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キスの後、元々夜通し話すつもりで外泊届を出していた僕はそのままユーリの部屋で泊まる事となった。
翌日、手を繋いで第1魔術師団の寮へと送られた僕は、近くを散歩していたハナ様とダニーに見つかってしまいそのままハナ様の部屋へと連れてこられたのだ。

「ニールの無自覚当て馬&お泊まりイベント見たかったぁぁぁあ‼︎お疲れお疲れぇっ!」

確かこの間も天啓みたいなのが頭の中にイベント内容が降りてきたって話してたよね?
僕達の神様って、ある意味親切?

「ニールから話は聞いたけど、ユーリに連れて行かれたんだって?」

「…うん…」

「…でっ、告白されたの?」

「…うん…まぁ…」

「キスしたの?」

「…うん…まぁ……」

されたんだけどね。

「襲っちゃったりしたっ⁉︎」

…襲われかけたけどね…

「ハナ様、鼻息荒いです。フィル…」

「…ん?」

「……襲われたな。」

___ゴオッ‼︎___

「うひゃぁっ!」

「シールドッ!」

___ピシッ!___

聖女の部屋は元々結界が組まれていたが、ダニーの一声に部屋に強化魔法が組まれて破壊は最小限に留まった。

「あのね、ここは聖女の部屋だよ?一応僕やニールの声に反応して強化するようになってたから良かったけど、破壊したら始末書では済まないんだからね!」

「…ゴメン。」

最小限の破壊は部屋でも簡単な魔術の練習をしているハナ様のために自動で修復するようになっているので、僕が唱えなくても部屋はすぐに戻る。

「ユーリって、色々な人と付き合ってるでしょ?ユーリの受バージョンは1番難しい攻略なのよ。それに…」

「それに?」

「今のフィルって、見るからに…『受』よ。」

「えぇ⁉︎」

___ガァァァン!___

「僕…背が高いよ?」

「そういう受もいるでしょ?」

確かに。
この前、剣の訓練の後に汗を拭いている騎士2人がいたけど会話からして、背の低い方が攻…ぽかったよね。
最近ハナ様のスマホで受と攻の見比べが出来るようになってきた。

「それに、今回のイベントは攻ルートに入ってたらユーリが部屋へ連れてってベッドに倒れ込んでユーリは下になるけど…」

「…上だった…」

「攻がキスマークを付けるけど…」

「付けられてるよね。」

___バッ!___

ダニーに首筋を指差されて思わず手で隠した。

「このままだと…」

「受まっしぐら…だよね。」

「えぇぇぇ…」

あんなことやこんなこと……ユーリに…されるの?

「…でも…」

「ん?」

「何でニールはフィルと2人で話したかったのかなぁ…」

あれ?

「僕も分からないけど…何か部屋で話したいってだけしか聞いてないから…」

「ふ~ん…」

あれ…何かこれ……ヤキモチ妬いてる?

「…これは、ニールに聞かなきゃねぇ。」

「………そうだね……うん…」

「今度の休暇、1人ずつだと連携も取り辛いと思うから2人一緒に取ってもらうように頼むわ。その間は私の推し…ううん、第2騎士団の団長さんにお願いしよっかなぁ♪」

「第2?第1じゃなくて?」

「えぇ、基本的に第1騎士団の人が多いじゃない?私は別に獣人が怖いわけじゃないし、ゲームで見慣れているから大丈夫。第2騎士団の団長さんとぉ…副団長さんが良いなぁ…」

「マシューさんとラサさん?分かった。あの2人、普段の休暇は一緒に取れてもここ数年は一緒に長期休暇を取るのが難しかったみたいだし喜ぶと思いますよ。」

「でしょでしょ?」

「……何で知ってるんですか?…ハッ…もしかして…」

「んふふ~そう、もしかしてなのよねぇ♪」

ニールとハナ様が何かコソコソ話しているけど、僕はそれどころじゃなかった。
この夏は絶対主導権を握って僕が上になってやる!
僕は王宮の依頼の仕事をこなしてユーリに一緒に休暇を過ごさないかと相談しに行った時、顔を赤くして嬉しそうに了解してくれた。


******************************************


夏季休暇。
今年は実家へ戻る者は少ない。
それもそのはず、魔獣が再び出現し始めている噂が出始めているものの実害はまだ出ていないのですぐに出動出来るようにみんな近場で過ごしていた。
ニールとダニーは森の中にある滝にヒーリングポイントがあるとかで、調査を兼ねて他の者より少し長めに休暇を取った。
聖女は第2騎士団の団長・副団長に守られている事もあり、その分その2人にも休暇を与えてほしいと王宮にハナ様がお願いしたらしい。
結果次第ではエルフのサラさんと戦闘に強いマシューさんを連れてヒーリングスポットでハナ様の癒しの力を蓄える事も考えられているとか。
僕とユーリの休暇は森の中にある小川の辺りで、夜に出現する淡い光の正体の調査を任されて休暇も兼ねてやってきた。
休暇中はスマホをハナ様に返すので全く攻の勉強ができないけど…
調査期間は1週間で休暇は5日、早く終わればそのまま長期の休暇となるので頑張らないとね。
僕は最近開発したブレスレットを片手に水の魔法が暴走しないことを祈るばかりだ。

「…ハァ…大丈夫か、フィル。」

父の魔獣討伐に何度か参加しているけど、久々の長距離で森の中へ入るのは少し疲れた。

「…うん…あ…あの小屋だね。」

小屋でも2人で暮らすには十分な広さだ。
2階建ての小屋は森の中で暖かな陽の光に照らされて嫌な雰囲気ではなかった。
…屋敷みたいに大きいとお互いの存在を感じにくいけど…これなら、どこにいても感じやすいよね。

……将来…程良い広さの屋敷でユーリと…

「フィル?」

「…ハッ…あっ…何?」

ユーリが心配そうに顔を覗くと微笑んで言った。

「フフッ…ここよりもう少し広い家に2人で住めたら最高だよな。」

「あっ、僕…顔に出てた?」

「うん、出てた。可愛いな、フィルは。」

「…っ…もうっ、揶揄わないでよっ。」

顔が熱くなるのを感じる。
この夏季休暇で僕はしっかりとユーリを抱く方になるんだから、しっかりしなきゃ。

「フィル…手…繋ぎたい…」

「…うん…」

尻尾がユラユラ揺れて、少し恥ずかしがっているのが分かる。

「クスクス、ユーリだって…可愛い。」

僕はユーリの手を掴んだ。
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