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翌日、日中の川を確認したけど光はなく癒やしの効果も無かった。
周りの土や樹を調べたけど、特に変わった所も無い。

「フィル、腹が減らないか?」

「あ、もうそんな時間?」

僕は川原に戻って魔術具に使えそうな魔石を見つけて夢中になっていた。

「太陽を見ると…昼過ぎってところか。何をそんなに夢中になってたんだ?」

「これだよ。」

「…石?」

「うん、癒やしと雷のパワーを感じるんだよね…あ…これは癒やしだけだ。」

川原の石は基本的には持って帰ってはならない。
その時は水の妖精にお願いして了承と取らないとダメなんだけど…

「へぇ、魔石が多いのも珍しいのに1つの石に2つも効果があるのか。」

昨日たくさんの光があった所を中心に、所々に変わった色の石があった。
癒やしのパワーを持った石が中心だけど、中には雷のパワーも兼ね備えたものもある。
いくつか探していて2つ程見つけていた。

「ユーリ、お昼ご飯を先に食べててよ。僕、水の妖精にこの石をもらえるかお願いしてみる。」

「俺も一緒にいる。」

「ん~、水の妖精はたまに人見知りもいるから…じゃあ、ここでなにか食べれそうなものを作ってきて。その間に妖精に聞いて大丈夫なら呼ぶから。」

「ダメだ。何かあったらどうするんだ?」

「大丈夫だよ、昨日見たでしょ?こんな優しい癒やしのある川に住んでる妖精が危険な訳ないよ。」

水の妖精は人見知りが多く、川に住む水の妖精は場所によっては気性の激しいのもいる。
ユーリが心配してるのは川に住む妖精だからだろう。

「………」

「大丈夫、僕はこれでも第1魔術師団だよ?剣の腕だって今まで見てきたでしょ?」

「まぁ、そうなんだが…」

分かった…と、渋々戻るユーリを見送り僕は昨日の光が多かった場所へ行き、川に向かって唱えた。

「古の潜在力よ、我が呼び声に応えよ。神秘の源泉より喚び寄せたる水の妖精よ、我に従い、現れん。」


___パシャッ…___


流れに反して小さな水飛沫が上がる。
光はないものの小さな魚が水面に飛び出した様な水飛沫に水の妖精が現れている事を示していた。

___ ………っ… ___

…出できた…

「こんにちは、僕はフィリップ。僕の魔力は水の属性が強いから。ほら、怖くないでしょ。だから出てきてくれないかな?」

手の平に小さな水の玉を作り、
妖精を誘い出す。
小さな頃、屋敷の噴水で出会った水の妖精達と遊んだ水遊び。
好奇心旺盛な水の妖精は水の玉で投げ合って遊ぶ事もあった。

___リン♫___

昨日の優しい鈴の音と違い、元気な音。
機嫌の良い水の妖精がいる時に出る音だ。

「急に来てゴメンね。王様からここを調べる様に頼まれたんだ。あとね、この2つの石が欲しいんだけど…ダメかな?」

___リンリンッ♪___

___どうする……うん……良いん……かな…___

いくつかの声が聞こえてくる。
良かった、怖がらせてはないみたい。

「あ…あとね……」

王宮の噴水にも水の妖精がいたので屋敷から取り寄せていたお菓子を取り出し、手の平に置いて誘ってみた。

「お近付きの挨拶に…これ、どうかな?」

___……キラキラ…チクチク?……甘い香り……__
_

「これはコンペイトウっていうんだ。大昔に召喚された聖女様が考えたお菓子だよ。」

___リンリンッ♪♫___

あ、興味持ったな。

『…甘い?』

1人の妖精が岩の影から顔を出した。

「甘いよ。」

また1人の妖精が顔を出す。

『……美味しい?』

「美味しいよ。さぁ、出ておいで。」

1人、2人と妖精が現れてコンペイトウはあっという間に無くなった。

『美味しいね。フィリップ、もうないの?』

「フィルで良いよ。ゴメン、もうないんだ。」

あちこちでフィル、フィルと、呼ぶ声がする。
良かった、ここの水の妖精とも仲良くなれそうだ。

『フィルは石が欲しいの?』

「うん、研究に使いたくて。あとは聖女に役に立ちそうなものも作れないかと思って。」

『聖女、可愛い?』

可愛い…?

「…面白い…とは思うよ。」

黙ってると…確かに可愛いとは思うけど、話すとだもんなぁ。

『聖女のためならいいよ。』

『コンペイトウくれたら良いよ、ウフフ~。』

「ありがとう、コンペイトウはもう無いんだ。次に来る時に持ってくるよ。」

___本当?…本当??___

鈴の音が高らかに辺りを響かせた。

「フィル~!」

『『『きゃあっ‼︎』』』

___パシャンッ!___

「あっ。」

ユーリが走って来て驚いたのか、水の妖精達は川へと消してしまった。

「…あれ、空気が違う…」

「うん、妖精が来てくれていたんだよ。」

「驚かせてしまったな。」

「みたいだね。でも、仲良くなれたからまた会えるよ。」

ユーリ、王宮や屋敷の妖精も最初は怖がられたんだよね。
こんなに可愛いのに…何でだろ。
でも、石も持って帰って帰って良いと言うし、ハナ様に会いたがってる感じだったからいつかは連れて来たいな。
聖女が持っている癒しの力に妖精は惹かれてやってくる。
…ん?でも、王宮の妖精は寄ってこなかったな。

「どうした、もしかして…怒ってる?」

僕が考え事をしているのを怒っていると勘違いされたらしい。

「あ、違うよ。怒ってない。ハナ様の事考えてただ…ん?」

顔を上げてユーリを見ると、耳と尻尾がたらんと下がって…ん?これって拗ねてる?

「…怒ってないのは良いけど…何でハナ様なんだよ。」

「だって、ハナ様は聖女でしょ?ここの妖精が会いたがっているし、石もハナ様のおかげでもらえたからね。」

「……ふ~ん…」

フフッ、耳がピコピコしてる。

「今まで付き合った人にもそんな感じだったの?」

「え?」

「自分以外の人の事考えてる姿にヤキモチ妬いたり…とか。」

…だったら、嫌だな。

「………」

「ユーリ?」

「…ないな。」

「ウソ。」

「本当だ、フィルが初めて。」

聞いた僕よりユーリの方が驚きながら答えた。
でも…

「…そっか……フフッ。」

「何だよ、子どもっぽくて悪かったな。」

「ううん。」

僕はユーリの手を取った。

「ユーリの初めて…僕がもらえる事ってないって思ってたから…その…嬉しい…」

___カァァ…___

顔が赤い…

「……俺も…」

___キュッ___

「フィルの初めて…もらえるんだよな?」

「ん?」

「…優しく…するからな…チュ。」

「…っ⁉︎」

どうやらこちらの初めては難しいかもしれない。
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