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あれから、ニールとダニーの交際が団員の中で広がり我も我もと表立ってカップルが成立していった。

…と言うのも…

「…貴方、この書類を第3騎士団の元へ届けてくれるかしら?あ、いつもの廊下は整備中だから中庭を通ってね!」

「…?…整備中でしたかねぇ…でも、ハナ様が仰るなら…」

「あ、そこの貴方っ!魔術具にちょっと不具合が起きているのよ…え、フィルに?フィルはバッテリーの開発は終わったけど別の事を頼んでいるの。…あ、これなんだけど、水の清浄化の補助をするもので、たまに不具合が起きるの……あっ…今、第3魔術師団に見習いの子の姿が浮かんだわっ!その子と一緒に見直して欲しいのっ。」

ハナ様が神のお告げが降りたかの様にスラスラと相手の容姿を伝えた。

「第3…ですか…しかも見習い…まだまだ未熟だと思われますが…」

「いいえ、内なる力を秘めているわ。第1魔術師団の貴方の力で開花させてちょうだいっ!は爵位がないけど、貴方の愛…じゃないっ…導く力で一緒に出来るはずよ!」

「…ハナ様…そこまで私達の事を…分かりました。育成も兼ねて今後の王宮のためにも探して参ります!」

スマホの漫画や本を借りて、最近ハナ様の考えている事が分かってきた。
ハナ様が考えているのは物語のカップリングだと思うよ。

「噴水…あ、王宮の中庭じゃなくて……そうっ、第3魔術師の寮の近くに噴水があると思うの。そこでっ、不具合の確認をして頂戴!」

「畏まりました!」

魔術具を受け取り第3魔術師団のいる棟に向かっていった。
第1魔術師団で多分僕より先輩なんだけど…名前、覚えてないなぁ。

「フゥ…今日もたくさんのカップルを導いたわね。あ、彼の名前は覚えてなくて当然よ。『モブ』だからね。」

新たな言葉が出てきた。

「…モブ…ですか?」

「えぇ、物語の脇役の…更に脇役と言う所かしら?物語では一瞬だけ出てくる人なんだけど、聖女が眠れない夜に王宮の奥で偶然見つけた噴水の水を浄化の練習でもしようかと行った時に、この2人のキスシーンを偶然見るのよ。」

「見る…誰が見るんですか?」

「ウフフ~…わ・た・し♡このシーンを見て男同士の秘めた恋愛をオープンに出来るようにと奮闘するのよ!」

自分で見るのに自分でけしかけるんだ。
それもう偶然じゃないから。
しかも、ユーリによって既にオープンだよね。

「本当は魔術具は貴方から渡すんだけど、物語が少し変わってきてるし、私が代わりに言っちゃった。」

「僕、そんな依頼をするんですか?」

ハナ様が言うには、僕が忙し過ぎて依頼された魔術具を彼にお願いするらしい。
…で、彼が色々調査をして第3魔術師団の調査依頼をした時の助手になる相手…時間が掛かるから一足飛びに人と場所を指名したみたいだけど、彼と話した記憶は全くないんだけどなぁ。

「そりゃ、モブは印象薄いからね。でも、彼と引っ付く相手は…それはそれは…あ、鼻血。」

「…鼻血が出るほど可愛いんですね。」

「そうなのよっ、萌えるわぁっ!じゃ、私はがあるから。バッテリーの正式な報告を頼んだわよっ!」

嬉しそうにハナ様は鼻息荒くハンカチをたくさんサイドポケットに忍ばせて出掛けて行った。



************************************


「……報告は以上でございます。」

王との謁見の前にジョナス様の執務室で書類を見せ、バッテリーを手渡した。

「…ハナ様は?」

「ハナ様は鼻血…いえ、浄化の自主訓練に熱中されていて、今はお会いする事が難しいとの事です。」

「…ハァ…そうか…」

ハナ様が召喚されてから全く僕に見向きもしなくなったジョナス様は、ハナ様とのコンタクトを試みるがハナ様が「王子はタイプじゃない」と、逃げ回った。
その内ジョナス様から僕が会わせないようにしているのでは?と、疑われたものの…ユーリが僕に対する態度を見て一気に柔軟な態度に戻った。

「…ハナ様は、本当に君に興味がないのか?」

「えぇ、全く。」

この世界のBLの愛の伝道師目指してる人が普通の恋愛はしないと思うんだよね。

「…君は……少し変わったね。」

「え?」

「綺麗な顔をしているけど、少し冷たい氷の様な表情だった。でも…今は……」

「…ジョナス…さ…」

___バンッ!___

「失礼しますっ!」

「「ユーリ。」」

少し怖い顔をしてズンズンと僕とジョナス様の間に立ち…

「…フィルの頬は…誰にも触らせません…たとえ王子であっても…」

「ユーリッ!」

王子を前に何言ってるんだよ。

「…フッ…本当に好きなんだな。」

「もちろんです。フィル、報告は終わったのか?」

「え…ぁ…」

「あぁ、終わった終わった。フィル、戻って良いぞ。よくやったな。父上への正式な報告は後日通達をやるから。」

「はい…あっ!」

「では、失礼します。」

グッっと、手を掴まれて挨拶もそこそこに僕はユーリの進むままに中庭の茂みへと入った。

___ガサッ___

「…っ…ユーリッ…僕仕事ちゅ…んっ…」

少し怒ったフリをして振り向くと、少し怒った顔のユーリの顔が近付いて深くキスをされて一気に舌が入ってくる。
弱い所ばかりを責められてあっという間に僕の思考が止まってしまった。

「…ん…ハッ…ぁ……ふぁ…っ…やっ…」

クチュクチュと絡まる舌に唾液が溢れ、あまりの激しさに飲み込めずに口先から喉元に伝う。

「ひゃ…んっ…あ…んんっ…」

まだ仕事中なのに…どうしよう…下半身が…熱い…
そう思っていると、ユーリの手が伸びてズボンを少しズラされた。

___ズルンッ___

「あ…んっ!」

窮屈だったズボンから解放された僕の陰茎が、ヒヤッ…と、外気に触れて勃ち上がる。

「クチュ…悪い子だよな…仕事中に…チュ…こんなに…して…」

「やっ…」

___ギュッ!___

「んぅっ!」

ユーリの手が僕の陰茎をしっかりと握る。
逃げ場のない快楽が僕の思考を無くしていく。

「やぁあっ…離し…てぇっ…」

「ダメだ…」

「何で…」

「ジョナス様に触らせただろ?」

「ジョナ…ス…さまぁ…?」

緩急を付けながら上下に扱き始め、僕は身を捩らせる。

「そうだ…フィルの頬は俺の…だろ…チュ。」

「ユーリ…の…?」

「あぁ…あ…逃げるな…」

「だっ…て…んんっ…音…聞こえちゃ…んんっ。」

___ヌチュッ!___

「あぁんっ!」

___ビクンッ!___

「クスクス…この声なら…聞こえるかもな。」

「やっ…だぁ…」

ほとんど人が通らないとはいえ、ハナ様やニール達は知ってるんだし…もしかしたら…

「こらっ…俺を見て。」

___キュッ!___

「んんっ……っっ!」

陰茎の根本を掴まれ、次第に身体中に心臓の音がこだましてきた。
どうしよう…ゾワゾワが…また…

「や…ユーリ…離して…声…出ちゃうよっ…」

「じゃぁ…俺で塞げば?」

「ユーリ…で…?」

「あぁ…俺で…」

ユーリの顔が近付き深く唇を合わせると常時に激しく扱かれた。

___ジュッ…ヌチュ…チュク、ヌチュッ!___

「んんんっ…ふっ…あっっ…んっ…ぁふっ……んんんんっっ‼︎」

「フィル…チュ…チュ…」

唇が離れ、ジョナス様の指先に触れた頬を丁寧にキスをされて耳朶へと移動し…

___カリッ…___

「あぁあっ‼︎」

___ビクンビクンッ‼︎___

___ビュルルッ!___

耳朶を甘く齧られて一気に達してしまい、離された手の開放感にいつもより多く射精してしまった。

「……フフッ…たくさん出したな…良い子だ。」

「…ハァ…ハァ…ハァ……」

その後、ユーリは騎士団の中で僕との交際宣言をし…

「俺のフィルに手を出した者は誰であろうと容赦はしないからな!」

ニールとダニーの情報では、眼光鋭く言い切ったらしいその姿は後世に残る程の交際宣言だったそうだ。
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