なんだし。」

「ただのって言うなよ、護衛は護衛だ。」

「そうだよ、何かあれば俺達が前に出て戦うんだし。」

…って、言いながら嬉しそうにしている。
分かってる、今回は神聖な場所だから余程のことでない限り魔物は来ない。
しかも僕がある程度の攻撃魔法が使えるから実質護るのはハナ様だけだ。
しかも妖精の粉は僕が妖精と仲良くなりやすいから簡単に手に入りやすい。

だからって…

___ボソッ___

「…婚前旅行みたいな気分を出しちゃってさ…」

「え♡そうなの⁉」

「そんなっ…そんな事ないよっ…なぁっ…」

萌の需要で嬉しさと驚きで大きく反応するハナ様。
それに対して動揺するニールと…

「…っ……うん…」

………まさかっ⁉

「…プロポーズしたのね。」

___カァァア…___

「「……はい……」」

「キャァァアッ‼」
「ウソだぁ‼」

先を越された!

___ゴオッ‼___

「シールドッ‼」

ニールの声で我に帰った。

「ゴメン…」

「いや…俺達も言わなかったのが悪かった。」

「でも、いつプロポーズしたの?」

元々恋人同士ではあったけど、そんな雰囲気を感じなかったのに。

「……いや…その話は…」
「そうだよ、今はユニコーンと会うのに集中しなきゃ!」

でも、真っ赤になりながら照れる2人を見ていたら先を越されたと慌てる自分が恥ずかしくなった。

___バンッ!___

「わっ。」
「「………ヒュッ…」」

「……その話…詳しく…」

ハナ様、その行動は別の意味で恥ずかしい。
馬車がグラリと揺れる程の壁ドン。
…こんなドスの効いた壁ドンなんて初めて見たよ。しかも男2人まとめて出来るなんて、ニールが怯えてるじゃん。
馬車が少し揺れたくらいでは馬は驚かずに進み、御者も特に気にしてないようで特に何も言われず森の入口へと走って行った。


*******************************


「では、ご武運をお祈りしております。」

「あぁ、迎えはまた光の鳥で飛ばすよ。」

「かしこまりました。」

森の入口で僕達は降り、御者へ労いの言葉を交わして別れた。
荷物に関してはマジックバックを強化した物にある程度入れる事が出来たので軽装で移動出来る。
今回ユニコーンの調査と平行してこのマジックバッグをの強度や耐性も調べる事になっていた。

「さて…最初に行く所は…」

「妖精の粉だよな。」

___妖精の粉___

…あの場所で僕は…

「あそこはフィルフィルとユーたんの初エッチの場所じゃない!聖地巡礼出来…」

___ゴォッ‼︎___

「いったぁいっっ‼︎ダニー助けてよっ!」

「自業自得です。」
「威力は弱かったしね。」

「酷いっ!一応私、聖女よ⁉」

ワイワイ騒ぎながら歩みを進めて行くとあっという間に妖精と出会った川へとたどり着いた。

___キュイ…ピィ…チチチ…___

前と変わらない風景、清らかな空気とどこか神聖さを感じる。

「ふぉぉ…ここで…フィルフィルとユーたんが…」

…隣で何だか邪悪な気配を感じる。

「ハナ様…鼻血が…」
「あら…申し訳ないわね…」
「テントを作らなきゃな。フィル、マジックバッグ借りるぞ~。」

どうしてこの2人は冷静なんだろう。
何事も無かったようにニールはテキパキとテントを張り、ダニーが先に出来上がったハナ様のテントに物を置いていく。
ハナ様のテントを真ん中に僕とニールとダニーのテントがそれぞれ囲むように張られていった。

「…ハナ様、これ…いりました?」

「いるに決まってるでしょ。」

ニールに貼ってもらったテントに持ってきた寝袋やクッションを置き、寂しくて持ってきたユーリの匂いのついたブランケットを枕のそばに置いて外に出るとハナ様のテントから呆れ声のダニーの声がした。

「一体何日いるつもりで…ん、これは何ですか?」

「ハンモック。」

護りを固めるとはいえ至近距離のテントを張ってる訳ではない。
見た目は普通のテントだけど簡易シールドは張られている。

「見たら分かります…で、この本は?」

あ、この本前に借りたやつ。

「ハンモックに寝そべって読むお気に入りのB…」

「没収です。」

___シュルン___

「いやぁっ!」

ダニーがニッコリ笑ってマジックバッグへと戻した。

「さて、ある程度荷解きも済みましたし、今日の所は早めの夕食を済ませて明日に備えましょう。」

遠征に慣れた騎士が2人もいると色々と便利だ。
テーブルには食器が置かれて側の焚き火にはダッチオーブンが備えられ、数分したら美味しい香りが食欲をそそってくる。

「わぁ~、美味しそう♪」

「ここは魔獣とか出ないのはフィル達の前の調査で出ているからね。香りが強くても大丈夫と思ってさ。」

「俺もここ、来たかったんだよなぁ~。」

ダッチオーブンで作ったのはミネストローネ。トマトを丸ごと入れて色々な野菜、そして肉厚のベーコン。
マシュー様が持たせてくれたパンを添えて出来上がりだ。
満点の星空に小川の程良いせせらぎと焚き火の音。
僕達は明日の妖精と会うための対策について話し合い、お腹も満たされたあとは各自のテントで眠りについた。
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